赤ちゃんから高齢者まで、年齢問わず行え、痛みも苦痛も感じることのない尿検査。
尿には、体内のさまざまな成分が含まれており、病気などの異常を発見することも可能です。
では、尿検査によって尿潜血(にょうせんけつ)が陽性となった場合、どのような病気の可能性があるのでしょう?
今回は、尿潜血(英語表記で「urine occult blood 」)について
- 基準値
- 陽性の場合の原因
- 考えられる病気
- 注意点
を解説したいと思います。
そもそも尿潜血とは?
尿潜血は、尿に血が混じっている状態です。
この、尿に含まれる血(尿潜血)は、赤血球のことで、この赤血球の有無を
- 試験紙を用いて色の変化で確認する、試験紙法という方法(一般的にスクリーニングに用いられる)
- 顕微鏡を使い観察する、尿沈渣という方法(試験紙法で陽性となった場合に精密検査として用いられる)
とがあります。
通常の健診や人間ドックで行われるのは試験紙法という尿に試験紙をつけて色の変化を見る方法です。
腎臓や尿の通り道に問題がないか、調べるために行われる検査です。
尿潜血が陽性となる原因は?どんな病気の可能性がある?
尿潜血が陽性の場合、
- 尿路結石
- 膀胱炎
- 腎炎
- 膀胱腫瘍
- 腎臓の外傷
- 腎腫瘍
- 腎結核
など、腎臓や尿管、膀胱や尿道の異常が考えられます。
尿潜血の基準値は?
検査の結果としては、
- 陰性(−:マイナス)
- 弱陽性(±:プラスマイナス)
- 陽性(+:プラス)
- 強陽性(2+以上)
などという結果が出ます。
普通は尿に赤血球が尿に混じることはないため、陰性(マイナス)ならば尿潜血はないということになりますが、それ以外の場合は、尿潜血があったということになります。
つまり、
- 尿潜血の基準値(正常値)は陰性(−)のみ
- 尿潜血の異常値は、それ以外の弱陽性(±)・陽性(+)・強陽性(2+以上)
ということになります1)。
尿潜血検査で再検査になるのはどんなとき?
尿潜血検査は、陰性以外は再検査となります。
とくに強陽性(2+以上)ではすでに障害が起きている恐れがあるため、詳しい検査が必要となります。
ただし、尿潜血が強陽性(2+以上)なのに赤血球が尿沈渣を調べても存在しない場合には、ヘモグロビン尿症やミオグロビン尿症を疑い、鑑別検査を行います4)。
尿潜血陽性ならば尿の見た目が赤い?
- 目で見て尿が赤い→肉眼的血尿
- 見た目では尿が赤いことがわからないが検査では尿潜血陽性となる→顕微鏡的血尿
といいます。
ただし、上で述べたようにヘモグロビン尿やミオグロビン尿もありますので、赤い=血尿とも限らないので注意も必要です。
尿潜血の検査を行う上での注意点は?
まず、時間の経過した尿では、溶血が原因で反応が出てしまうこともあり(尿沈渣)、原則、新鮮尿を使って検査します。
病気以外でも、ビタミンCの過剰摂取により陽性反応が出ることもあります。
また女性の場合は、生理中の血液が混入し、尿潜血として反応が出てしまうこともありますので、原則生理中は避けるべきです。
しかし、どうしても検査が必要な場合は、生理中であるということを必ず伝える必要があります。
そして、疲れすぎた時に尿潜血が出るということもありますが、一時的な血尿なのか病気が隠れているのか、心配がある場合は医師に相談しましょう。
参考文献:
1)最新 尿検査 その知識と病態の考え方 第2版P68〜71
今日の臨床検査 2011ー2012 P34
最新 検査のすべてP21
よくわかる検査数値の基本としくみP54・56
新版 検査と数値を知る辞典P182
検査結果なんでも早わかり事典-健診・人間ドックから精密検査の結果までP158
最後に
尿潜血について、ポイントをまとめます。
- 尿に赤血球が混じって出ることを尿潜血という
- 陰性の場合、正常
- 陽性の場合、腎臓や尿管、膀胱や尿道の異常が考えられる
- 生理中の場合は、行わない・もしくは申告する
- ビタミンCの過剰摂取で陽性になることもある
尿潜血で陽性と出た場合には尿沈渣を調べることになりますが、中には一時的に尿潜血が見られることもあり、再検査で問題がなかった場合でも、定期的に見ていくことも必要となります。