副鼻腔炎に慢性気管支炎といった慢性下気道炎症を合併することは古くから知られています。これを、副鼻腔気管支症候群という概念で報告されています。
今回は、この副鼻腔気管支症候群(Sinobronchial Syndrome: SBS)についてまとめました。
副鼻腔気管支症候群とは?
- 慢性気管支炎
- 気管支拡張症
- びまん性汎細気管支炎(DPB)
などの慢性下気道炎症に慢性副鼻腔炎を合併するものを副鼻腔気管支症候群(SBS)といいます。
特殊例としては、Primary Ciliary Dyskinesia(Immotile cilia syndrome、Kartagener症候群)、Young症候群、Cystic Fibrosis、免疫不全症などがあります。
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症状は?
- 呼吸器症状(咳、痰、呼吸困難など)
- 慢性副鼻腔炎症状(膿性鼻汁など)
なぜ同時に起こる?
毛・鞭毛系の超微細構造の先天的異常によると言われています。
毛・鞭毛系の超微細構造は、上下気道、精子、中耳、卵管など全身に分布し、これらに異常を認め、正常の線毛・鞭毛運動が行われず、結果、それぞれ慢性の気道感染症・気管支拡張症、中耳炎、不妊症などを起こします。
どういったときに疑う?
幼少時より上気道感染や下気道感染を繰り返し、さらに不妊があるとき。
診断基準は?
簡易診断基準として以下の1-3を全て満たす場合に、副鼻腔気管支症候群と診断されます。
- 呼吸困難発作を伴わない咳噺(しばしば湿性)が8週間(3週間)以上継続
- ①後鼻漏、鼻汁および咳払いといった副鼻腔炎に伴う自覚症状
②上咽頭や中咽頭における粘液性ないし粘液膿性 の分泌物(後鼻漏)の存在ないしcobblestone appearanceといった副鼻腔炎に伴う他覚所見
③副鼻腔炎を示唆する画像所見 の3つの所見のうち、1つ以上を認める。 - 14,15員環マクロライド系抗菌薬や去痰薬が有効
治療薬は?
- 咳止め(中枢性鎮咳薬):乾性咳嗽に有効。
- 気管支拡張薬:気道過敏性を伴う場合、気道病変優位型の慢性気管支炎に有効なことがある。
- 去痰薬
- 14,15員環マクロライド系抗菌薬
14,15員環マクロライド系抗菌薬の具体例
- エリスロマイシン(エリスロシン)300~600mg/ day
- クラリスロマイシン(クラリスまたはクラリシッド)200~400mg/day
- ロキスロマイシン(ルリッド)150~300mg/day
- アジスロマイシン(ジスロマツク)250~500mg/day(週3回)
通常2~ 12週間の投与を行う。
参考文献)綜合臨床2009年10月 咳嗽-そのcommonで多様な疾患領域、2089-2092