乳癌は40代~50代の女性に多いとされてきた病気ですが、最近では若い乳癌患者も増え、日本人女性の20人に1人が乳癌になるというデータもあります。
しかし、乳癌といえば付きまとう不安、抗がん剤による副作用に苦しむ姿が目に浮かぶ方も多いと思います。
実際、治療法は色々進んでも、まだまだ副作用が全部なくなったというわけではありません。
今回は、乳癌の抗がん剤による副作用について解説し、仕事や日常生活のおける注意点を紹介したいと思います。
乳癌の抗がん剤による副作用とは?
副作用はどんなものがあるのでしょうか?
自覚症状のある副作用と、検査を受けてからでないと分からない副作用があります。
自覚症状のある副作用
- 食欲不振
- 吐き気
- 嘔吐
- 胃痛
- 下痢
- 口内炎
- 発熱
- 脱毛
- しびれ
- むくみ
- 爪の異常
- 味覚障害
- 倦怠感
- 不妊・閉経
などがあります。1)
分裂が活発な細胞が障害されるため、消化器症状や毛根細胞に影響が出るのです。
脱毛症状は、抗がん剤治療が終われば、また頭皮から髪の毛は生えてきます。
検査を受けてからでないと分からない副作用
- 白血球減少(易感染性)
- 血小板減少(出血傾向)
- 赤血球減少(貧血)
- 肝機能・腎機能の異常
骨髄抑制により骨髄にダメージを受けやすく、白血球や血小板が減少してめまいが起こりやすく、ちょっとした傷でも出血しやすくなります。
薬の種類によっても起こりやすい副作用は異なりますし、患者それぞれでも合う合わないがあり、副作用の強さも異なります。
乳癌の治療で使われる抗がん剤の種類とは?
- アンスラサイクリン系(ドキソルビシン・エピルビシン)
- タキサン系(パクリタキセル・ドセタキセル・アルブミン懸濁型パクリタキセル)
- アルキル化薬(シクロホスホミド)
- 葉酸代謝拮抗薬(メトトレキサート)
- ピリミジン代謝拮抗薬(5-FU・カペシタビン・テガフール・ゲムシタビン)
- 白金製剤(カルボプラチン)
- その他(エリブリン・ビノレルビン・イリノテカン)
など、多彩な種類があります。
- アンスラサイクリン系→心毒性(収縮力低下)・脱毛
- タキサン系→末梢神経障害
- シクロホスファミド→出血性膀胱炎
- カペシタビン→手足症候群
つまり、抗がん剤を使う上では、これらの副作用を理解した上で使用を開始しなければなりません。
[adsense]
そもそも抗がん剤の使用目的は?
乳がんに対して、抗がん剤を使用する目的としては、
- 腫瘍の縮小や術後の整容性を保つため
- 微小転移巣を消失・再発予防
- 腫瘍の進行を抑制・延命や緩和のため
などが挙げられます。
乳癌の抗がん剤(化学療法)は、手術で取り除けなかった癌細胞を死滅させるため、再発予防として行われるものとされています。
この抗がん剤の使用により、手術のみの治療に比べ、再発率が減少すると言われています。
しかし、抗がん剤を使用しなければ必ず再発するというわけでもなく、抗がん剤を行えば必ず再発を防げるというのでもありません。
また、術前補助療法(NAC(読み方はナック):neoadjuvant chemotherapyの略
上のMRI画像のように抗がん剤を使う前と後で、腫瘤が見えないほどに小さくなっていることもあります。
これ以外でも、既に癌が転移してしまっている場合や再発した場合などに、抗がん剤が中心となり、何種類かを組み合わせ治療することになります。
関連記事)
仕事や日常生活における注意点や過ごし方
仕事をしている方にとっては、副作用があるからといってなかなか休めない、休みが多くなると解雇されるのではという不安がつきまとう方も多いと思います。
乳癌を患った方でないとわからない副作用、会社側にどこまで話すのかが問題でもあります。
しかし、黙ったままで理解は得られません。
治療開始前(治療法が決まって)から説明しておく方が理解を得られ、休職期間や仕事内容を配慮してもらえる可能性があります。
- 食べたい物・食べられる物を食べる
- スポーツドリンクをこまめに取る(水分補給に気をつける)
- 髪を予め短くしておく(かつらや帽子を用意しておく)
- 手洗いうがいをこまめにする
- 外出時はマスクをする
- 転ばないように注意する(怪我をしないように気をつける)
- ストレスをためず、リラックスして過ごす
原因は様々ですが、発熱し肺炎などを起こしてしまう場合もあるため、38度以上の熱が出た時には主治医に相談しましょう。
また、最近では優れた吐き気止めも開発されていますので、苦しい時は医師に相談し処方してもらうようにしてください。
そして、脱毛は女性にとって大変ショックな見た目ともなります。
毛糸の帽子は髪の毛のない頭にはチクチクして不向きとされるため、やわらかい素材の帽子やかつらなどを予め準備しておくといいでしょう。1)
1)参考サイト:日本乳癌学会 患者さんのための乳癌診療ガイドライン
参考文献:病気がみえるvol.9 婦人科・乳腺外科 第3版P292・293
最後に
乳癌の抗がん剤による副作用について、ポイントをまとめます。
- 乳癌の抗がん剤による副作用は、自覚症状のある副作用と、検査を受けなければ分からない副作用がある
- 抗がん剤は、手術で取り除けなかった癌細胞を死滅させる
- 手術だけの場合より、抗がん剤は再発率が減少する
- 職場には、事前に治療方針が決まった段階で説明しておくことをオススメする
- 食べれるものを食べ、水分補給に気をつける
- 手洗いうがいを徹底し、外出時はマスク着用する
抗がん剤は、延命出来ることはあっても、命を短く縮めてしまうようなことはありません。
また、女性にとってとくに髪の毛が抜け落ちることはショックなことですが、治療が終われば髪質は多少変化するかもしれませんが、必ずはえてきます。
必ず終わりがある抗がん剤治療、希望を持って乗り越えて下さい。