赤ちゃんの頃に発症するてんかんで、ウエスト症候群(West症候群)というものがあります。
難病指定され、早期治療開始が重要なポイントとなります。
はじめての子供の場合、「おもしろい動きをしているな」という程度で、発見が遅れがちな事実があります。
そこで今回は、このウエスト症候群について
- 症状
- 原因
- 診断
- 治療法
- 予後
をわかりやすくまとめました。
ウエスト症候群とは?
1歳以下(とくに4〜7ヶ月)の乳児に好発する難治てんかんで、2歳以上の発症は少なく、小児のてんかんでもっとも多いものです1)。
- 小児痙屈発作(点頭発作)
- 精神運動発達遅延
- ヒプスアリスミアと呼ばれる脳波異常(hypsarrhythmia)
を三主徴とします。
ウエスト症候群の症状は?
- 頭の前屈
- 上下肢を振り上げる
を数秒間隔で繰り返します。
頭をガクンとさせるような頷く動作や、体をお辞儀のように動かし、手をビクンと振り上げる動作で、それらを繰り返す特徴があります。
両側対称性の四股・体幹の痙攣発作で、発症後はこの発作を連日何回も繰り返し行います。
ですが、「おもしろい動きをしているな」程度の認識で、気づかず発見が遅れることもありますが、精神運動発達遅延を来し発作が退行することによって気づかれることもあります。
また、「この症状は怪しい」と感じるようなものを症状から心配になる方も多いかもしれませんが、この動作中に触れたりして外部刺激を与えると動作が止まる場合は、West症候群とは異なる可能性もあります。
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West症候群の原因は?
- 結節性硬化症などの先天性代謝異常
- 脳の奇形
- 分娩時の脳損傷
- ダウン症
- 髄膜炎
- 頭部外傷
- 脳腫瘍
などが考えられますが、原因不明なことも多くあります。
ウエスト症候群の診断は?
- 脳波検査
- 血液検査
- MRI検査
脳波検査
ヒプスアリスミアと呼ばれる脳波異常(hypsarrhythmia)→棘波、鋭波が無秩序に混在した非常に高振幅な1~5Hzの徐波が確認できます。
これらは、時間的にも空間的にもバラバラに出現します。
1歳以下であり、特徴的な発作や、この脳波検査でヒプスアリスミアが見られると、West症候群を強く疑い原因を調べることになります。
血液検査
血液を採取し、遺伝子検査や染色体検査、代謝異常検査をすることで原因を探ります。
MRI検査
原因となる頭部外傷や脳奇形、腫瘍がないか検査します。
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ウエスト症候群の治療法は?
薬物療法や、原因に合わせ外科的治療が行われます。
薬物療法
海外ではバイガバトリンが第一選択薬として使われることが多くありますが、日本国内では副作用の関係から未承認薬となっています。
- ゾニサミド
- バルプロ酸
- クロナゼパン
- ビタミンB6大量療法
が日本では主な薬物療法となりますが、副作用の軽減のため、量を減らしACTH療法(アクス療法・アクサー療法)を行うこともあります。
最も効果的なのはACTH療法と分かっているものの、量が減らされて使用されるのには以下の副作用が考えられるからです。
- 高血圧
- 電解質異常
- 易感染性
- 消化管潰瘍
- 大脳退縮
- 硬膜下血腫
- 肥満
- 易刺激性
これらは、使用する量が多いほど見られるため、日本では量を減らしACTH療法を行います。
外科的治療
脳の外傷や奇形、腫瘍等疾患がある場合には、外科的治療が行われます。
ウエスト症候群の予後は?
生後発達が良好な場合は、早期治療を行うことで予後良好で完全回復します。
しかし、患者の半数は器質性脳障害を持ち、その場合は3歳以降で約半数がLennox-Gastaur(レノックス ガストー)症候群に移行することもあります。
参考文献:
病気がみえる vol.7:脳・神経 P378
全部見える 脳・神経疾患―スーパービジュアル 徹底図解でまるごとわかる! P369
1)ウエスト症候群の診断・治療ガイドライン 伊藤正利
最後に
ウエスト症候群について、ポイントをまとめます。
- 1歳以下の乳児に現れるてんかん発作
- 両側対称性の四股、体幹の痙攣発作を連日何度も繰り返す
- 先天性代謝異常・脳の奇形・分娩時の脳損傷・ダウン症・髄膜炎・頭部外傷・脳腫瘍などが原因となる
- ヒプスアリスミアという脳波異常を確認し、血液検査や画像診断で原因を探る
- 薬物療法や原因に合わせた外科的治療を行う
治療により脳波異常は治っても、どの程度回復が見られるかは不明で、発作が起きないように薬をしっかり飲ませることが重要です。