Cause of gastric submucosal tumor Eye-catching image

 

胃粘膜より下の層に病変が存在するものを胃粘膜下腫瘍といいます。

胃粘膜下腫瘍ではGIST(消化管間質腫瘍)が最多ですが、その他にも良性のものから悪性のものまで様々あります。

今回はこの胃粘膜下腫瘍(読み方は「いねんまくかしゅよう」英語表記で「Gastric submucosal tumor」)について

  • 分類
  • 原因
  • 良性・悪性
  • 症状
  • 検査
  • 治療

などをご説明致します。


胃粘膜下腫瘍とは?

胃粘膜下腫瘍は、胃粘膜より下層(深い位置)に病変があらわれます。

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その病変が、表面と周囲の粘膜が同様のもので覆われた腫瘤性病変の総称を胃粘膜下腫瘍といい、その中でも間葉系腫瘍(骨細胞・心筋細胞・軟骨細胞・腱細胞・脂肪細胞などに発生する腫瘍)とそれ以外のものとで分類されます。

胃粘膜下腫瘍の分類

胃粘膜下腫瘍は、次のように分類されます。

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まず大きく、間葉系腫瘍と、それ以外に分けられます。

間葉系腫瘍では、

その他のものでは、

  • 迷入膵
  • 悪性リンパ腫
  • 転移性腫瘍

などがあります。

この胃粘膜下腫瘍の中では、発生する腫瘍としてGISTが最多となります。

このGISTは、消化管に生じる胃粘膜下腫瘍の中の一部であり、カハール介在細胞系由来の腫瘍となります。

カハール介在細胞系とは?

消化管にある細胞で、消化管の運動やリズムを調整するペースメーカー細胞です。

このカハール介在細胞の元となる細胞が、異常に増殖し腫瘍化してGISTが発生します。

胃粘膜下腫瘍の原因・鑑別は?

原因はその分類により様々で

  • GISTの場合は、突然変異
  • 筋原性腫瘍の場合は、原因不明なもののピロリ菌や生活習慣・食生活が要因
  • 神経原性腫瘍の場合は、原因不明(常染色体優体遺伝の場合もある)
  • 迷入膵の場合は、胎児期の異常
  • 悪性リンパ腫の場合は、EBウイルス(エプスタイン・バール・ウイルス「ヘルペスウイルス科」)
  • 転移性腫瘍の場合は、他の悪性腫瘍による転移

が原因と言われています。

胃粘膜下腫瘍が悪性の場合はある?

基本的に2cm以上のものならば悪性度が高くなるといわれていますが、無症状で2cm以下の病変でも、中には悪性の場合もあり、大きさによって100%悪性ではないとは言い切れないところがあり、良性・悪性の正確な診断には生検が必要です。

また、分類それぞれによって悪性・良性は異なるので、説明します。

  • GIST・・・悪性の場合もある
  • 平滑筋腫・・・良性腫瘍
  • 平滑筋肉腫・・・悪性腫瘍
  • 神経原性腫瘍・・・悪性の場合もある
  • 迷入膵・・・良性
  • 悪性リンパ腫・・・悪性
  • 転移性腫瘍・・・悪性

胃粘膜下腫瘍の症状は?

中には無症状のものもありますが、以下のような症状があらわれる場合もあります。
  • 腹痛
  • 胃部不快感
  • 吐き気
  • 下血
  • 黒色便
  • 貧血

腫瘍からの出血で下血や黒色便となることもあり、その場合貧血をともなうこともあります。

胃粘膜下腫瘍の検査、診断は?

  • CT
  • 内視鏡
  • 胃X線検査(胃バリウム検査)
  • 超音波検査
  • 生検

を行い診断します。

1つの検査だけで診断に至るのではなく、これらの検査を複合し、原因と合わせ診断に至ります。

胃X線検査(胃バリウム検査)では、bridging foldという所見が胃粘膜下腫瘍の鑑別にもなります。

bridging foldとはヒダが腫瘍をよけず、腫瘍の上を走る所見で、ポリープなどはヒダをよけてあらわれるのに対し、胃粘膜下腫瘍では、ヒダが崩れない所見です。

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症例 50歳代男性 胃GIST術前検査

上部消化管内視鏡(胃カメラ)で胃底部に粘膜下腫瘍を認めています。胃のGISTを疑う所見です。

続いて胃X線検査(胃バリウム検査)です。

こちらでも胃底部に隆起性病変を認めていることが確認できます。

 

また造影CTでは、GISTそのものの描出の他に、リンパ節転移や肝臓への転移の有無などを広くチェックします。

 

CTでは同定できないこともありますが、この場合はサイズが大きく、CTでも非常にわかりやすく描出されています。

症例:60歳代男性

上腹部の不快感を訴え受診。

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(出典:医師国家試験過去問104A22)

上部消化管造影写真によりbridging foldを有する腫瘤性病変あり。
こちらもサイズが大きな胃粘膜下腫瘍を疑う所見です。

胃粘膜下腫瘍の治療は?

基本的に、腫瘍が2cm以下で症状がなく良性であれば、経過観察となります。

ですが、それ以外の場合は外科的切除術をおこないます。

また、転移がある場合や再発をきたした場合には、分子標的治療薬などを選択します。

 

最後に

  • 病変が、表面と周囲の粘膜が同様のもので覆われた腫瘤性病変の総称を胃粘膜下腫瘍という
  • 間葉系腫瘍では、GIST(消化管間質腫瘍)・筋原性腫瘍(平滑筋腫・平滑筋肉腫)・神経原性腫瘍(神経鞘腫)
  • その他のものでは、迷入膵・悪性リンパ腫・転移性腫瘍
  • 原因は分類により様々
  • 無症状なこともあるが、症状をともない、腫瘍から出血があれば下血することもある
  • CT・内視鏡・超音波検査・生検などによって診断する
  • 良性の場合は経過観察となることもあるが、悪性の場合は外科的切除術が第一選択される

 

無症状な場合は、健康診断等でたまたま見つかることが多く、良性か悪性か、その鑑別が重要です。

悪性の場合は転移を含めさらに詳しく調べる必要があります。




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