便検査で「CDトキシン陽性」「C. difficileトキシン陽性」「クロストリジオイデス・ディフィシル感染症の疑い」と言われると、不安になる人は少なくない。

結論からいうと、CDトキシンとは、クロストリジオイデス・ディフィシルという細菌が産生する毒素であり、抗菌薬使用後の下痢や大腸炎の原因になることがある。

以前はクロストリジウム・ディフィシルと呼ばれていたが、現在はクロストリジオイデス・ディフィシルという名称が使われることが多い。英語では Clostridioides difficile、略してC. difficile、C. diff、CDなどと表記される。

CDトキシン検査は、下痢の原因としてC. difficile感染症を疑う場合に行われる便検査である。特に、抗菌薬を使用した後、入院中、介護施設入所中、高齢者、免疫力が低下している人では重要である。

ただし、CDトキシン検査は「陽性なら必ず重症」「陰性なら絶対に否定できる」という単純な検査ではない。症状、抗菌薬使用歴、便の性状、GDH抗原、NAAT/PCR検査などを組み合わせて判断する必要がある。

この記事のポイント

  • CDトキシンとは、C. difficileが産生する毒素である。
  • 抗菌薬使用後の下痢、大腸炎、偽膜性腸炎の原因になることがある。
  • CDトキシン陽性は、症状がある場合にC. difficile感染症を疑う重要な所見である。
  • トキシン検査は特異度が高い一方、感度が十分でなく偽陰性が起こることがある。
  • 感染対策では、手指衛生、接触予防策、環境消毒、抗菌薬の適正使用が重要である。

CDトキシンとは何か

CDトキシンとは、クロストリジオイデス・ディフィシルが作る毒素のことである。

C. difficileは、芽胞を形成する嫌気性グラム陽性桿菌である。腸内に存在することがあり、健康な人では問題を起こさないこともある。しかし、抗菌薬などにより腸内細菌のバランスが崩れると、C. difficileが増殖し、毒素を産生して下痢や大腸炎を起こすことがある。

C. difficileが産生する主な毒素には、トキシンAとトキシンBがある。これらの毒素が大腸粘膜を傷害し、炎症、下痢、腹痛、発熱などを引き起こす。

CDトキシンは、C. difficile感染症の病原性に関わる重要な毒素である。

C. difficile感染症とは

C. difficile感染症とは、C. difficileが腸内で増殖し、毒素を産生することで起こる感染性腸炎である。

典型的には、抗菌薬使用中または使用後に水様下痢、腹痛、発熱、食欲低下、吐き気などが出る。重症例では、脱水、大腸炎、中毒性巨大結腸、敗血症、腸管穿孔などを起こすことがある。

CDCは、C. diffは下痢と大腸炎を引き起こす細菌であり、生命を脅かすことがあると説明している。また、多くの症例は抗菌薬の使用中または使用後に発生するとされる。

C. difficile感染症でみられる症状

  • 水様下痢
  • 腹痛、腹部圧痛
  • 発熱
  • 食欲低下
  • 吐き気
  • 脱水
  • 重症例では血圧低下、意識障害、腸管拡張など

抗菌薬を飲んだ後に下痢が続く場合、単なる胃腸炎ではなくC. difficile感染症を考える必要がある。

なぜ抗菌薬の後に起こりやすいのか

C. difficile感染症は、抗菌薬によって腸内細菌のバランスが崩れることで起こりやすくなる。

腸内には多くの常在菌が存在しており、C. difficileの増殖を抑える働きをしている。しかし、抗菌薬を使用すると、原因菌だけでなく腸内の正常細菌も減少することがある。

その結果、C. difficileが増殖しやすくなり、毒素を産生して下痢や大腸炎を起こす。

CDCは、C. diff感染症のリスク因子として、抗菌薬使用、C. diff感染症の既往、65歳以上、最近の医療機関・介護施設滞在、重い基礎疾患や免疫低下を挙げている。

リスク因子 理由
抗菌薬使用 腸内細菌叢が乱れ、C. difficileが増えやすくなる。
高齢者 感染しやすく、重症化しやすい。
入院・介護施設入所 C. difficileに接触する機会が増える。
免疫低下 感染症が重症化しやすい。
過去のC. difficile感染症 再発することがある。

