がんドックで一度に全身を見ることができるPET検査ですが、食事制限があります。食事を摂ってしまうと検査に支障があるからです。
では、
- なぜFDG-PET検査前の何時間前から食事を摂取してはいけないのでしょうか?
- なぜFDG-PET検査には食事制限があるのでしょうか?
今回はPET検査の食事制限についてまとめました。
PET検査の食事制限は?
PET検査の5~6時間前以降は食事を摂取することができません。
食事だけでなく、飲み物にも制限があります。つまり、ジュースやコーヒーなど糖の含まれる飲み物は飲めません。お水、白湯は摂取しても大丈夫です。
食事の他、運動も控える必要があります。
当日はもちろんですが、前日のお酒も控える必要があります。
なぜPET検査に食事制限があるの?
胃カメラや大腸カメラ、バリウム検査にも食事制限がありますが、これらは、消化管の中に食物があったら、邪魔になり正しく観察できないからです。
PET検査の場合はなぜ食事制限があるのでしょうか?同じ理由なのでしょうか?
実はそうではないのです。
まず正しく検査できたPET検査を見てみましょう。
脳や、肝臓、腎臓、膀胱に強い集積を認めていますが、これらは生理的集積と言われるもので、正常です。このほか、消化管や、頸部の唾液腺、扁桃腺、心臓などにも薄い集積を認めるのですが、これらも生理的集積と言われるもので正常です。(関連記事→PET検査の生理的集積の3つのポイント!画像あり!)
さて、一方で次の写真をみてみましょう。
この方は、PET検査前に誤って食事を摂ってしまいました。
2013年放射線科診断専門医試験問題77より引用。
すると、どこか臓器にがんがあってもこれらの筋肉の集積に隠れてしまったり、本来がんに強く集積するはずのFDGが筋肉に取られてしまい、きちんと集積しないということが起こってしまいます。
[adsense]
なぜ食事を摂取すると筋肉に集積するのか?
食事を摂取すると、血中の糖分(グルコース)の濃度が上がります。すると、それに反応して、膵臓からインスリンが放出され、血中のインスリン濃度があがります。
このインスリンが全身の筋肉に、糖分と一緒に、PET検査の検査薬であるFDGを筋肉内に吸収させてしまうのです。結果、筋肉への集積が強くなり、上のような画像が得られることになります。
筋肉へ集積が増えると、本来集積するべき部位へのFDGの集積が減ってしまいます。そうすると、仮に癌があってもそこにきちんと集積しない可能性が出てきます。癌だけでなく、リンパ節転移など転移巣にも集積が起こらない可能性が出てきます。
つまり、がん健診目的でPET検査を受けて、仮にがんがあっても見つからない可能性が高くなるわけです。
FDG-PET検査では糖尿病の人はどうなるの?
まず覚えておいていただきたいことは、FDGの集積に影響を与えるのは、血糖値ではなく、インスリン分泌の状態であるということです。
つまり、糖尿病の方の場合、血糖値が高いから、集積が落ちたり、増えたりではないということです。
糖尿病の方の場合、血糖値がコントロールされていても、インスリンの分泌は低い場合が多いです。インスリン分泌能が低下しているということです。そうすると、脳を含め集積が落ちてしまいます。集積が落ちるということは、がんがあっても見つけにくくなるということです。
ですので、PET検査前には、血糖値をある程度正常化させた上で、検査を受ける必要があります。特に持続型糖尿病薬を使っている方は上のような食後のような画像になることがあります。ですので糖尿病の人は、薬の内容もチェックする必要があり、持続型の薬を使っている場合は薬の使用をストップする必要があります。
最後に
FDG-PET検査は、グルコースの動きが重要であり、またそれにはインスリンも関与しています。むしろ、FDGの集積に影響を与えるのは、血糖値ではなく、インスリン分泌の状態であるということです。
血糖値はFDG-PET検査前に測定することが多いですが、その時の血糖値が100であっても普段の血糖値が60ならば、インスリン分泌は増加しています。そうなると、筋肉への集積が増えてみたいところが見えないという事態になります。つまり、大事なのはインスリン分泌の状態であるということです。
インスリン分泌に異常がある状態、つまり、食事、糖尿病、インスリン分泌低下などがあれば、正しく正しい場所に集積せずに、正しく検査ができないということになります。
高額な検査ですし、せっかく受けたのに正しく検査が行われなかったということがないように、食事制限はくれぐれも厳守するようにしましょう。