糖尿病はさまざまな症状の出る病気ですが、足にも出るってご存知ですか?
え?
糖尿病が足に出るって、どういうことでしょう?
糖尿病があるために足に出た症状が進行し、最悪な場合、足を切断することになる可能性もあるんです。
そこで今回は、そんな疑問にお答えすべく、糖尿病足病変(読み方はそのまま「とうにょうびょうあしびょうへん」英語表記で「diabetic foot」)について
- 症状
- 原因
- 予防法
- 治療法
以上の事を説明したいと思います。
糖尿病足病変の症状とは?
- 感染症
- 皮膚疾患
- 熱傷・外傷
- 関節疾患
- 浮腫1)
感染症
糖尿病の場合、感染に弱く(易感染性)、
- 蜂窩織炎
- 水虫(爪水虫)
- 趾間カンジダ症
などという感染症を起こしてしまいがちです。
小さな傷から細菌が侵入してしまうものですが、たかが感染症といっても、糖尿病足病変の場合、悪化を招く(壊死性筋膜炎やガス壊疽など)ことにつながります。
皮膚疾患
- 湿疹
- 角化症
- 鶏眼(ウオノメ)
- タコ
- 足趾の皮膚変色
これらは初期症状でもあり、軽視してしまいがちですが、潰瘍や壊疽につながることもあるため、早期に治療をしておくことが重要です。
熱傷・外傷
感覚神経が障害されるため、温感や痛感が低下してしまいます。
そのため、熱いお湯での熱傷だけでなく、低温やけどなども多くあるのです。
また、靴擦れや怪我などにも気づくのが遅れ、それらの傷が治りにくい特徴もあり、この熱傷や外傷が放置されると壊疽や潰瘍へと進展してしまうのです。
関節疾患
- デュプイトラン拘縮(手掌・足底に皮下索状硬結)
- シャルコー足
圧力が部分的にかかること(荷重や圧力)によって変形をきたすもので、それによりさらに靴擦れになりやすかったり、外傷を招きやすくなります。
浮腫
- 神経障害性浮腫
- 腎症による浮腫
神経が障害されるために血流が低下し浮腫となったり、糖尿病の合併症である腎症になると蛋白が出続けている状態となり起こる下肢の浮腫も特徴です。
糖尿病足病変の原因やメカニズムは?
- 神経障害
- 血流障害
- 感染に弱い
神経障害
糖尿病の神経障害は、
- 自律神経
- 運動神経
- 感覚神経
などに分けられます。
自律神経
汗が出にくくなるために、乾燥を招き、その乾燥した皮膚が割れやすくなったり切れやすくなり、そこから細菌が入って感染症を起こしてしまうのです。
運動神経
筋萎縮により、足の筋肉が痩せたり、変形して足指が折れ曲がったり、足底圧の異常をきたします。
そして、足底の特定部位に荷重がかかり、ウオノメやタコ、靴擦れができやすくなるのです。
感覚神経
末端の感覚障害により、痒みや痛みがわかりにくくなったり、熱さに気づかなくなります。
そして、これを繰り返すことで局在圧が高じて、潰瘍化するまでになるのです。
血流障害
下肢閉塞性動脈硬化症(ASO)や血栓などとなり、局所の血流が障害されることで、潰瘍や壊疽を生じやすくなります。
また、血流障害(血流の減少)により、怪我をしても傷が治りにくくなるのです。
感染に弱い
水虫をはじめとする細菌の感染により、症状が進行してしまうことにつながります。
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糖尿病足病変は予防はできる?
早期発見・早期治療で重篤な状態となるのを予防できたり、足に病変が出ないよう気をつけることで、予防できる場合もあります。
そこで足を守るために重要となるのが、フットケアや日頃から足をよく観察し、変化にいち早く気づくことです。
- タコの治療(放置しない)
- 低温熱傷に注意(入浴時の温度や湯たんぽなどに注意)
- 深爪をしない(皮膚を傷つけないように、爪がまっすぐになるように切る)
- 清潔にする
- 足に合った靴を選ぶ2)
誰にでもよくできるタコだからと甘く見ず、初期に削るなりして治療を受けることが大切です。
また、50~60度の低温でも火傷します。
湯たんぽやカイロなど、感覚に障害が出ると火傷しても気付かないこともありますので、注意しましょう。
また、普段から深爪にしない、足を清潔に保つ、足に合った靴を選ぶことで予防にもつながります。
関連記事)糖尿病の合併症で怖い腎症。症状は?
糖尿病足病変の治療法は?進行したら切断しないとだめ?
切断に踏み切るのは、本人にも生活や仕事、すべてに影響が出てしまうので、最終段階(治療に効果がない場合や壊死が進行した場合)3)です。
最近では、切断までしなくても症状がひどい部位だけを切り取り、きれいな皮膚をかぶせるといった治療もあります。
まずは、足病変の原因は何なのか、神経障害・血流障害・変形や骨折など、色んな角度から原因を探ることが大切です。
糖尿病の専門医だけでなく、形成外科・内科・循環器外科・皮膚科・整形外科など、様々な分野の角度から原因に応じた治療を行います。
上記で説明したように、まずは原因を探り、重症度の評価をします。
治療法には、
- 局所的治療
- 感染症治療
- 血流障害治療
- 免荷
- 全身治療4)
という方法があります。
局所的治療
- 壊死組織の除去として、デブリドマン(debridement)
- ドレッシング
- 陰圧閉鎖療法
などがあります。
感染治療
軽症例では、抗菌薬を経口投与しますが、重症例では入院の元、静脈内投与をします。
血流障害治療
薬物療法として、血管拡張薬・抗血小板薬・抗凝固薬があります。
また、血行再建術として、血管内治療やバイバス術が選択されます。
免荷
創部に体重をかけないことが重要です。
そのため、ベッド上安静・松葉杖・免荷用履物などを徹底します。
全身治療
血糖コントロールがとにかく重要ですが、その他にも
- 浮腫
- 心不全
- 腎不全
- 栄養
などのコントロールも行われます。
参考文献:
糖尿病治療ガイド 2016ー2017 P88・89
1)3)糖尿病・代謝・栄養疾患 ビジュアルブックP109 P113 P106〜113
2)患者さんとその家族のための 糖尿病 治療の手びき 改訂第56版P28〜30
4)病気がみえる vol.3 糖尿病・代謝・内分泌P84 P82〜85
最後に
糖尿病足病変について、ポイントをまとめます。
- 糖尿病の足病変は、水虫・靴擦れ・タコ・潰瘍・壊疽などの症状が出る場合がある
- 糖尿病による神経障害や血流障害、感染力が弱まることが原因
- 早期発見、早期治療が大事。症状を甘く見ない
- 足を清潔に保ち、自分に合った靴をえらぶことで予防できる
- 原因を探り、さまざまな方面から専門医に診てもらい治療し、切断は最終段階
水虫や靴擦れやタコなど、糖尿病じゃなても誰にでもでることだからと、とにかく症状を甘く見ないことが大切です。
初期に治療をすることで進行を防げます。
患者本人は感覚が鈍るため、症状が出てるのに気付かず、気付いた時には進行してるということもあるので、日頃から自分の足を気にかけておくことも大切です。
入浴した際などに、自分の手で触って、目で見て洗いながらチェックするのを習慣づけましょう。