慢性進行性肝疾患が進行した結果生じた肝疾患の終末像である肝硬変は、
- 代償期(肝機能がある程度保たれた状態)
- 非代償期(肝機能障害が進行し、肝機能を保てない状態)
によって治療法も異なります。
では、肝硬変はどのような治療方法があるのか?
また、肝硬変の治療費はいくらくらいかかるのか?
最新の肝硬変診療ガイドライン2015の情報を踏まえ、ご説明したいと思います。
肝硬変の治療法とは?
肝硬変の治療方針は、
- 代償期には→肝線維化に対する治療
- 非代償期には→合併症の治療
- 肝癌の心配もあるため→発癌対策
- 肝不全に至った場合には→肝移植
となります。
代償期の治療
代償期には、基本的な治療として原因となる肝疾患の治療がおこなわれます。
肝硬変の原因について詳しくはこちら→肝硬変の原因や診断、治療法の徹底まとめ!
中でもアルコール性肝硬変の場合は、断酒が最も重要となりますが、アルコール性でなくても断酒をすることは大切な治療法です。
またそれ以外には、肝庇護療法として
- グリチルリチン製剤
- ウルソデオキシコール酸
などの投与で肝細胞障害を軽減することができます。
そのため、この肝庇護療法で使用される薬が、肝硬変の治療薬といわれることもありますが、これはあくまでも代償期の治療としてです。
その他、食事療法では
- 高エネルギー食
- 減塩食
などが重要になります。
肝硬変の詳しい食事療法についてはこちら→肝硬変の食事療法のまとめ!レシピや看護についてもご説明
非代償期の治療
非代償期では、以下のような合併症に対する治療が主となります。
- 腹水
- 黄疸
- 肝性脳症
- 特発性細菌性腹膜炎
- 食道・胃静脈瘤
腹水
- 安静
- 塩分制限
- 利尿薬・・・抗アルドステロン薬・ループ利尿薬
まずは安静が重要です。
そして塩分増やさないよう(腹水が増えない)することも重要で、同時に水分量も制限し、1日1L程度にし、利尿薬を服用しながら様子を見ます。
2015年肝硬変ガイドラインによると、肝硬変の腹水に対し、利尿薬に対する反応性を高めるため、アルブミンの投与は有用とされており、利尿薬と併用して使うこともあります。
また、この腹水の量(程度)によっても治療法が異なり、上記の方法でも改善しない場合には、専門施設にて
- 腹水濾過濃縮再静注法
- 腹腔-静脈短絡術
- 経頸静脈肝内門脈大循環短絡術
などをおこなうこともあります。
黄疸
- 安静
- 肝庇護療法・・・グリチルリチン製剤・ウルソデオキシコール酸
- 対処療法
黄疸自体は、治療のしようがありません。
そのため、症状に応じた対処療法(痒みなどの皮膚症状に対して、ナルフラフィンなど)が一般的で、同時に肝硬変の治療をおこなうことになります。
肝性脳症
- 安静
- 低蛋白食
- 合成二糖類・・・(ラクツロースなど)
- 分岐鎖アミノ酸製剤・・・(BCAA)
- 非吸収抗菌薬経口投与・・・(カナマイシン・ポリミキシンBなど)
- 排便コントロール
便秘をすることで、脳にアンモニアが上がり、意識障害を起こすため、排便コントロールをおこない、便秘にならない、なっってもすぐ出すと言った対処をすることが重要です。
また、ガイドラインによると肝性脳症の意識障害に対し、分岐鎖アミノ酸(BCAA)輸液製剤投与も有用とされています。
特発性細菌性腹膜炎
- 抗菌薬・・・(セフォタキシム・シプロフロキサシンなど)
細菌性ですので、抗菌薬を投与し、改善を待ちます。
食道・胃静脈瘤
- 内視鏡的治療(EIS・EVL)
この食道・胃静脈瘤の破裂によって亡くなるのが肝硬変の死因として第一位です。
そのため、破裂を防ぐこと(予防)が重要で、内視鏡的治療がおこなわれます。
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発癌対策
肝硬変は、肝細胞癌になりやすいといわれ、発癌予防が重要となりますが、肝細胞癌は初期の自覚症状がほとんどありません。
そのため、肝硬変患者は定期的な検査をおこなうことで、早期発見・早期治療をおこなうことが予後へとつながります。
肝移植
肝硬変の末期、肝不全や肝細胞癌まで進行してしまった場合には肝移植の対象となります。
日本では現在、肝移植の方法として生体肝移植(健康な方の肝臓の一部分を手術によって切り取り、これを移植する)が多くなっています。
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肝硬変の治療費は?
一般的に肝硬変の治療は、これをしたから完全にすぐ治るといったものではありません。
そのため、治療費もそれぞれの症状・程度によって異なります。
実際に肝硬変患者の例を挙げますと
- 毎月の定期受診時に血液検査・診察・薬代→2万円~2.5万円程
- 内視鏡検査・CT画像検査で5千円~1万円程
- 1年に1、2回の入院→5万円~10万円程
その他、具合が悪くなった際の受診で、点滴や検査があり、年間50万円程度かかっているというケースもありますが、高額医療費控除は年収によって異なるため、一概には言えません。
また、同じ肝硬変でも入院期間が長くなればさらにかかりますし、手術をすれば費用は跳ね上がりますし、症状が軽ければもっと安く済むこともあります。
参考文献:消化器疾患ビジュアルブック P194〜198
参考文献:病気がみえる vol.1:消化器 P293〜301
参考文献:新 病態生理できった内科学 8 消化器疾患 P193〜201
参考文献:パッと引けてしっかり使える 消化器看護ポケット事典[第2版] P126・127
参考文献:肝臓病これで安心 改定新版P106〜111
最後に
肝硬変の治療は
- 代償期には→肝線維化に対する治療
- 非代償期には→合併症の治療
- 肝癌の心配もあるため→発癌対策
- 肝不全に至った場合には→肝移植
というのが主となり、それぞれの原因や症状に合わせておこなわれる。
また、治療費は年間50万程の方もいれば、それ以上に何倍もかかる場合も、それ以下となる場合もあり、合併症の有無など肝硬変の段階によっても異なる。
肝硬変の死因の頻度としては、合併症である
- 食道・胃静脈瘤破裂
- 肝性脳症
- 肝細胞癌
が上位に挙げられます。
ですが、上記の治療法によって、肝細胞癌以外での死亡例は減少しています。
そのため、上記でご説明したような治療、定期検診等の必要性がお分かり頂けるかと思います。
肝硬変になったら終わりではなく、早期に治療をおこなえば合併症を未然に防ぐことも可能であるため、早期発見早期治療のために、慢性肝疾患がある方は特に、定期的な検診を欠かさないようにしましょう。