抗菌薬使用後の下痢では、C. difficile感染症を見逃さないことが重要である。

CDトキシン検査とは

CDトキシン検査とは、便の中にC. difficileの毒素があるかを調べる検査である。

便検査には、トキシン検査、GDH抗原検査、NAAT/PCR検査などがある。施設によって、これらを単独または組み合わせて使用する。

CDCは、C. difficile感染症の診断に用いられる検査として、分子検査、抗原検査、トキシン検査などを挙げている。分子検査は毒素産生C. difficileの存在に対して高感度である一方、症状のない保菌者でも陽性になり得ると説明している。

検査 特徴
トキシン検査 便中の毒素を調べる。陽性なら活動性の感染を示唆しやすいが、偽陰性がある。
GDH抗原検査 C. difficileがいるかを調べる。感度は高いが、毒素産生株かどうかはわからない。
NAAT/PCR検査 毒素遺伝子を調べる。感度は高いが、保菌でも陽性になることがある。
便培養 時間がかかり、日常診療では限定的に使われる。

CDトキシン検査は、単独の結果だけでなく、症状や他の検査と合わせて解釈する必要がある。

CDトキシン陽性の意味

CDトキシン陽性とは、便中にC. difficileの毒素が検出された状態である。

水様下痢や腹痛、発熱などの症状がある人でCDトキシンが陽性であれば、C. difficile感染症を強く疑う。

ただし、検査結果だけでなく、臨床症状が重要である。C. difficileは症状がない人の腸内に存在することもあるため、症状のない人に検査を行うと、保菌を拾ってしまう可能性がある。

CDトキシン陽性で確認すること

  • 水様下痢があるか
  • 1日3回以上の下痢があるか
  • 抗菌薬使用歴があるか
  • 入院歴や介護施設利用歴があるか
  • 腹痛や発熱があるか
  • 白血球増多や腎機能悪化があるか

CDトキシン陽性は重要な所見だが、「検査陽性」だけでなく「症状があるか」が診断上非常に重要である。

CDトキシン陰性なら否定できるのか

CDトキシン陰性でも、C. difficile感染症を完全に否定できないことがある。

トキシン検査は、C. difficileが実際に毒素を産生しているかを見る点で有用である。しかし、感度が十分ではなく、偽陰性が起こることがある。

MSD Manualは、トキシンEIA検査は特異度は高いが感度は高くなく、偽陰性が起こると説明している。一方、NAAT/PCRは毒素産生株の存在に対して高感度であるが、活動性の毒素産生を直接示すものではない。

そのため、症状が強い場合や臨床的に疑わしい場合は、GDH抗原やNAAT/PCRを組み合わせて判断することがある。

偽陰性とは何か

偽陰性とは、本当は病気や原因があるのに、検査結果が陰性になることである。

CDトキシン検査では、便中の毒素量が少ない、検体の状態が悪い、検査の感度に限界があるなどの理由で、偽陰性になることがある。

ただし、下痢がない人や症状が乏しい人に何度も検査を行うことは、かえって過剰診断につながることがある。

偽陰性を考える状況

  • 抗菌薬使用後の水様下痢が続いている
  • 腹痛や発熱を伴う
  • 白血球増多や腎機能悪化がある
  • 入院中または介護施設入所中である
  • トキシン検査のみ陰性だが、臨床的に疑わしい

CDトキシン陰性でも、症状が続く場合は自己判断せず、医師に再評価してもらうことが重要である。

NAAT/PCR陽性とトキシン陰性の違い

NAAT/PCR陽性でトキシン陰性の場合、C. difficileを保菌しているだけなのか、感染症として治療が必要なのかを慎重に判断する必要がある。

NAAT/PCRは、C. difficileの毒素遺伝子を調べる検査である。感度が高く、毒素産生能を持つ菌の存在を検出しやすい。一方で、実際に毒素が出て症状を起こしているかまでは直接示さない。

