急性胃粘膜病変は突然発症する病気ですが、吐血や下血をともない血圧や脈拍が異常値を示すこともあり、救急対応が必要な病気でもあります。
今回はそんな急性胃粘膜病変(英語で「acute gastric mucosal lesion」略語で「AGML」)
について
- 症状
- 原因
- 診断
- 治療
をまとめましたので、参考にしてみて下さい。
急性胃粘膜病変とは?
突然起こる上部消化器管症状で発症し、胃粘膜発赤・出血・浮腫・びらん・潰瘍などを認める臨床的症候群です。
また、以下の3病変をまとめた総称でもあります
- 急性びらん性胃炎
- 急性潰瘍
- 出血性胃炎
急性胃粘膜病変の症状は?
- 心窩部痛(読み方は「しんかぶつう」で、みぞおちの痛みのことをいう)
- 悪心
- 嘔吐
- 吐血
- 下血
このような症状が突然あらわれます。
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急性胃粘膜病変の原因は?
- ストレス
- 食事
- 薬剤
- 感染
- 医原性(治療によるもの)
- 基礎疾患
などが原因として考えられます。
ストレス
精神的、身体的ストレスが関係します。
身体的ストレスの特徴としては、手術や外傷など普段感じることのなかなかない過度なストレスが原因となります。
食事
過度なアルコール摂取やコーヒー、香辛料など胃粘膜を荒らす食べ物や飲み物が原因となります。
喫煙も同様、原因となります。
薬剤
NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)・ステロイド・抗生物質・抗腫瘍薬などが関係します。
感染
ピロリ菌・アニサキス(寄生虫の一種)・サイトロメガロウイルス(ヘルペスウイルスの仲間)などが関係し、内視鏡の不十分な洗浄やコップの共有などでも感染します。
医原性
肝動脈塞栓術・食道静脈硬化療法なども原因となります。
基礎疾患
動脈硬化・糖尿病・腎不全・肝硬変などで急性胃炎や急性胃粘膜病変を発症しやすいともいわれています。
急性胃粘膜病変の診断は?
内視鏡や造影剤を用いたCT検査を行い診断します。
内視鏡
最も有効な検査方法で、内視鏡検査によって多発性の浮腫・発赤・黒色の凝血塊・びらん・潰瘍などが確認できます。
十二指腸にも病変をともなうこともあり、その場合は急性胃十二指腸粘膜病変(AGDML:acute gastroduodenal mucosal lesion)とも呼ばれます。
症例 70歳代女性 心窩部痛
幽門部を中心にヘマチンの付着あり。幽門部に潰瘍を認めていました。AGMLと診断されました。
造影CT
低吸収域を呈する胃壁の粘膜下層が著明に腫大を認め、典型的な3層構造を呈します。
しかし通常は、周囲脂肪織濃度上昇はありません。
症例 70歳代女性 心窩部痛(上の内視鏡と同一症例)
腹部造影CTで胃体部から幽門部に広範な粘膜下層の肥厚あり。急性胃炎が疑われ、内視鏡検査施行されました。
症例 60歳代女性 心窩部痛
造影CTで急性胃炎が疑われ、内視鏡検査をしたところ、潰瘍を胃に2箇所認めました。
急性胃粘膜病変の治療は?
- 原因改善
- 薬物療法
- 出血がある場合の治療法
という3つの選択肢があります。
原因改善
原因が分かれば、そちらの治療をすることで改善します。
(薬剤の中止、アニサキスの除去など)
症例 20歳代男性 心窩部痛
造影CTから急性胃炎が疑われ、内視鏡検査が施行されました。食道胃接合部(ECJ)にアニサキス虫体を認め、除去されました。
原因が分からない場合は、薬物療法が行われます。
薬物療法
使用される薬は、酸分泌抑制薬のプロトポンプ阻害薬(PPI)・H2受容体拮抗薬(H2RA)などが選択されます。
また、出血がある場合には以下の治療が行われます。
出血がある場合
内視鏡的止血術として
- クリッピング
- エタノール局注
- 高張Na
- エピネフリン局注(HSE)
- アルゴンプラズマ凝固法(APC)
- ヒータープローブ法
などが選択されます。
最後に
- 突然起こる上部消化器管症状で発症し、胃粘膜発赤・出血・浮腫・びらん・潰瘍などを認める臨床的症候群
- 急性びらん性胃炎・急性潰瘍・出血性胃炎の3つをまとめた総称
- 心窩部痛・悪心・嘔吐・吐血・下血などが突然あらわれる
- ストレス・食事・薬剤・感染・医原性・基礎疾患が原因となる
- 治療として、原因の除去・薬物療法・内視鏡的止血術が行われる
日常生活において、ストレスを溜めない生活や食事に気をつけることも重要となります。
乳脂肪、ビタミンA・B2・C・E・Uなどの摂取によって、胃粘膜を保護し刺激物から守ることや胃粘膜を強くすることも重要です。