人間ドックや健康診断などで頭のCTやMRIを撮影すると、松果体嚢胞(読み方は「しょうかたいのうほう」、英語では「pineal cyst」)を指摘されることがあります。

頻度としては、頭部CT、MRI検査をした人の1-5%に認められると言われており、それほど稀なものではありません。

そこで今回は、この松果体嚢胞について実際のCT・MRI画像を見ながらわかりやすく解説しました。

松果体嚢胞とは?

松果体嚢胞とは文字どおり、松果体(しょうかたい)にできる嚢胞で、非腫瘍性の良性病変です。

上で述べたように、頭部CT、MRI検査をした人の1-5%に偶然見つかることが多く、内部には、液貯留を認めます。

男女比は3:1で男性に多く、80%は10mm以下のサイズが小さいものですが、大きいものですと4cmを超えるものも報告されています。

松果体の正常解剖としては下のMRI(T2強調像)の部位に存在しています。

松果体嚢胞の原因は?

原因としては

  • 松果体の発達異常
  • 部分的な液状変性

と考えられています。

発生の過程で、松果体は憩室として発生しますが、本来消失するその腔が残ることによって生じるとされています。

嚢胞の壁や線維性成分や正常の松果体細胞で構成されていると報告されています。

松果体嚢胞の症状は?

偶発的に画像診断で見つかることが多く、通常はほとんどが無症状ですが、稀に松果体嚢胞が中脳水道を圧迫し、(非交通性の)水頭症をきたすことがあり、それに伴う症状が起こることがあります。

具体的には、

  • 頭痛
  • 吐き気・嘔吐
  • 全身の倦怠感

などの症状です。

それ以外には、視蓋という部位を圧排することにより、Parinaud症候群をきたしたり、嚢胞内に出血をきたして、非常にまれではありますが、松果体卒中を起こし、急性水頭症から突然死を起こすこともあります。

松果体嚢胞のCT、MRI画像所見は?

松果体嚢胞の形は円形〜類円形を示し、薄い嚢胞壁を有します。

CTやMRIといった画像検査では、嚢胞の有無に加えて、中脳水道を圧迫して水頭症をきたしていないかをチェックすることが重要です。

CT所見

松果体嚢胞は、内部は液貯留であるため、CTでは髄液とほぼ同じ吸収値を示すため、嚢胞であることに気づかないことも多いとされます。

時に出血などを反映してやや高吸収になることもあります。

嚢胞壁には石灰化を認めることがあります(25%程度)が、この石灰化部分は圧排された松果体そのものであるといわれています。

(松果体は脳の中でも生理的な石灰化を起こしやすい部位として知られています。)

症例 40歳代男性 スクリーニング

松果体に石灰化および髄液とほぼ同じ吸収値の長径2cm大の嚢胞性病変を疑う所見あり。

松果体嚢胞を疑う所見です。

こちらの症例を動画でチェックする。

症例 70歳代 男性

頭部CTにおいて松果体部に髄液とほぼ同じ吸収値の1cm大の嚢胞性病変を疑う所見あり。

辺縁には石灰化あり。

松果体嚢胞を疑う所見です。

MRI所見

MRIでは、内部が液貯留であることを反映して、T2強調像で高信号を示しますが、タンパク濃度の高い液貯留や出血成分を認める場合は、T1強調像やFLAIR像で髄液よりも高信号をきたすことがあります。

造影剤を用いると内部は造影されずに嚢胞壁のみ薄く造影されることがあります。

症例 70歳代 男性(上のCTと同一症例)

MRIではT1強調像及びT2強調像で髄液と同じ程度の信号強度、FLAIR像にて高信号を示す1cm大の嚢胞性病変を疑う所見あり。

松果体嚢胞を疑う所見。

松果体嚢胞の治療は?

多くは経過観察もしくは典型的な松果体嚢胞の場合は、画像検査でのフォローなしに臨床的な経過観察のみされることもあります。

時に内部に出血を起こしたり、サイズが増大することがありますが、そのようなことがなければ、通常は加齢とともに縮小するといわれています。

症状がない場合や典型例では治療はされませんが、非典型例で腫瘍の可能性がある場合や、症状がある場合は、

  • 吸引、生検、切除

がおこなわれることがあります。

松果体嚢胞の鑑別診断は?

鑑別診断としては、

  • 松果体細胞腫
  • 胚芽腫
  • 髄膜腫

などの腫瘍性病変が挙げられます。

 

最後に

良性病変であり、頭部のCTやMRIといった画像検査で偶発的に見つかることがほとんどである松果体嚢胞についてまとめました。

多くの書籍や論文では「正常変異」として正常範囲内として扱われています。

参考)脳ドックで見つかる正常変異はこちらも重要→くも膜顆粒のCT,MRI画像はこれ!役割は?

ほとんどは無症状でありますが、稀にサイズが大きくなって脳室を圧排して水頭症をきたしたり、内部に出血をきたすことによって症状をきたすことがあるということをおさえておきましょう。

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