そのため、NAAT/PCR陽性でも、下痢がない人や別の原因で下痢をしている人では、C. difficile感染症ではなく保菌を見ている可能性がある。

検査結果 考え方
トキシン陽性 症状があればC. difficile感染症を強く疑う。
GDH陽性・トキシン陰性 C. difficileはいる可能性があるが、毒素検出は陰性。NAAT/PCRなどで確認することがある。
NAAT/PCR陽性・トキシン陰性 保菌と感染症の区別に注意が必要である。
GDH陰性・トキシン陰性 C. difficile感染症の可能性は低くなる。

C. difficile検査は、検査結果の組み合わせと症状を合わせて解釈する検査である。

検査すべき人・検査しない方がよい人

C. difficile検査は、下痢などの症状がある人に対して行う検査である。

症状のない人に検査を行うと、保菌を検出してしまい、不要な治療につながる可能性がある。

MSD Manualは、C. difficile感染症の検査は、複数回の水様便があるなど症状のある患者に行い、無症状者では保菌率があるため、適切な臨床状況で解釈する必要があると説明している。

検査を考える状況

  • 抗菌薬使用中または使用後に水様下痢がある
  • 入院中に新たな下痢が出た
  • 発熱や腹痛を伴う下痢がある
  • C. difficile感染症の既往があり、下痢が再発した
  • 介護施設入所中で下痢が続く

下痢がない人に「念のため」CDトキシン検査をすることは、原則として適切ではない。

C. difficile感染症の治療

C. difficile感染症の治療では、原因となった抗菌薬の中止・変更を検討し、必要に応じてC. difficileに有効な抗菌薬を使用する。

CDCは、C. diff感染症は通常、バンコマイシンまたはフィダキソマイシンなどの特定の抗菌薬で少なくとも10日間治療されると説明している。

以前はメトロニダゾールが使われることも多かったが、近年は重症度や再発リスクに応じて、バンコマイシンやフィダキソマイシンが選択されることが多い。

治療で考えること

  • 不要な抗菌薬を中止できるか
  • 脱水補正
  • バンコマイシンやフィダキソマイシンなどの治療薬
  • 重症度評価
  • 再発リスクの評価
  • 重症例では入院管理や外科的対応

自己判断で下痢止めを使ったり、抗菌薬を中止・再開したりせず、医師の指示に従う必要がある。

下痢止めを使ってよいか

C. difficile感染症が疑われる下痢では、自己判断で下痢止めを使うべきではない。

腸管の動きを強く抑える薬を使うと、毒素や炎症を腸内にとどめてしまい、状態が悪化する可能性がある。特に発熱、腹痛、血便、強い下痢がある場合は注意が必要である。

下痢がつらい場合でも、市販薬で抑え込むのではなく、脱水を避けながら医療機関へ相談することが重要である。

抗菌薬使用後の下痢では、下痢止めよりも原因評価が優先である。

感染対策で重要なこと

C. difficile感染症では、接触感染対策が重要である。

C. difficileは芽胞を形成するため、環境中で長く残りやすい。便で汚染された手指、トイレ、ドアノブ、ベッド柵、医療器具などを介して広がることがある。

CDCは、C. diff感染予防として、トイレ後や食事前に石けんと水で手洗いを行うこと、表面や洗濯物を清掃・消毒することを挙げている。

感染対策のポイント

  • 石けんと流水で手を洗う
  • トイレ後は特に丁寧に手洗いする
  • 便で汚れた場所を適切に清掃・消毒する
  • 医療機関では接触予防策を行う
  • 不要な抗菌薬使用を避ける

アルコール手指消毒だけではC. difficileの芽胞に十分効きにくいため、石けんと流水による手洗いが重要である。

家庭での注意点

C. difficile感染症と診断された場合、家庭内でも便を介した感染拡大を防ぐことが重要である。

トイレ使用後の手洗い、便で汚れた衣類や寝具の処理、トイレやドアノブの清掃を丁寧に行う。特に高齢者、免疫力が低下している人、抗菌薬を使用中の人が同居している場合は注意が必要である。

家庭で意識したいこと

  • トイレ後は石けんと水で手を洗う
  • タオルの共有を避ける
  • 便で汚れた衣類は適切に洗濯する
  • トイレ、便座、ドアノブを清掃する
  • 下痢が続く間は、家族への感染に注意する

