子宮筋腫は婦人科の病気のなかでもっとも高頻度なものであり、30歳以上の女性では20〜30%に見られ、小さなものを含めると約75%に見られるとされます。1)
そしてこの筋腫は内部にしばしば変性を生じることがあるのです。
中でも急性腹症の原因となるものに、赤色変性というものがあります。
今回は
- 子宮筋腫の赤色変性とはどういうものなのか?
- 赤色変性が起こりやすい条件
- 赤色変性の症状
- 赤色変性の治療法について
- どのようなMRI画像所見を示すのか?
などについてまとめました。
子宮筋腫の赤色変性とは?
子宮筋腫から出て行く静脈内に血栓を生じ、静脈鬱滞となり、子宮筋腫への血液の流れが悪くなることが赤色変性の始まりです。
その後、血流が途絶え、梗塞に陥ります。
そしてそこに入ってくる血流が破綻して、出血を起こし、出血性梗塞という状態を起こします。
これが子宮筋腫の赤色変性です。2)
子宮筋腫の約3%に見られると言われています。
子宮筋腫赤色変性が起こりやすい人は?
静脈内に血栓を生じることが、赤色変性のことの始まりですので、血栓を生じやすい人がリスクとなります。
血栓の形成には、女性ホルモンが関与していますので、女性ホルモン環境の変化が鍵です。
具体的には、
- 妊娠中
- 経口避妊薬(ピル)内服中
- 出産後
- 中絶後
に多く見られます。3)
とくに妊娠中や経口避妊薬内服をしている人、さらに急激に子宮筋腫が大きくなっている場合も、リスクが高くなります。
妊娠中に子宮筋腫になった場合のリスクについてはこちら→子宮筋腫の場合流産のリスクは?予防方法はある?
子宮筋腫赤色変性の症状は?
子宮筋腫内で梗塞・壊死を起こし、そこに出血するため、
- 突然の下腹部痛
- 発熱
- 炎症反応上昇
といった症状が起こります。3)
とくに突然の下腹部痛の原因として、女性の場合は、この疾患を考慮しなければなりません。
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子宮筋腫赤色変性の治療法は?手術は必要?
子宮筋腫赤色変性の主な症状は、下腹部痛ですので、鎮痛剤の投与がされます。
鎮痛剤によって下腹部の疼痛は改善されますが、鎮痛剤で改善しない場合は、筋腫の核出術をする場合があります。
また、産褥期などに子宮内膜炎を発症した場合などは、筋腫に感染が起こる場合があり、まれに敗血症になることもあるので、産後はとくに注意が必要です。
その場合は、抗生物質の投与をし、それでも改善しない場合は開腹手術が必要になります。4)
子宮筋腫の手術費用についてはこちら→子宮筋腫の手術は保険適用される?費用はどれくらいかかる?
子宮筋腫赤色変性はどうやって診断するの?MRI画像所見は?
子宮筋腫の赤色変性のMRI画像所見は?
筋腫の辺縁部にT1WIで高信号、T2WIで低信号の縁取り(rim)が見られるのが特徴的です。3)
ただし、このT1WIでの高信号は発症から数日経過した亜急性期に見られますので、その点は注意が必要になります。
また血流が途絶えていますので、造影剤で筋腫が造影されないのも特徴です。
症例 40歳代女性 腹痛
画像は左がMRIのT1強調像の横断像(輪切り)、右側が造影T1強調像の横断像です。
T1強調像で子宮筋層にリング状に辺縁に高信号を認めています。
内部も子宮筋層と比較して高信号です。
造影T1強調像では、周囲の正常筋層には著明に造影効果がある(白く造影されている)のに、筋腫内は造影効果を認めていません。
子宮筋腫の赤色変性と診断されました。
参考
1)日本産婦人科学会 研修コーナー61巻5号2009 P N-145
2)日本産婦人科学会 研修コーナー59巻5号2007 P N-118
3)研修医のための画像診断: 厳選症例から学ぶ基礎知識 P165
4)救急医学(0385-8162)24巻1号 Page67-71
最後に
女性の急性腹症の原因には
- 卵巣出血
- 子宮外妊娠破裂
- 骨盤腹膜炎
- 卵巣茎捻転
- 子宮筋腫赤色変性
- 漿膜下子宮筋腫の捻転
などさまざまな原因がありますが、子宮筋腫が原因になるものの一つにはこの赤色変性という静脈性梗塞が挙がります。
子宮筋腫は非常に頻度の高い疾患であり、子宮筋腫がある場合の急激な腹痛はこの病気も考えなければなりません。