
長年続く嚥下障害や胸痛や、ストレスを感じた時に悪化する症状。それが食道アカラシアの特徴でもありますが、その不快感から解放され、楽になりたい・・・また、長い経過のなかで食道癌を合併することもあり、不安になります。そのためにも適切な治療と経過観察が大切です。ですが、どんな場合に手術適用となるのかも気になるところです。
今回は、食道アカラシアの治療についてまとめました。
- 治療法
- 内視鏡的治療・内科的治療
- 外科的治療
以上のことをお話ししていきます。
先に結論
- 食道アカラシアの治療は、下部食道括約筋の締まりを緩めて、飲み込みにくさを改善することが目的です。
- 薬物療法は補助的で、主な治療はバルーン拡張術・POEM(内視鏡的筋層切開術)・腹腔鏡下Heller-Dor術です。
- POEMは日本消化器内視鏡学会のガイドライン(2018年)があり、短期成績はバルーン拡張術や腹腔鏡下手術と同等かそれ以上とされています。
- バルーン拡張術は、40歳以下で再治療の可能性が高いとされます。
- 飲み込みにくさが続くときは、消化器内科・消化器外科を受診してください。
食道アカラシアの治療法とは?
- 内科的治療
- 外科的治療
運動機能が低下した食道自体を回復することは難しいですが、下部食道括約筋の圧がかかっていることで嚥下障害が起こるため、この下部食道括約筋の圧を緩め、嚥下障害をなくすことを目的とします。

症状や検査についてまとめて知りたい方は、食道アカラシアとは?症状、原因、検査方法と治療(POEM・手術)を解説でくわしく解説しています。
内視鏡的治療・内科的治療はどのような方法で行われる?
薬物療法の効果は限られ、一時的な補助として使われることが多く、主な治療はバルーン拡張術・POEM・手術です。どの順で行うかは、年齢や食道の拡張の程度、アカラシアのタイプ(シカゴ分類)などをふまえて、担当医が決めます。
薬物療法
内科的治療として、薬物療法があります。胃の入り口を締め付けることで嚥下障害が起こるため、その締める力を弱める作用(下部食道括約筋の圧を低下する作用)のある薬を使用します。
しかし、デメリットとして、血圧低下などの副作用が見られることもあります。(元々血圧の低い方は服用出来ない)
使用される薬
- Ca拮抗薬
- 亜硝酸薬
- 芍薬甘草湯(漢方薬)
バルーン拡張術
内視鏡を使う治療の一つに、バルーン拡張術があります。

バルーン拡張術は、X線透視下で内視鏡的に下部食道でバルーンを膨らませます。バルーンを一定時間膨らませることにより、下部食道括約筋を伸展させ、通過改善を試みます。
しかし、効果が一定期間で、繰り返し治療が必要になることがあるというデメリットがあります。診療ガイドラインでは、バルーン拡張術では40歳以下の方は再治療の可能性が高いとされています(日本消化器内視鏡学会 2018)。
症例 30歳代 女性

食道X線検査において、上の症例ほど典型的ではないが、下部食道に狭窄を認めています。上部消化管内視鏡(胃カメラ)で食道内に逆流があることも確認されました。

アカラシアに対してバルーン拡張術が施行されました。
経口内視鏡的筋層切開術(POEM)
経口内視鏡的筋層切開術のことを略語でPOEM(Per-Oral Endoscopic Myotomyの頭文字)とも言います。日本で開発された治療で、内視鏡を使い、食道の筋層を切開する方法です。外科的治療に比べて体への負担が少ないとされ、長い距離の筋層を切開することもできます。
日本消化器内視鏡学会のPOEM診療ガイドライン(2018年)では、POEMの適応は食道アカラシアとその類縁疾患とされています。2年までの短期の治療成績は、シカゴ分類のtype ⅠとⅡでは、バルーン拡張術(40歳以上)や腹腔鏡下手術と同等で、type Ⅲではそれらより良好とされています。一方で、POEMのあとに胃食道逆流症が起こることがあり、術後は評価と必要に応じた治療が勧められています。実施できる施設は限られる場合があるため、担当医に確認してください。
食道アカラシアの手術とは?
バルーン拡張術などで効果が不十分な場合や、食道の状態・年齢などから適する場合に、外科的治療を検討します。
- Heller-Dor術
という手術を行うことになります。
一般的に腹腔鏡下で行います。

食道下部と噴門部に対して、狭窄を解消する目的で、筋層を切開する手術をHellerと言います。更に、噴門形成術を行い、胃食道逆流を防止する手術をDorと言い、これら2つを合わせた手術方法をHeller-Dor術と言います。
この手術により、狭窄を解消し逆流を防止することが可能となりますが、食道の拡張がひどく蛇行していると、手術による治療効果が少ない可能性もあり、その場合は食道切除を検討することになります。

治療後の食事や経過については、食道アカラシアの食事で気をつけることは?手術後の経過と再発・食道がんでくわしく解説しています。
合併することがある食道がんの検査や治療については、食道がんとは?検査(内視鏡・CT・PET)とステージ別の治療法を解説でくわしく解説しています。
よくある疑問
Q. POEMとHeller-Dor術はどちらがよいですか?
A. 2年までの短期成績は同等とされていますが、アカラシアのタイプ、食道の状態、逆流のリスク、実施施設などで選択が変わります。担当医とよく相談してください。
Q. 手術をしないと治りませんか?
A. 薬だけで根本的に治すことは難しく、バルーン拡張術・POEM・手術のいずれかで括約筋の締まりを緩める治療が中心になります。
Q. 治療のあとに気をつけることは?
A. 症状が再び出ることや、胃酸の逆流が起こることがあります。また、長い経過で食道癌を合併することがあるため、定期的な検査を続けましょう。
参考文献:日本消化器内視鏡学会「POEM診療ガイドライン」日本消化器内視鏡学会雑誌 2018;60(6):1249-1271
最後に
- 下部食道括約筋の圧を緩め、嚥下障害をなくすことを目的とする治療を行う
- 内視鏡的・内科的治療としては、薬物療法・バルーン拡張術・経口内視鏡的筋層切開術(POEM)という方法がある
- 外科的治療としては、Heller-Dor術で狭窄を解消し逆流を防止する手術が行われる
どの治療を選ぶかは、年齢、アカラシアのタイプ、食道の拡張の程度、本人の希望などによって異なります。治療後も症状の再発や食道癌の合併がないか、定期的な内視鏡検査などの経過観察が勧められます。飲み込みにくさや胸の痛みが続くときは、医療機関を受診してください。





