
薬を飲んでいたのに、その薬が原因で下痢や血便などの症状を起こす疾患となることがあります。
その薬の中でも、抗菌薬によるものが最も多く、偽膜性大腸炎や出血性大腸炎、MRSA腸炎などとなることがあります。
今回は、その中でも高齢者や重篤な基礎疾患を持つ人に多く出現する偽膜性大腸炎(読み方は「ぎまくせいだいちょうえん」英語表記で「Pseudomembranous colitis」)について・・・
- 原因
- 症状
- 検査
- 治療
を詳しく説明していきたいと思います。
先に結論
- 偽膜性大腸炎は、抗菌薬(抗生物質)の使用後に、Clostridioides difficile(クロストリジオイデス・ディフィシル)という菌が増えて起こる大腸炎です。
- 主な症状は水のような下痢、腹痛、発熱で、血便をともなうこともあります。抗菌薬の開始後、数日〜数週間たってから出ることがあります。
- 診断は、抗菌薬の服用歴、便の検査(CDトキシンなど)、内視鏡やCTを組み合わせて行います。
- 治療の基本は原因の抗菌薬の中止です。必要なときは、フィダキソマイシンまたはバンコマイシンの内服が使われます。メトロニダゾールは、重症でなく他の薬が使えないときの代わりの薬とされています(IDSA/SHEA 2021)。
- 抗菌薬をのんだあとに下痢が続く、血便が出る、強い腹痛や発熱があるときは、受診しましょう。
偽膜性大腸炎とは?
薬剤の投与後に症状が出る、薬剤性大腸炎の1つです。
薬剤性大腸炎の中では、抗菌薬が原因となるこの偽膜性大腸炎が最も多く起こり、投与後数日〜数週間後に突然症状があらわれて気づきます。

薬剤性腸炎とは?
腸管にびらんや潰瘍などの炎症性変化をきたす疾患です。
このような疾患を起こす薬剤には
- 抗菌薬(セフェム系、リンコマイシン系など)
- NSAIDs
- 抗がん薬
などがあり、その中でも抗菌薬が最も多くなっています。
偽膜性大腸炎の原因菌は?
抗菌薬による菌交代現象で、嫌気性菌(けんきせいきん)であるClostridioides difficile(読み方は「クロストリジウム ディフィシル」略語で「CD」)が主な原因菌となります。

抗菌薬で正常な腸内細菌のバランスが崩れると、このClostridioides difficileが増殖します。そして、この菌が産生する毒素(CDトキシン)が大腸の粘膜を侵します。
出血性大腸炎とは?
同じ抗菌薬によって起こりますが、合成ペニシリンなどによるKlebsiella oxytoca(読み方は「クレブシエラ オキシトカ」)が原因菌となります。
MRSA腸炎とは?
同じ抗菌薬が原因ですが、ペニシリンやセフェム系のMRSAが原因菌となります。
偽膜性大腸炎の症状は?
- 下痢
- 腹痛
- 発熱
- 血便
突然の腹痛によって発症し、水様下痢や血便をともないます。
Clostridioides difficileの毒素により、これらの症状が生じるといわれています。
偽膜性大腸炎は院内感染することがある?

このClostridioides difficileの芽胞は胃酸にも強く、口から簡単に腸まで届きます。
そのため院内感染することもあり、病院のベッドや床などの環境からも広がることがあります。
芽胞は環境の中で長く生き残ることがあると考えられていて、特に高齢者や重篤な疾患を持つ患者は注意が必要です。
感染の対策は?看護で大事な点は?
看護する上で、偽膜性大腸炎患者の排泄物の扱いや手洗い、環境の消毒は、施設ごとの感染対策の手順に従って行う必要があります。
また、便失禁をともなう場合には、シャワーを使うなどの配慮が感染拡大予防につながります。
(参考:重篤副作用疾患別対応マニュアル 偽膜性大腸炎)

偽膜性大腸炎の検査・診断は?
内視鏡検査や超音波検査、CT検査、便培養検査などをおこないますが、抗菌薬の内服歴の確認も重要です。
内視鏡検査
- 黄白色の偽膜や浮腫
- びらん
が確認できます。
症例:70歳女性
38度の発熱と、1日10回の下痢をともなう。
(出典:医師国家試験過去問108D48)
多発する黄白色の偽膜が直腸やS状結腸に見られます。
超音波検査(エコー)
大腸の壁肥厚や腹水などが確認できます。
CT検査
腸管の浮腫(腸管壁肥厚が強い傾向にある)や周囲への炎症の影響、腹水などが確認できます。
通常の腸炎などよりも、高度な腸管壁肥厚を呈することが多く、また層状濃染はアコーディオンサインと呼ばれます。
症例 70歳代 男性

