Ischemic colitis Eye-catching image

 

虚血とは、血管の狭窄や閉塞によって血流が減少し、血流障害が起こったものをいいますが・・・

腸間膜血管の血流障害によって、虚血性の変化や壊死が起こる疾患の総称を虚血性腸疾患といいます。

その虚血性腸疾患の中で代表的なものが虚血性大腸炎です。

今回は、この虚血性大腸炎(英語表記で「ischemic bowel disease」)について

  • 原因
  • 症状
  • 診断
  • 治療
  • 食事

画像とともに詳しくご説明致します。


虚血性大腸炎とは?

虚血により、大腸粘膜に限局的(部位や範囲が局地的)に

  • 浮腫(むくみ)
  • びらん(ただれること)
  • 潰瘍
  • 壊死

を生じる炎症性の病変のことを虚血性大腸炎と言います。

ischemic-bowel-disease

虚血性大腸炎には、一過性型(いっかせいがた)・狭窄型(きょうさくがた)・壊疽型(えそがた)とあります。

  • 一過性型・・・虚血性大腸炎の大部分が一過性型
  • 狭窄型・・・急性期を過ぎた後に、腸管の狭窄をきたす
  • 壊疽型・・・腸管壁の全層性壊死に至る(まれ)

という特徴があります。

虚血性大腸炎は、50歳以上の高齢者に多く、特に左側結腸に多く発生します。

虚血性大腸炎の原因は?

以下のような原因が考えられます。

  • 便秘
  • 排便時のいきみ
  • 高血圧
  • 動脈硬化
  • 糖尿病
  • うっ血性心不全
  • 脳血管障害
  • 腹部手術

腸管内圧の亢進(便秘やいきみなどによって)、基礎疾患腹部手術の既往歴などによって起こります。

 

虚血性大腸炎の症状は?

  • 腹痛
  • 下痢
  • 血便

が特徴で、特に腹痛は突然あらわれ、それに続くように水のような下痢や一過性の血便症状が出現します。

hito

血便は比較的出血量は少なく、貧血やショックをきたすほどになることは少なく、症状は1・2週間で落ち着きます。

しかし、狭窄型ではそれよりも症状が長く続き、壊疽型では腹痛が強いうえに進行性で数日以内に腹膜炎の症状をともなってくることが多くあります。

また、糖尿病が原因の場合や高齢者では、腹痛をともなわない場合もあります。

虚血性大腸炎の診断は?

  • 血液検査
  • 内視鏡検査
  • 注腸造影
  • CT検査

などの検査をおこないます。

以下のような原因が考えられます。

血液検査

  • 白血球増加
  • CRP増加
  • 赤沈亢進(赤血球沈降速度を調べる検査)

炎症すると白血球が増加しますが、炎症性疾患であるため、この白血球増加が確認でき、またCRP増加や赤沈亢進がみられます。

内視鏡検査

  • 縦走傾向
  • 発赤
  • 浮腫
  • 粘膜下出血
  • びらん

などがみられ、問題のない部位との境界が明瞭です。

注腸造影

母指圧痕像(tumb printing)縦走潰瘍が特徴的です。

母指圧痕像とは?
上の画像のように親指で、本来の大腸の形状とは異なり、大腸を両側から押しつぶしたように狭窄した部分を母指圧痕像といいます。

 

一過性のものの場合、数日でこれらの所見は消失します。

CT検査

下行結腸〜S状結腸といった左半結腸を中心に腸管の3層構造を保ったやや範囲の広い壁肥厚を認めるのが一般です。

周囲に脂肪織濃度の上昇を認めることもあります。

症例 70歳代女性 血便、腹痛

ischemic-bowel-disease-ct-findings

左半結腸に3層構造を保った広範な腸管壁肥厚を認めており、周囲脂肪織濃度上昇を認めています。

虚血性腸炎を疑う所見です。

症例 60歳代女性 左下腹部痛および血便

ischemic-bowel-disease-ct-findings1

左半結腸に3層構造を保った広範な腸管壁肥厚を認めており、虚血性腸炎を疑う所見です。

虚血性大腸炎の鑑別診断は?

鑑別(他の疾患を除外)としては、

などが挙げられます。

虚血性大腸炎の治療は?

保存療法または外科的治療が選択されます。

それぞれについてご説明します。

保存療法

  • 安静
  • 輸液
  • 絶食

を基本とし、一過性の場合は数日程度で症状が改善してきます。

また、必要に応じて鎮痛剤・鎮痙薬・抗菌薬が投与されます。

外科的治療

虚血が重度な場合

  • 壊死型(麻痺性イレウス・腹膜炎「粘膜の壊死脱落や穿孔」)
  • 狭窄

などの程度により、腸管切除手術をおこないます。

虚血性大腸炎の食事は?

治療中は、絶食となります。

治療後は医師の指導に従い食事を進めることになりますが、腸の負担にならない食事に気をつける必要があります。

つまり、脂質・刺激物・消化の悪いものは厳禁です。

また再発を予防するために重要なのは、便秘にならないような食生活を送ることで、水分を多く摂る・水溶性食物繊維(海藻類や果物類)を多く摂ることも必要です。

参考文献:
内科診断学 第2版 P870
病気がみえる vol.1:消化器 P176・177
消化器疾患ビジュアルブック P108・109
新 病態生理できった内科学 8 消化器疾患 P122・123

最後に

  • 虚血により、大腸粘膜に限局的に壊死・浮腫・びらん・潰瘍を生じる炎症性の病変を虚血性大腸炎という
  • 腸管内圧の亢進・基礎疾患・腹部手術既往歴が原因となる
  • 突然の腹痛・下痢・下血が特徴
  • 血液検査・内視鏡検査・注腸造影・CT検査などをおこない診断する
  • 保存療法・外科的手術が選択される
  • 便秘にならないような食生活を送ることで予防にもつながる

 

高齢者に多いといっても、若年者にも起こることはあります。

その場合、便秘などの影響も大きいため、日頃から便秘にならない食生活を送ることも重要です。




関連