下垂体腺腫というと下垂体という目の奥に位置する部分に出来る脳腫瘍の一種です。
人間ドックや脳ドックなどでたまたま下垂体に腫瘍が見つかることがあり、これを下垂体偶発腫と言い、10%程度とかなり高頻度で見つかります。下垂体腺腫はこの下垂体偶発腫でも最多なのです。
脳は様々な神経が密集しているため、手術で腫瘍を取り出すことが出来ても、後遺症は残らないのか?なども心配になってくると思います。
そこで今回は下垂体腺腫について・・・
- 下垂体腺腫について
- 症状
- 診断方法
- 治療法
などを分かりやすくご説明したいと思います。
下垂体腺腫とは?どんな病気?
- 良性の脳腫瘍
- 好発年齢は20〜40代
下垂体腺腫は、脳にできる腫瘍で脳腫瘍の中でも15%を占めるほど多いものなんですが、良性の腫瘍になります。脳の下垂体前葉(目の奥の部分)から発生し、20〜40代に多い病気です。
下垂体腺腫の分類は?
下垂体腺腫は、ホルモン産生の有無で
- 機能性
- 非機能性
に分けられます。その他、その腫瘍の大きさが1cmあるかどうかでも判断され、
- 1cm以下のものを微小腺腫(microadenoma)
- それ以上の大きさのものを大腺腫(macroadenoma)
と言います。
ただ、どうしてこの下垂体腺腫が出来るのか?原因はまだハッキリ分かっていません。
下垂体腺腫はどんな症状が出るの?
機能性のものの場合は、ホルモン異常などもあり症状が出るのが特徴で、非機能性の場合は腫瘍のみで症状は出ないのが特徴でもあります。
また、腫瘍が大きいものになると、その腫瘍による神経圧迫で様々な症状が出たりします。
腫瘍の神経圧迫による症状
- 目の奥に重みを感じる
- 頭痛(目の奥や額)
- 視野障害
- 視力障害
このような症状が出ると眼科を受診すると思いますが、眼科で下垂体腺腫を疑われることもしばしばあります。
ホルモン異常による症状
ホルモン異常には、内分泌液の過剰増加があり、それぞれのホルモン異常によって症状も異なります。
プロラクチンが多く作られるようになると・・・
- 月経異常
- 不妊
- 乳汁分泌
- 性欲減退
成長ホルモンが多く作られるようになると・・・
- 身長のが急に異常な増加を見せる
- 指が太る
- 唇が厚くなる
- あごがしゃくれる
- 手のしびれ
- 心疾患
- 高血圧
- 糖尿病
副腎皮質刺激ホルモンが多く作られるようになると・・・
- 肥満
- 色素沈着
- 毛が濃くなる
- ニキビができる
- 血圧上昇
- 骨粗鬆症
このような症状は他の病気とも間違えやすく、内科や婦人科を訪れ、まさかの脳からの症状?!と驚かれる人も多いんです。
下垂体腺腫の診断方法は?
症状から他の病気と間違われることも多くありますが、その中から下垂体腺腫を疑う場合も多くありますが、診断を確実に裏付けるには画像診断が有効的です。
中でもMRIが、どこに腫瘍が出来ているのか、神経圧迫部位や腫瘍の大きさ等も分かりやすく、確定診断が出来ます。
下垂体腺腫のMRI画像所見は?
下垂体腺腫は充実性のことが多いのですが、内部に出血性嚢胞変性がある場合が10%程あります。
microadenomaの場合
サイズが小さなmicroadenomaの場合、造影剤を用いたダイナミック撮影が最も描出率が良いとされています。
正常な場合、下垂体は血流が非常に豊富で強く増強されるため、腫瘍の血流が乏しいわけではないものの、腺腫は相対的に低信号となります。前葉がよく造影されるダイナミックの門脈相の造影剤注入後1分前後でコントラストが分かりやすくなります。
macroadenomaの場合
腫瘍が上部に突出すると、視交叉を圧迫して視野障害などの症状をきたす原因となります。この様子はMRAの場合、上部と内頸動脈のsiphon部の開大を示すのが典型的です。
海綿静脈洞へ腫瘍が進入してた場合、全てを取り除くことが大変になるんですが、海綿静脈洞に進展する所見としては、
- 内頸動脈の狭窄
- 腫瘍が内頸動脈を2/3周以上取り囲んでいる
- 内頸動脈の下内側部の海綿状脈洞部(carotid sulcus venous component)に進入してる
ことなどで分かります。
その他、画像と腫瘍の相関で報告されていること
- 成長ホルモン産生腫瘍はT2強調像で低信号を示す傾向にある。
- 男性のプロラクチン産生腫瘍は頭蓋底進展が強い傾向にある。
- 副腎皮質刺激ホルモンは下垂体後葉の前方からも発生することがある。
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下垂体腺腫が見つかったらその後の画像のフォローはどうなる?
