ノロウイルスと並んでウイルスでも世間一般で最も有名なものにインフルエンザウイルスがあります。冬に流行し、頭痛や関節痛などつらい症状を引き起こします。
そのため予防接種がありますが、この予防接種を打っていれば必ずインフルエンザにかからないわけではありません。
私自身予防接種を打っていたのに、救急外来で仕事をしている最中に、ひどく辛くなり、「もしかして・・・」と簡易検査でチェックすると私自身インフルエンザだったということがあります。
そんなインフルエンザについて今回は徹底的に分かりやすくまとめました。
インフルエンザウイルスとは?うつるの?
1933年にウィルソンスミスらにより同定されたウイルスで、大流行となったスペインかぜの原因病原体です。
抗原性や形状の違いから
- A型インフルエンザウイルス
- B型インフルエンザウイルス
- C型インフルエンザウイルス
の3つに分けられます。
インフルエンザウイルスは
- 感染した人からの飛び散った飛沫を吸い込むこと
- 感染した人からの分泌物に触れること
から感染します。
ですので、インフレンザ感染者はマスクを着用することで飛沫を周りに出さないこと、両手をアルコール消毒することで手すりなどから周りにうつさないことが重要です。
インフルエンザの潜伏期間は?
潜伏期間は平均2日で、報告によっては1-5日の範囲があります。
そして大事なのは、実はこの症状が出ていない潜伏期間から周りにインフルエンザウイルスをうつす可能性があるということです。
下の図を見てください。
これを見てわかるように、症状が出る潜伏期間の間から感染性がある、つまり、周りにインフルエンザを撒き散らしている可能性があるということです。
ということは、周りにインフルエンザ感染者がいれば、自分も知らない間に感染しているだけでなく、周りにうつしている可能性もあるということです。
インフルエンザの症状は?
主に冬にインフルエンザウイルスに人から人へ感染し、
- 発熱
- 頭痛
- 筋肉痛
- 関節痛
- 風邪症状
- 咽頭痛
- 倦怠感など
の症状をきたします。通常症状が強いのは2−3日です。咽頭痛はあっても溶連菌感染とは異なり喉が赤くならないのが特徴です。大人だと5日くらい、子供だと1週間くらい治るのに期間がかかることが多いです。
インフルエンザの診断方法は?
おなじみの方も多いかもしれませんが、インフルエンザには
- インフエンザ迅速診断キット(RIDT:rapid influenza diagnostic test)
があります。綿棒の長いような棒を鼻の奥に入れて粘液を採取して、専用の液体に入れてそれを滴下して陽性になるかをチェックします。A型インフルエンザ、B型インフルエンザの有無を確認することができます。
ただし、このキットは感染してからウイルス量が増える24時間以降でないと感染していても感染していないと出てしまうことがあります。これを偽陰性と言います。
ですので、症状が出てから24時間以内であれば、翌日症状が続いていれば、再検査をすることがあります。
インフルエンザ陽性の証拠がなければ基本的にインフルエンザの薬(抗インフルンザ薬)は処方することができず、対症療法としての薬しか処方しません。ただし、予防的に使うこともあり、その場合は治療の半量で処方したりします。
インフルエンザの解熱薬は?
その理由は、インフルエンザにロキソニンを投与すると
- インフレンザ脳症
- ライ症候群
の発症につながるからです。もちろん非常にまれではあります。しかし、その可能性がありますので、症状や家族・学校・職場などの感染状況からインフルエンザが疑われる場合、ロキソニンは処方されず、
- カロナール®
- コカール®
- アンヒバ®
などのアセトアミノフェンで解熱や鎮痛をはかり、投与されることが多いのが実際です。
インフルエンザと診断されれば、治療には抗インフルエンザウイルス薬があり、飲み薬だけでなく吸入薬や点滴でも治療できます。
インフレンザの治療薬は?
