脈拍数(みゃくはくすう)は、命の危険があるかどうかを判断するときに必要なバイタルサインのひとつです。
脈拍を測定することで、心臓をはじめとした循環器系の異常を早期に発見することに役立ちます。
脈拍とは、血液が心臓から体の中のいたるところを走る大動脈に送り出される時に生じる拍動のこと。
でも正しい脈の測り方って知っていますか?
正しい、といわれると自信がないような・・・。
今回は、
- 脈拍測定の方法
- 脈を測る時のポイント
- 異常値の時に考えられる病気
などについてまとめました。
脈拍測定の方法は?
一般的によく知られた方法として、橈骨動脈(とうこつどうみゃく:手首内側の親指側)に人差し指・中指・薬指の3本(場合によっては2本のことも)を軽く当て、原則として1分間数えることによって数値を出します。
30秒間数えてその数を2倍、簡易測定法として15秒数えてその数を4倍にすることも。
1分あたり何回かというのが脈拍数です。
脈拍は体の表面を走る動脈に触れることによって感知することができ、通常は診察などしやすい橈骨動脈を用いますが、他にも脈を測れる部位があります。
- 総頸動脈(そうけいどうみゃく)
- 大腿動脈(だいたいどうみゃく)
- 足背動脈(そくはいどうみゃく)
一つ一つ実際の写真を用いて見ていきましょう。
総頸動脈
総頸動脈は耳の下から鎖骨あたりにまで走る動脈です。
橈骨動脈で脈が触れない場合などに総頸動脈で測ることがあります。
大腿動脈
大腿動脈は太ももの付け根、鼠径部といわれる部位あたりに走る動脈です。
こちらも橈骨動脈で脈が触れない場合に用いられることがあります。
足背動脈
足の甲の中央付近に走る動脈です。
下肢の脈拍の状態を把握したいときに用いられることがあります。
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脈拍測定の正常値・異常値の見分け方は?
脈を測っても、どれくらいの回数であれば正常であるといえるのでしょうか。
1分間に100以上になると、頻脈といって異常値。
逆に1分間に50以下になると、徐脈といってこれも異常値になります。2)
ちなみに・・・脈拍数は、運動や入浴後、食事、 精神的な緊張によっても100以上になることがあります。
したがって、 正常な状態でリラックスして測定するように心がけましょう。
また正常な人でも運動をした直後の安静時に測ると、50以下に下がることもあります。
- リズム
- 大きさ
- 速さ
脈拍のリズム
通常心臓は一定のリズムで収縮をして血液を送り出します。
そのため、脈拍も同じように一定のリズムで刻まれます。
心臓が収縮するリズムが何かの原因で乱れてしまうと、脈拍のリズムにも影響してくるわけです。
そのリズムが不規則に崩れてしまうことを不整といいます。
脈拍の大きさ
脈の大きさとは、脈に触れている指がどれくらい押し上げられているかということ。
生理的に呼吸でも脈の大小は出ますが、その程度が極端に大きく触れることを大脈、逆に小さく触れることを小脈といいます。
脈の大きさは収縮期血圧と拡張期血圧の差である脈圧に反映します。
脈拍の速さ
脈の速さとは、脈の立ち上がりの速さのこと。
脈波が急激に最高に達して急に消失する脈拍を速脈、脈波が徐々に高まり徐々に下降する脈拍を遅脈といいますが、いずれも異常とされます。
脈拍数が異常なときに考えられる主な病気は?
脈拍数が100以上の頻脈の場合は?
- 発熱
- 心不全
- 甲状腺機能亢進症(Basedow病)
- 肺結核
- 疼痛
- 頻脈性不整脈
- 貧血
などが考えられます。
脈拍数が50以下の徐脈の場合は?
- 脳出血や腫瘍などによる脳圧の亢進
- 甲状腺機能低下症
- 徐脈性不整脈
- 黄疸
- 疝痛
- 熱生病の回復期
- 薬剤(β遮断薬、ジギタリスなど)
- 房室ブロック
などが考えられます。
不整脈の場合は?
- 呼吸性不整脈:息を吸い込むときに脈が速くなる(若年層でよくみられるが、病的な意義はない)
- 期外収縮:脈が1つ抜けたようになる(心疾患がある場合や頻繁に発生することがあれば注意する)
- 絶対性不整脈:脈のリズムや大きさが不規則(心房細動による不規則な心臓の収縮が原因のことがほとんど)
が、考えられます。
大脈の場合は?
- 甲状腺機能亢進症(Basedow病)
- 動脈硬化
- 重症貧血
- 脚気(かっけ)
- 大動脈弁閉鎖不全症
- 動脈管開存症
- バルサルバ洞動脈瘤破裂
などが考えられます。
小脈の場合は?
- 大動脈弁狭窄症
- 心原性ショック
- 心タンポナーデ
が考えられます。
速脈・遅脈の場合は?
- 速脈:甲状腺機能亢進症(Basedow病)・大動脈弁閉鎖不全症・動脈管開存症・バルサルバ洞動脈瘤破裂
- 遅脈:大動脈弁狭窄症
が考えられます。
参考書籍:病気が見える②循環器 P340〜342 1)2)病気が見える②循環器 P341
最後に
- 橈骨動脈(手首内側の親指側)に3本の指を軽く当て、原則として1分間数えることによって数値を出す
- 簡易測定法として15秒測って4倍に、30秒測って2倍にすることもある
- 1分間に100以上になると頻脈、逆に1分間に50以下になると徐脈
- 回数のほかに、脈拍のリズム・大きさ・速さにも注意する
脈拍を測るだけでもさまざまなことがわかります。
普段脈を測る習慣はなかなかないと思いますが、特別な医療機器も必要なく、自分で簡単に1分あれば測定できるものです。
脈は体の調子を測るひとつのバロメータにもなりますから、血圧のように測る習慣をつけてもいいかもしれないですね。
また、上で挙げたようなさまざまな病気で変化しますので、病気を発見する手がかりになることもあります。