拒否してもいいんでしょうか。
バリウム検査の前、注射をすることが多いのですが、やはり薬ですので副作用が気になりますよね。
もし拒否できるのであれば拒否したいという人もおられると思います。
以前、私もバリウム検査前に筋肉注射を受けたうえで検査したんですが、あれってすごく痛いんですよね。
もう検査前から憂鬱でした。
今回は、このバリウム前の注射について
- バリウム検査前の注射の副作用
- どうしてバリウム検査前に注射するのか
- バリウム検査前の注射は筋肉注射が多い?
- 検査前に注射をしなくても問題ないのか
以上について説明したいと思います。
バリウム検査の前にする注射の副作用は?
まずはそれぞれについてみてみましょう。
バリウム検査前の注射の種類は?
バリウム検査前に行う注射は、抗コリン剤やホルモン剤などがあります。
- 抗コリン剤の場合、ブスコパン®(一般名は臭化ブチルスコポラミン)1A (20mg)
- ホルモン剤の場合、グルカゴン®(一般名もグルカゴン)1A(1USP単位)
が代表的です。
多くの病院、検査機関では、ブスコパン®をバリウム前に注射して検査を行うのが一般的です。
そしてグルカゴンはブスコパンが使えない人に用いるのが一般的です。
ただし、施設によっては注射をしない、というところもあります。
まずはブスコパンからです。
ブスコパンの副作用とは?
ブスコパンはバリウム検査前の注射薬として最もよく使われる薬剤です。
それぞれ部位別の症状と頻度についてまとめてみました。
眼に起こる副作用
眼に起こる副作用として以下のものがあります。
- 調節障害(0.1〜5%未満)
- 散瞳(頻度不明)
- 閉塞隅角緑内障(頻度不明)
眼の調節障害とは
眼の調節障害とは、簡単にいうと眼のピントが合わなくなることです。
眼のピント調節がうまくいかないことで頭痛や肩こりなども併発することがあります。
散瞳とは
散瞳とは、眼の瞳孔が過度に開いてしまう状態です。
瞳孔は通常であれば暗闇では開き、明るいところでは収縮するのですが、散瞳になると眩しいほどの光を当てても過度に開いたままの状態になります。
閉塞隅角緑内障
眼圧が上がることで激しい頭痛や吐き気、同時に目のかすみや痛み、虹視(電灯などをみた時に虹が見える)なども起こります。
急性症状の発作が起こった場合は、目が充血し、瞳が拡大します。
失明することもありますので、これらの症状が出たらすぐに受診しましょう。
発作が起こる前兆として頭痛、目のかすみ、目が重い感じがするといった軽い症状が出ることもあります。
消化器に起こる副作用
- 口渇(5%以上)
- 悪心・嘔吐(0.1〜5%未満)
口が渇いたり、吐き気や嘔吐といった症状の出ることがあります。
泌尿器に起こる副作用
- 排尿障害(0.1〜5%未満)
排尿障害とは、頻尿や排尿がスムーズにできないという症状がでます。
精神神経系の副作用
- 頭痛
- 頭重感
- 眠気
- めまい
これらの頻度はすべて0.1〜5%未満であると言われています。
バリウム検査後、頭痛やめまいがするという方は質問サイトなどでもよく見られます。
バリウム検査後に頭痛やめまいがするという方は、バリウムの副作用ではなく、ブスコパン注射の影響が考えられます。
中には注射をした直後にふらつきを訴えられる方もおられます。
めまいがする場合、バリウム検査は、台の上で回転をしたり、体の向きを変えたりと、受ける方の協力が必要です。
ふらついたり、吐き気がある状態では、動きにくいですし、何より危険です。
台は90度まで立ったりしますので、そのときに転倒の危険がでてきます。
その場合は、検査開始を遅らせてもらうこともできますので我慢せずに申し出てくださいね。
循環器系の副作用
- 心悸亢進(0.1〜5%未満)
心悸亢進とは、普段よりも鼓動が強く早くなり、心臓の鼓動を感じてしまう動悸のような症状です。
過敏症(アレルギー)
- 発疹(0.1〜5%未満)
- 蕁麻疹(頻度不明)
- 紅斑(頻度不明)
- 皮膚のかゆみ(頻度不明)
- 顔面紅潮
過敏症は上記でも述べましたが、アレルギー体質の方に発症しやすく、湿疹やじんましんなど主に皮膚の症状が出ます。
上記のような副作用が出たら医師に相談しましょう。
また、毎回ブスコパンによる副作用が出てツライという方は、検査前の注射を拒否することもできますのでそういった場合も医師に相談してみてください。
ブスコパンの禁忌疾患は?
