神経膠腫(グリオーマ)の中で乏突起膠細胞系に属する、グレードⅡの悪性度に分類される乏突起膠腫(読み方は「ぼうとっきこうしゅ」英語ではoligodendroglioma)とは一体どういうものなのでしょう?今回は乏突起膠腫について分かりやすく
- 症状
- 診断
- 治療法
をご説明したいと思います。
乏突起膠腫とは?
オリゴデンドログリア(乏突起膠細胞)に似た細胞で構成された、発育緩徐な浸潤性腫瘍です。原発性脳腫瘍の約1.7%、神経膠腫のうち約7.1%を占めます。
好発年齢及び部位
- 20~50歳代
- 大脳半球皮質下(特に前頭葉)
に好発します。しかし、小児でも時々見られます。
乏突起膠腫の症状は?
- 痙攣発作
- 頭痛
- 人格変化
が症状の特徴でもあります。また、脳局所症状として
- 麻痺
- 失語
などが現れます。初期症状としては、痙攣(てんかん発作)が多くあります。その他、悪心や嘔吐、片麻痺、運動失調や痴呆症状が現れることもあります。
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乏突起膠腫の診断は?
CTやMRI検査などで画像診断を行い、腫瘍を確認します。
CT
約90%の割合で、石灰化を認めることが多くあります。また、皮質に及ぶ低吸収と高吸収の混在した像を確認できます。
MRI
T1強調像にて低信号で、T2強調像で高信号の境界明瞭な腫瘍を認めます。90%以上がテント上に発生し、前頭葉に特に多く出現します。腫瘍が悪性化した場合は、壊死を伴いリング状に造影されることもありますし、出血も確認出来ることがあります。
しかし、画像所見は他の神経膠腫と鑑別は困難で、病理組織初見で確認することもあり、蜂の巣構造(目玉焼き像)が見られます。
退形成性乏突起膠腫とは?
出血や壊死、浮腫を伴うものは、退形成性乏突起膠腫(anaplastic oligodendroglioma)と呼ばれ、WHO gradeⅢに分類されます。
好発年齢は60-70歳代で男性に多く、部位は乏突起膠腫同様に前頭葉に多いとされます。
1p/19q欠損を60-70%に認めると報告されています。
退形成性乏突起膠腫の画像所見は?
CTで境界不明瞭な円形腫瘤を示し、単純CTで低吸収を示します。石灰化は14%程度と報告されています。
またMRIでは腫瘍はT1強調像で低信号、T2強調像で灰白質より高信号を示し、造影効果は約半数に認めるとされます。嚢胞や出血を認めることがあります。
症例 30歳代女性 痙攣発作
左側:頭部単純CTにて左の前頭葉に嚢胞性腫瘤あり。一部壁の石灰化を認めています。右側への正中構造の偏位を認めています。
右側:造影MRIにて嚢胞壁の造影効果に加えて、嚢胞壁に接して造影される充実部位を認めています。
手術の結果、退形成性乏突起膠腫(anaplastic oligodendroglioma)と診断されました。
乏突起膠腫の治療法は?
- 外科的療法
- 放射線療法
- 化学療法
- 保存療法
があります。
外科的療法
腫瘍を可能な限り多量切除を行います。腫瘍全摘出が出来れば、予後の5年生存率は80%に上がります。
放射線療法
術後の残存腫瘍に対し、分割照射を行います。この放射線療法を行うことで、腫瘍摘出のみよりも10年生存率が2倍以上上がります。
化学療法
悪性例では、放射線療法にアルキル化薬を中心とした化学療法を併用します。
保存療法
高分化型では、経過観察とすることもあります。
最後に
- オリゴデンドログリア(乏突起膠細胞)に似た細胞で構成された、発育緩徐な浸潤性腫瘍
- 20~50歳代・大脳半球皮質下に好発
- 痙攣発作・頭痛・人格変化が特徴的症状
- CTやMRIで検査をし、CTでは石灰化が多く見られる
- 病理組織所見で蜂の巣構造(目玉焼き像)が見られる
- 外科的手術で可能な限り全摘出を目指す
手術で腫瘍摘出が出来ても、その後2年間てんかん発作が起こらないと確認できるまで車の運転は禁止されます。手術を行えても、しばらく経過した後にてんかん発作等が急に現れることもあるためですが、定期的な検診が必要で、一度発作が起きた場合は今後発作が起こらないように薬の服用が重要になります。