家庭内で過度に恐れる必要はないが、便を介して広がる感染症であることを意識した対策が必要である。

再発することはあるか

C. difficile感染症は再発することがある。

治療後にいったん改善しても、数日から数週間後に再び下痢や腹痛が出ることがある。再発時には、再度便検査や治療が必要になることがある。

再発リスクは、高齢者、重い基礎疾患、免疫低下、抗菌薬の再使用、過去のC. difficile感染症などで高くなる。

再発を疑う状況

  • 治療後に下痢が再び出てきた
  • 腹痛や発熱を伴う
  • 抗菌薬を再び使用した
  • 過去にもC. difficile感染症を繰り返している

再発が疑われる場合は、以前の薬が残っていても自己判断で飲まず、医療機関で相談するべきである。

重症化のサイン

C. difficile感染症では、重症化のサインを見逃さないことが重要である。

重症例では、脱水、腎機能悪化、著明な白血球増多、低血圧、腸管拡張、中毒性巨大結腸などを起こすことがある。

早めに受診すべき症状

  • 水様下痢が何度も続く
  • 発熱がある
  • 強い腹痛や腹部膨満がある
  • 血便がある
  • 水分がとれない
  • 尿量が少ない
  • ぐったりしている
  • 意識がぼんやりする
  • 高齢者、免疫低下、重い基礎疾患がある

抗菌薬使用後の下痢で、発熱や強い腹痛、脱水症状がある場合は、早めに医療機関を受診する必要がある。

よくある質問

CDトキシン陽性とはどういう意味ですか?

便中にC. difficileの毒素が検出されたという意味である。下痢や腹痛などの症状がある場合、C. difficile感染症を疑う重要な所見である。

CDトキシン陰性ならC. difficile感染症ではありませんか?

完全には否定できないことがある。トキシン検査は偽陰性があり得るため、症状が強い場合はGDH抗原やNAAT/PCRなど他の検査と合わせて判断する。

PCR陽性なら治療が必要ですか?

必ずしも治療が必要とは限らない。PCRは毒素遺伝子を持つ菌の存在を検出するが、保菌でも陽性になり得る。下痢などの症状と合わせて判断する。

抗菌薬を飲んだ後の下痢はすべてC. difficileですか?

すべてではない。抗菌薬による一時的な下痢、ウイルス性胃腸炎、食事、別の腸炎などでも下痢は起こる。ただし、抗菌薬後の水様下痢が続く場合はC. difficile感染症を考える。

家族にうつりますか?

便を介して感染が広がる可能性がある。トイレ後の石けんと流水による手洗い、トイレや便座の清掃、タオルの共有を避けることが重要である。

まとめ

CDトキシンとは、C. difficileが産生する毒素であり、抗菌薬使用後の下痢や大腸炎の原因になることがある。

C. difficile感染症では、水様下痢、腹痛、発熱、食欲低下、吐き気などが出る。重症例では脱水、大腸炎、中毒性巨大結腸、敗血症などを起こすことがある。

CDトキシン陽性は重要な所見だが、検査結果だけでなく、症状、抗菌薬使用歴、入院歴、GDH抗原、NAAT/PCRなどを合わせて判断する必要がある。

トキシン検査は活動性の感染を示唆しやすい一方、偽陰性がある。PCR/NAATは感度が高いが、保菌でも陽性になり得るため、過剰診断に注意が必要である。

感染対策では、石けんと流水による手洗い、接触予防策、環境消毒、不要な抗菌薬を避けることが重要である。

抗菌薬使用後に水様下痢が続く、発熱や強い腹痛がある、脱水症状がある、高齢者や免疫低下がある場合は、早めに医療機関へ相談するべきである。

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出典

  • CDC. About C. diff.
  • CDC. C. diff: Facts for Clinicians.
  • CDC. Clinical Testing and Diagnosis for C. diff Infection.
  • MSD Manual Professional Edition. Clostridioides difficile Infection.
  • Kelly CR, Fischer M, Allegretti JR, et al. ACG Clinical Guidelines: Prevention, Diagnosis, and Treatment of Clostridioides difficile Infections. American Journal of Gastroenterology. 2021;116(6):1124–1147.