- 緑内障
- 排尿障害
- 重い心臓病
- 前立腺肥大
- 麻痺性イレウス
- 細菌性下痢症
- ブスコパンにアレルギーがある人
これらの人はブスコパンの注射を受けることができません。
それにより病気が悪くなってしまう可能性があるからです。
このような人には、グルカゴンの注射が行われます。
参考:ブスコパン注20mg 添付文書
グルカゴンの副作用
消化器の症状
消化器系の副作用として嘔吐や下痢、それに伴う腹痛などが現れます。
また腹鳴とは胃腸などの蠕動運動によって飲み込んだ空気やガス・分泌物などの液体が混ざり合う時の音で、ゴロゴロという音がします。
循環器の症状
心悸亢進はブスコパンのところでも説明しましたが、鼓動が多くなりドキドキと心臓の鼓動が感じられる動悸のような症状です。
また、血圧低下や高血圧になることもあるので、普段から低血圧気味の方や高血圧気味の方は特に注意が必要です。
精神神経系の症状
ブスコパン同様、頭痛やめまいや眠気を感じることがありますので検査中にふらつきなどが現れますと危険です。
その場合は医師に相談して検査時間を遅らせてもらいましょう。
過敏症(アレルギー)
ブスコパンと同様に、蕁麻疹などの症状が出るのはアレルギー反応です。
過敏症の症状が出る場合は、次回からは医師に相談しましょう。
血液検査や尿検査の値の異常
症状として出るものの他に血液検査や尿検査での異常が出る場合もあります。
- LDH上昇
- 血清ビリルビン上昇
- 血糖値上昇
- トリグリセライド上昇
- 白血球数増加
- 白血球分画の変動
- 血清カリウム低下
- 血清カリウム上昇
- 血清無機リン上昇
- 尿糖
- 尿潜血
これらの値で異常が出ることがあります。
その他
顔色が悪くなったり、熱感、発汗、発赤(はっせき)、倦怠感、ほてり、冷感など、風邪に似たような症状が出ることもあります。
質問サイトでもバリウム検査後に発熱したという相談をされている方を数人見かけました。
これはバリウムの副作用というよりも注射での副作用という可能性が高いですね。
次で見ていきましょう。
グルカゴン®の注射が禁止される疾患・状態
グルカゴンの注射をしてはいけない人は以下の症状の方です。
- 褐色細胞腫もしくはその疑い
- グルカゴンにアレルギーがある人
- 妊娠中
これらの場合は、注射を受けることができません。
また、
- 糖尿病
- 高齢者
の方は慎重投与となります。
ブスコパンもグルカゴンも受けられない、という人も中にはおられます。
その場合は、注射なしで検査をするのが一般的です。
次の章にまとめてみましたよ。
バリウム検査の前に注射をする理由は?
検査前に注射をするのは、
- 胃の動きを抑え、バリウムがすぐ流れ出てしまうのを防ぐ
- 胃の動きを抑え、きれいな写真を撮影する
という目的があります。
バリウム検査前に注射する薬は鎮痙薬(ちんけいやく)と呼ばれます。
これにより消化管の蠕動運動を止めることができます。
つまり、検査をしやすくし、より正確な診断が出来るようになります。
症例 50歳代男性 人間ドック
胃のバリウム検査で前庭部に胃の蠕動による収縮を認めています。
ちなみにアレアは不整で慢性胃炎を疑う所見です。
バリウム前の注射は筋肉注射なの?
一般的には筋肉注射が多いですが、施設によっては静脈注射の場合もあります。
また先ほど述べたように施設によっては注射を打たない場合もあります。
バリウム検査前に注射をしないのはダメ?
副作用のところでも少し触れましたが、注射を打たない場合があります。
- ブスコパンやグルカゴンの禁忌症状がある場合
- 過去にバリウム前の注射によって副作用やアレルギー症状が出た人
- 注射を断った場合
バリウム検査は、胃がんなどの病気が隠れてないか調べる検査なので、正確さを求めるため、基本的には注射をすすめます。
ですが、副作用もあるので、その副作用の影響が怖かったり、持病がある方などは注射をせずに検査を行う場合もあります。
また、注射がどうしても苦手という場合には断ることも可能で、絶対打たないといけないというわけではありません。
なので、副作用も理解したうえで、仕事の合間等に検査をする場合には特に、仕事に差し支えないように、注射はやめておくという選択肢もあります。
胃の蠕動運動がある分多少精度が落ちますが、注射をしない施設もあるほどですし、精度は変わらないという医師もおられます。
でも注射を打たないことで精度が気になるという場合は、バリウム検査の代わりに胃カメラを受けることでより正確な判断ができるので安心ですよ。
最後に
- バリウム前の注射の副作用には口渇・目の調節障害・めまい・頭痛・排尿障害などがある
- ブスコパンが使えない人にはグルカゴンという薬剤が使える場合がある
- グルカゴンにも副作用や禁忌疾患があるので注意が必要
- 緑内障・排尿障害・重い心臓病・腸閉塞・麻痺性イレウス・細菌性下痢症などの持病がある人は打てない
- 前立腺肥大・心臓病・潰瘍性大腸炎・甲状腺機能亢進症などの症状がある人は注意が必要
- 高齢の人や高温下にある人は注意が必要
- 注射をするのは胃腸の動きを抑え、正確な検査をするため
- 持病があって注射できなかったり、極度の緊張や仕事に差し支える場合などには注射をことわれる
持病がある方は仕方ないにしても、注射をすることで正確な検査をできるので、せっかく苦しい思いをして検査をするので、正確でなければ意味がありません。
また、胃がんなどは見落としてしまうと、症状が進んでしまったり、そうなると後悔してもしきれないほど。
その後に、苦しい発泡剤やまずいバリウムが待っていますが、ここは頑張って正確な診断が受けられるよう、注射することをおすすめします。
どうしても注射を受けられなくて、検査の精度が気になるという場合は胃カメラで受けるのもオススメです。