尿路の奇形の一つに尿管瘤(読み方は「にょうかんりゅう」、英語ではureterocele)という病態があります。
文字どおり、尿管が瘤状に拡張したもので、その様子から、コブラの頭状(cobra head apperance)と呼ばれることがあります。
今回はそんな尿管瘤について、
- どんなものか
- 原因
- 症状
- 診断
- 治療
を、イラストと実際のCT画像を交えながらわかりやすく解説しました。
尿管瘤(ureterocele)とは?
尿管瘤とは、尿管の膀胱粘膜下の部分が嚢状に拡張したものです。
尿管口及びその周辺部に、狭窄や筋層の異常があったり、尿管の開口不全があることがあったりと、他の尿路奇形を合併しやすいのが特徴です。
また、尿路結石を合併することもあります。
尿管瘤の原因は?
尿管瘤の原因としては、はっきりとしていません。
1つ目の説は、発生の過程で、Wolff管の尿生殖洞への開口部を覆うように存在するChwalla膜という膜があり、この膜は本来胎生7-9週で脱落します。
しかし、この膜が何らかの理由で脱落せず、尿管口の閉塞が持続したままとなると尿管瘤を形成すると言われています。
他には、膀胱が形成されていく過程で、尿管の下端もその影響を受けて同時に嚢状に拡張するという説もあります。
尿管瘤の症状は?
- 尿路感染症(膀胱炎、腎盂腎炎など)
- 腎結石・尿管結石
- 腹部違和感
- 排尿障害
といった症状が起こることがあり、これらの症状をきっかけに見つかることがあります。
とくに尿路感染症は、膀胱尿管逆流を伴う場合に多いとされています。
尿管瘤の画像診断は?
尿管瘤の存在を画像で確認するには、排泄性尿路造影、エコー、膀胱鏡検査、CT、MRI検査などが施行されます。
尿管瘤には種類があり、
- 単純性尿管瘤(simple ureterocele)
- 異所性尿管瘤(ectopic ureterocele)
に分けられます。
単純性尿管瘤(simple ureterocele)
正常位置に開口している尿管に生じるもので、男児に多いとされますが、一般的に無症状で経過するため、小児で発見されることは稀です。
1/3の症例で両側に見られるとされます。
排泄性尿路造影で、尿管下端がまるで蛇の頭や風船のように膨らみ、その様子をコブラの頭型(cobra head deformity)と呼ばれることがあります。
症例 30 歳代の男性。排尿終末時痛。
2011年放射線科診断専門医試験問題48より引用。
単純CTで、膀胱内に結石を疑う高吸収域2箇所(両側)あり。
異所性尿管瘤(ectopic ureterocele)
尿管の異所性開口部に尿管瘤を合併したもので、こちらが8割を占め、女児に多いとされます。
正常は1本である尿管芽が発生の過程で2本発生し、腎盂と尿管が一つの腎臓から1本ずつ出て分離しているものを完全重複腎盂尿管といい、この完全重複腎盂尿管に異所性尿管瘤は合併しやすいとされます。
完全重複腎盂尿管は、「上腎から連続する尿管は、下腎からの尿管開口位置よりも尾側に開口する」というWeigert‐Meyerの法則(読み方は、「ワイゲルト-マイヤー」)に従い、上腎から連続する尿管が膀胱に開口した場合に多いとされます。
症例 60歳代男性 単純CT
単純CTで、完全重複腎盂尿管を認めていた症例です。
- 上腎から出た尿管
- 下腎から出た尿管
をそれぞれ尾側に追っていくと、上腎から出た尿管は下腎から出た尿管よりもやや尾側の膀胱に開口(Weigert‐Meyerの法則に従ってます)して、その部位で尿管瘤を形成していることがわかります。
完全重複腎盂尿管に異所性尿管瘤を合併した症例でした。
この症例を動画解説しました。
尿管瘤の治療は?
そもそも治療を行う理由としては、
- 尿路感染を減らすこと
- 腎機能の低下を予防すること
が挙げられます。
内視鏡を用いて経尿道的に、尿管瘤を切開、切除する治療が主流です。
以前は、尿管が本来あるべきところではない異所性開口しており、腎機能障害が不良な場合は腎摘出の手術が行われることもありました。
最後に
- 尿管瘤は、尿管の膀胱粘膜下の部分が嚢状に拡張したもの
- 尿管瘤の原因は、はっきりとしていない
- 尿路感染症(膀胱炎、腎盂腎炎など)・腎結石・尿管結石・腹部違和感・排尿障害などの症状がある
- 排泄性尿路造影、エコー、膀胱鏡検査、CT、MRI検査などで診断
- 内視鏡を用いて経尿道的に、尿管瘤を切開、切除する治療が主流
特に、頻度の高い異所性尿管瘤は完全重複腎盂尿管に合併することが多いとされます。
尿管瘤を見た場合、完全重複腎盂尿管の有無や他の尿路奇形などを合併していないかなどのチェックが重要です。