インフルエンザの治療薬には、治療薬が存在しインフエンザウイルスが細胞の外に出て行く時に作る酵素であるノイラミニダーゼを遮断するノイラミニダーゼ阻害薬を用います。
さらに処方方法は1つではなく、
- 飲み薬
- 吸入薬
- 点滴薬
の3つがあります。
飲み薬
タミフル®というカプセルを朝晩1カプセルずつ内服し、それを5日間飲み切ります。インフルエンザでは、最も有名な薬だと思います。
ただし、タミフルは、
- 発症して48時間以上経過しているインフルエンザ
- B型インフルエンザ
には効きにくいとも言われています。
タミフルの副作用を考慮して、タミフル以外に漢方薬として麻黄湯が用いられることもあります。
吸入薬
吸入薬には2種類あります。
リレンザ
一つ目はリレンザ®という吸入薬で、1日2回、毎回ブリスター2個分を吸入します。これを5日間続けます。
ただし、リレンザには喘息を悪化させる報告があり、喘息の人には注意が必要です。
イナビル
もう一つがイナビル®という吸入薬で、1回吸入すれば終わりなので、タミフルやリレンザのように5日間続ける必要はありません。
- 10歳以上:イナビル吸入粉末剤20mgを2つ続けて吸入。
- 10歳未満:イナビル吸入粉末剤20mgを1つ吸入。
ただし、イナビルも喘息を悪化させると言われており、喘息の人には注意が必要です。
点滴
最後に点滴薬です。こちらも1回で終わるので簡便ですね。
ラピアクタ®という点滴薬を15分以上かけて、点滴します。
成人の場合は、300mgを点滴し、小児の場合は、体重1kgあたり10mgの量を点滴します。
ただし、基本的に入院患者に使われることが多いのがこの薬で、外来ではあまり用いません。というのは、基本的にインフルエンザにかかっている方は特に流行期では病院では隔離する傾向にあります。インフルエンザを病院で広げないためです。
- マスクを着用していただき、迅速に検査し、陽性ならば薬を処方して速やかに帰ってもらう。
のが基本となります。15分以上かけて点滴する、その前後の時間を考えると1時間近く院内にインフルエンザの人を置いておくことは、ウイルスをばらまくことにもつながりますので、点滴は基本的には外来向きではないということです。
医療従事者がインフルエンザにかかった場合もすぐに出勤停止になるのが通常です。病気を治すために来た病院で、インフルエンザをもらっては元も子もないからですね。それくらい医療機関ではインフルエンザにかかている人は隔離する必要があるのです。
[adsense]
インフルエンザの治療薬でインフルエンザは治る?
上に述べたようなインフルエンザの治療薬を用いても、治療に即効性があるわけではなく、
- 5日続く症状が4日でおさまる。
と言った24時間程度症状を縮めてくれる(1日程度早く治る)作用がある程度です。もちろん24時間でも症状が早く良くならそれに越したことがないのですが、その程度であるということを覚えておきしょう。
逆に言えば、インフルエンザは薬なしでも治るということですし、インフルエンザの治療薬をもらったから大丈夫というわけではありません。薬をもらった後も、きちんとマスクをして周りの人にうつさないように感染対策をすることは重要です。
タミフルの副作用は?
- 下痢や腹痛などの消化器症状
- フラフラする、異常行動などの神経精神症状
などが報告されています。他には、タミフルを使うことにより耐性ウイルスができてしまう懸念があります。
インフルエンザが治った証明は?学校は?仕事復帰は?
インフルエンザウイルスが全くいなくなった証明は実は医者であってもすることができません。迅速キットで陰性になればインフルエンザウイルスがいないという証明にはならないからです。
ですので、インフルエンザの治療(治癒)証明というのは本来できないことなのです。
インフルエンザを周りにうつす可能性を考慮して目安としては、
- 症状が出て7日以上経過すれば、感染性はない。
- 症状が出て5日経過していて、かつ解熱して2日経っていれば感染性はない。
という基準に当てはめて、学校や仕事に復帰する目安とすれば良いでしょう。
最後に
インフルエンザについて、潜伏期間から、症状、治療薬まで徹底的にまとめてみました。周りでインフルエンザが流行していると自分も感染する可能性がありますし、同時に感染したことに気づく前(症状が出る前)から周りにうつしている可能性もあります。ですので、
- マスク着用
- 手洗い
を徹底することがいつもよりもさらに重要となります。
またインフルエンザの治療薬にもいくつか種類があることがわかりましたね。ただし特に救急の時間外の場合は、行った病院にそれら全てがあるとは限りませんので注意しましょう。