脳腫瘍の中でも、発生頻度が1.7%と珍しい疾患に血管芽腫(読み方は「けっかんがしゅ」英語表記で「hemangioblastoma(ヘマンジオブラストーマ)」)というものがあります。今回はこの血管芽腫について
- 原因
- 症状
- 診断
- 治療法
について実際の画像を見ながら解説したいと思います。
血管芽腫とは?
20~70歳代の成人に多く発生する良性腫瘍で、毛細血管に富み、腫瘍内に嚢胞を有します。半数以上は孤発例ですが、20~30%はフォン・ヒッペル・リンダウ病(VHL)の合併症として見られます。
好発部位
上のように小脳半球に好発し、たいていは小脳に1つということが多いですが、延髄や脊髄に発生することもあります。
成人に発生する小脳半球の腫瘍は、この血管芽腫のほか、転移性腫瘍が多いです。
血管芽腫の原因は?
血管内皮細胞由来と考えられてきました。しかし、組織由来や起源は不明で、病理学的に血管が目立つ腫瘍であるので、血管外皮腫などと共に血管系腫瘍とまとめられることもあります。
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血管芽腫の症状は?
- 頭蓋内圧亢進症状(頭痛・嘔吐・うっ血乳頭)
- 小脳失調症状(吐き気・目眩)
- 局部症状(眼振)
などが症状としてあります。頭蓋内圧亢進症状は水頭症を起こした結果の症状でもあります。
症状の進行は遅い特徴があり、頭蓋内圧亢進症状によつ頭痛で発症することが多くあります。また、腫瘍が産生するエリスロポエチンによる赤血球増加症(多血症)を伴うこともあります。
血管芽腫の診断は?
- CT検査
- MRI検査
- 脳血管造影検査
などを行い診断します。
CT検査
嚢胞は低吸収で、壁在結節は等吸収です。
MRI検査
嚢胞はT1強調像で低信号、T2強調像で高信号を示します。また、造影剤で均一に増強されます。軟膜に接する壁在結節を有する嚢胞性病変が最も特徴的な所見ともなります。
症例:30歳代女性 頭痛で救急外来を受診。
左側:頭部CTにおいて、30歳代にしては脳室拡大が目立ちます。水頭症を疑う所見です。
右側:左小脳半球に嚢胞性腫瘤を認めており、それが第4脳室を圧排しています。つまり、小脳半球の嚢胞性腫瘤による閉塞性水頭症を生じている状態です。
右側:MRI検査では、T2強調像で著明な高信号を認めており、やはり嚢胞を疑う所見です。
造影MRIの横断像(左)及び矢状断像(右)です。小脳半球に嚢胞+壁在結節のパターンを示す腫瘤あり。壁在結節には造影効果を認めています。
血管芽腫を疑う所見です。手術の結果、血管芽腫と診断されました。
脳血管造影検査
著名な腫瘍濃染像と径が太くなった腫瘍栄養運動が特徴です。画像検査では、小脳星細胞腫や嚢胞性転移性腫瘍と類似した所見なため、血管造影を行い鑑別をすることが大切です。
血管芽腫の治療法は?
外科的治療による腫瘍全摘出が目標となります。しかし、脳幹部や多発例では全摘出が困難となることも多く、その場合は放射線療法により定位照射を行います。(取りきれなかった残存腫瘍に対しても)
予後は、全摘出できれば良性ですし、治癒となります。しかし、多発例や再発例の場合は注意が必要です。
最後に
- 20~70歳代の成人に多く発生する良性腫瘍
- 20~30%はフォン・ヒッペル・リンダウ病(VHL)の合併症として見られる
- 小脳半球に好発
- 組織由来や起源は不明
- 頭蓋内圧亢進症状・小脳失調症状・局所症状が見られる
- 嚢胞とその内側に付着する壁在結節が特徴
- 腫瘍全摘出を目標とする
手術をせずに放射線治療を選択する場合もありますが、基本的に摘出可能なものならば、全摘出してしまえば治癒するため、手術で摘出することをおすすめします。
放射線治療の場合は、腫瘍が縮小したり拡大化を防げることも多くありますが、腫瘍を完全に消す治療法とはなりません。確率的には70~85%程で進行を抑えられるといった治療法になります。