通常、健康の人の尿の色は、淡黄色です。
しかし、何らかの原因(疾患)がある場合、この尿の色が変化することもあります。
とくに、尿が赤みを帯びた場合、血尿が考えられます。
そして、目で見て赤みを帯びている血尿を肉眼的血尿と呼びます。
しかし、見た目ではわからない血尿も多々あり、これを顕微鏡的血尿と呼びます。
では、血尿はどのように診断され、どのような色・定義があるのでしょう?
今回は、血尿について
- 診断方法
- 定義
- 色
- 再検査
などについてまとめました。
血尿の診断は?
まず試験紙法を行い、潜血反応を見ます。
試験紙法での血尿は、試験紙上で赤血球を溶血させて、ヘモグロビンのペルオキシダーゼ反応を検出したものです。
試験紙法の尿検査で血尿が陽性となるのは、0.06mg/dl以上のヘモグロビンを検出した場合です。
- 尿潜血の基準値(正常値):陰性(−)のみ
- 尿潜血の異常値:それ以外の、弱陽性(±)、陽性(+)、強陽性(2+以上)
と判定されます。
中には、肉眼的に赤みがあるのにもかかわらず、試験紙法で陰性の場合もあります。
この試験紙法で陰性である場合、血液が混じって赤いわけではなく、着色尿であることがわかります。
- ポリフィリン
- フェナゾピリジン
- PSP など
が着色尿の原因となります。
試験紙法で陽性の場合
この試験紙法で陽性である場合、再検査が行われます。
再検査でも陽性の場合は、尿沈渣という顕微鏡で尿を見るという検査を行います。
尿沈渣で基準値以上の赤血球があれば、血尿と診断されます。
試験紙法で陽性なのに尿沈渣で陰性の場合は?
試験紙法で陽性なのに尿沈渣で陰性の場合があります。
これを偽陽性と言います。
つまり実際は血尿は陽性ではないのに、試験紙法では陽性と出てしまった場合です。
この場合は、
- ミオグロビン尿
- ヘモグロビン尿
- 薬の服用
- 大量のビタミンC(アスコルビン酸)摂取
などがその原因として考えられます1)。
そもそも血尿の定義は?
血尿は顕微鏡を用いた尿沈渣で、400倍の倍率で赤血球が5個以上認める場合と定義されています2)。
腎臓や尿路系のいずれかの部位からの出血を意味します。
ただし、ここでの注意点として、「血尿≠見た目も赤い」ということです。
つまり血尿と診断された場合でも、尿の見た目が赤くないケースは多々あるということです。
尿の見た目が赤くないのに、血液が混じっている血尿を顕微鏡的血尿と言います。
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見た目(色)での血尿の分類
- 目で見て色の変化があり血尿の定義に当てはまる時:肉眼的血尿
- 目で見て色の変化がないが血尿の定義に当てはまる時:顕微鏡的血尿
という風に分類されます。
見た目で色の変化がわかるとき、色としては、赤褐色・ピンク色・赤紅色・コーラ色などがあります。
アセロラジュースのような色と感じることもあります。
顕微鏡的血尿の特徴は?
顕微鏡的血尿は、尿を目で見ても血液が混じっているか分からないけども、検査をすると赤血球が混じっているという状態です。
女性に多いとされ、加齢とともに増加します。
- 糸球体疾患:タンパク尿を伴ったり持続性の血尿の傾向あり
- 尿路上皮癌:40歳以上の男性・喫煙・泌尿器疾患の既往・尿路感染・鎮痛薬多用などが危険因子となる
- 腎臓癌
- 前立腺癌
- 尿路結石
- 膀胱炎
- 前立腺肥大
- 腎動静脈奇形
肉眼的血尿がみられた場合はこれらの病気が原因である可能性がさらに高くなります3)。
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臨床上の血尿の分類
症状・頻度・場所によって分類されます。
症状の有無で分類
- 症状がある血尿:症候性血尿
- 症状がない血尿:無症候性血尿
とに分けられます。
血尿の頻度で分類
- 血尿が一次的な血尿:一過性血尿
- 持続的な血尿:持続的血尿
そして、臨床的には、持続性の有無と年齢を考慮して、どのような病気が隠れているかを考えていきます。
どこで出血しているかで分類
血尿は出血の部位によって
- 糸球体性血尿
- 非糸球体性血尿
に分けられます。
糸球体性血尿では70%以上の大小不同の変形赤血球を認めます。
一方で、非糸球体性の血尿は、均一な赤血球を認めます。
血尿の原因の検査は何をする?
血尿だということが診断できればその原因を探しに行きます。
各疾患のリスクファクターがあるかないかによって、
- 腎膀胱超音波検査(エコー)
- 尿細胞診
- 膀胱鏡
により原因疾患を検索します。
そしてこれらの検査で異常が見つかれば、あるいは同時に
- CT検査
で質的診断を行います。
しかし、異常がなければ、尿の検査とともに3年間の経過観察を行います4)。
3年間の経過観察で、CTなどで異常ない状態にもかかわらず血尿が続く場合は、腎臓の糸球体に異常がある、腎実質性疾患(慢性糸球体腎炎など)の可能性が高くなります。
これに加えて尿蛋白陽性などの異常が認められた場合は、確定診断をするために腎生検(皮膚から生検針を刺して腎臓の組織を採取して病理検査をする)を行うことがあります。
参考文献:
1)最新 尿検査 その知識と病態の考え方 第2版P33・68〜71
今日の臨床検査 2011ー2012 P34
最新 検査のすべてP21
よくわかる検査数値の基本としくみP54・56
新版 検査と数値を知る辞典P182
参考サイト:
2)3)4)血尿診断ガイドライン
最後に
血尿がある場合、どのように診断され、どのような分類があり、どのような病気が隠れている可能性があるかについてまとめました。
上述したように血尿には、目で見てわかる(赤い)血尿と検査でしか引っかからない血尿があります。
前者の方が、病気が隠れている可能性は高くなりますが、後者は症状がない場合、人間ドックなど定期検査を受けていないと見つからないことがあります。