全結腸に広範な壁肥厚および周囲脂肪織濃度上昇を認めています。
上行結腸を中心にひだが目立ち、いわゆるアコーディオンサインを認めています。
CDトキシン陽性であり、偽膜性腸炎と診断されました。
便の検査(CDトキシン・培養)
便のCDトキシン(毒素)などを調べます。培養をおこなう場合は、嫌気培養をおこなう必要があります。
(検査キットで簡単におこなうこともできます)
細菌性腸炎・多剤耐性黄色ブドウ球菌腸炎・虚血性大腸炎・潰瘍性大腸炎・腸管出血性大腸炎O-157感染症との鑑別も重要です。

見分けが必要な虚血性大腸炎については、虚血性大腸炎とは?原因・症状(腹痛・血便)・治療・食事をCT画像で解説でくわしく解説しています。
下痢や腹痛が続く別の病気として、クローン病については、クローン病とは?原因、症状、診断基準、治療法と完治するかをわかりやすく解説でくわしく解説しています。
偽膜性大腸炎の治療薬は?
- 原因となる薬剤(抗菌薬)の中止または変更
- 必要に応じて、C. difficileに対する薬の投与
- 輸液などの全身管理
をおこないます。抗菌薬は、のんでいる病気の治療に必要な場合もあるため、自己判断でやめず、医師に相談してください。
原因となる薬剤の服用を中止することで改善することもありますが、診断が遅れると重症化することもあります。
米国のガイドライン(IDSA/SHEA 2021)では、C. difficile感染症の治療薬の選び方を次のように示しています。薬の量は、病状に合わせて医師が決めます。
| 場面 | ガイドラインの考え方 |
|---|---|
| 初めての発症 | フィダキソマイシンを提案。バンコマイシン内服も許容できる代わりの薬 |
| 重症でない場合に他の2剤が使えないとき | メトロニダゾールが代わりの薬(白血球数15,000/µL以下かつ血清クレアチニン1.5mg/dL未満が「重症でない」の目安) |
| 再発したとき | フィダキソマイシンを提案。初回再発ではバンコマイシンも代わりの薬 |
メトロニダゾールは、効果が下がってきていることから、現在はバンコマイシンとフィダキソマイシンが標準的な抗菌薬とされています(IDSA/SHEA 2021)。国内でも診療ガイドラインが公表されています(Kunishima 2022)。
薬を飲むときの副作用や飲み合わせの注意については、薬の副作用、飲み合わせに注意!でくわしく解説しています。
よくある質問
Q. 抗菌薬をやめたあとでも、下痢が出ることがありますか?
あります。症状は、抗菌薬の投与後、数日〜数週間たってから出ることがあります。下痢が続くときは、いつ・どの抗菌薬をのんだかを医師に伝えてください。
Q. 再発することはありますか?
再発することがあります。再発したときの薬の選び方も、ガイドラインに示されています(IDSA/SHEA 2021)。治療は専門の医師と相談してください。
Q. 下痢止めをのんでもよいですか?
自己判断での使用は避けてください。抗菌薬をのんだあとの下痢では、先に医療機関で原因を調べる必要があります。
気になる症状や検査結果があれば、医療機関に相談してください。
参考文献:
病気がみえる vol.1:消化器 P180・181
消化器疾患ビジュアルブック P110〜112
新 病態生理できった内科学 8 消化器疾患 P118〜120
内科診断学 第2版 P860・861
Johnson S, et al. IDSA/SHEA 2021 Focused Update Guidelines on Management of Clostridioides difficile Infection in Adults. Clin Infect Dis 2021 PubMed
Kunishima H, et al. Japanese Clinical Practice Guidelines for Management of Clostridioides (Clostridium) difficile infection. J Infect Chemother 2022 PubMed
最後に
- 薬剤の投与後に症状が出る、薬剤性大腸炎の1つ
- 腸管にびらんや潰瘍などの炎症性変化をきたす疾患
- Clostridioides difficileが原因菌となる
- 突然の腹痛によって発症し、水様下痢や血便をともなう
- 院内感染することも多い
- 内視鏡検査や超音波検査、CT検査、便培養検査、抗菌薬の服用歴から確認
- 原因となる薬の服用を中止する必要がある
- 薬での治療が必要なときは、フィダキソマイシンまたはバンコマイシンが中心で、メトロニダゾールは代わりの薬とされる
薬の副作用は個人差があり、このようなことになるとは限りません。
ですが、薬服用後の変化に早期に気づくことで、早期対処も可能で重症化を予防できます。