米国内分泌学会ガイドライン2011によると、CTで偶発的にトルコ鞍内(※トルコ鞍内とは下垂体が存在する場所です)病変を見つけた場合、下垂体を評価する撮影方法のMRIでその病変の性状を評価するとされています。
-
CTで下垂体部に腫瘍がたまたま見つかった。→MRIでさらに詳しく検査。
また、その際に腫瘍のサイズが10mmを超えるいわゆるmacroadenomaの場合は、視神経を圧迫することがあるので
- 眼科検査が必須。
とされています。(この際に視野異常が見つかれば外科的手術を考慮します。)
また、見つかった腫瘍が機能性の下垂体腺腫でないかどうかを調べるために
- 下垂体ホルモンなどの内分泌的検査
を行うことがあります。特にプロラクチンを産生する下垂体腺腫の場合、薬物療法に反応することが多いため、血中のプロラクチン測定は有効と言われています。
これらに当てはまらない場合は、半年〜1年ごとにMRI検査でフォローしていきます。ただし、サイズが小さい場合で、サイズに変化がない場合は2-3年ごとのフォローでも良いとされます。
どんな治療方法がある?
下垂体腺腫だからといって全てが治療の対象というわけではありませんが、治療を必要とする場合は以下のような治療法があります。
- 薬物療法
- 手術療法
- 放射線治療
薬物療法
プロラクチンや成長ホルモンが多く作られている場合には、薬物療法が効果的です。ですが、この薬物療法の場合、飲んでいる間だけに効果が現れるため、服用を中止すると症状が再び出てくるので長期間続ける必要があります。
- ブロモクリプチン(パーロデル)
- テルグリド(テルロン)
- カベルゴリン(カバサール)
- オクトレオチド(サンドスタチン)
- ペグビソマント(ソマバート)
などといった薬が使われます。
手術療法
鼻の中から手術をすることが可能で、顕微鏡や内視鏡が使われます。腫瘍をきれいに取り除くことが出来れば完治するものですが、海綿静脈洞に腫瘍が入り込んでしまっていると、手術で完全に取り除けない場合もあります。
また、鼻からは取り出せない大きな腫瘍になると、頭から切開して行うこともあります。
放射線療法
放射線療法は、薬が効きにくい腫瘍や、手術で全部腫瘍を取り除けなかった場合には放射線療法を行います。放射線療法は、幹部だけに放射線を当てるものですが、副作用もあるため慎重に進める必要があります。
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最後に
- 下垂体腺腫は良性の腫瘍ですが原因は不明
- 1cm以下のものを微小腺腫(microadenoma)、それ以上の大きさのものを大腺腫(macroadenoma)という
- 機能性のものの場合は、ホルモン異常などもあり症状が出る
- 非機能性の場合は腫瘍のみで症状は出ない
- それぞれのホルモン異常の種類により症状が異なる
- 薬物療法、手術療法、放射線療法という治療法がある
- たまたま見つかった下垂体腺腫の場合サイズやホルモン値によりフォローが異なる
下垂体腺腫の場合、まさか脳に腫瘍があるなんて、症状からは夢にも思わなかったという人も多いと思います。特に、生理不順や不妊の原因が脳にあるなんて・・・まさか!?ですよね。
でも、このことからも分かるように、症状を放置してはいけないということです。体の異変や不調は必ず何か原因がありますからね。