結核というと、昔は死亡率が高かった血を吐く怖い病気だったものの、最近ではBCGという予防接種もあるし、あまり聞かない病気というイメージはありませんか?
特に、近年免疫抑制薬の投与やHIV感染者が増加しており結核患者自体も増大傾向です。
中でも結核性髄膜炎という結核から死亡率の高い髄膜炎につながることがあります。
気道から結核菌が体内に入り、血液に乗って(血行性散布により)、中枢神経感染を起こして髄膜炎になると言われています。
今回は、その怖い結核性髄膜炎について
- 症状
- 原因
- 診断
- 治療法
をご説明したいと思います。
結核性髄膜炎とは?
結核菌が他部位の病巣から二次感染することによって起こることが多いのが結核性髄膜炎ですが、中には原発巣が不明のものもあります。
治療を行わないと、亜急性(発症から数週間という早期)に進行し、脳底髄膜炎となり、脳底部の炎症や水頭症、脳神経麻痺などをきたし、命を失うことの多い怖い病気です。
好発年齢は、1~6歳の幼児、または成人に多いものです。
では、どんな症状が出るのでしょう?
結核性髄膜炎の症状は?
- 発熱
- 頭痛
- 嘔吐
- 意識障害
特に強い頭痛が特徴で、発熱と共に現れるので風邪症状とも間違われやすいものですが、強烈な頭痛を伴う場合は、髄膜炎を疑った方が良いでしょう。
また、髄膜炎の特徴である首が硬くなるといった症状が見られる場合には、風邪とは違う鑑別ポイントとなります。症状が進行すると、意識障害が現れ痙攣を起こすこともあります。
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結核性髄膜炎の原因は?
他部位(主に経気道的に感染)の病巣にあった結核菌が、血液に乗ります。
そして血液に乗った結核菌が、頭蓋内に到達し、脳底部を中心に波及、髄膜に炎症を起こすことで結核性髄膜炎になります。
結核性髄膜炎のリスク因子は?
- 低栄養
- 多量喫煙
- 血液透析
- 糖尿病
- ステロイド長期使用
- 悪性腫瘍 など
に該当する人がリスクがあると言われています。
結核性髄膜炎の診断は?
特徴的な髄膜炎の三大症状である、発熱・頭痛・嘔吐で髄膜炎を疑い、患者を仰向けに寝かせて首の硬さを見るケルニッヒ徴候(Kernig’s Sign)を確認します。
- 髄膜刺激徴候検査
- 脳脊髄液検査
- 菌培養検査
- 胸部X線検査
- CT・MRI検査
髄膜刺激徴候検査
髄膜炎の特徴を、様々な誘発テストによって確認します。
詳しくは、このような検査方法があります。→ 髄膜刺激徴候検査
脳脊髄液検査
圧上昇、単核球の細胞数、蛋白ともに増加、糖低下、日光微塵が見られます。また、中にはキサントクロミーが見られることもあります。
菌培養検査
髄液培養もしくは、血液培養することで菌を調べる方法です。これによって結核菌が特定されます。
胸部X線検査
胸部X線とツベルクリン反応で全身性の結核を診断できます。
CT・MRI検査
脳底槽と呼ばれる部位で炎症を起こす頻度が高く、MRIでは脳底槽がT1強調像で等信号、T2強調像、FLAIR像で高信号を確認できます。
また、FLAIR像にて脳溝が高信号となる場合もあります。
造影を行うと、脳底槽やSylvms裂の増強効果が確認できます。
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結核性髄膜炎の治療方法は?
治療は早期に行う必要があり、症状が進行するほど治療が困難となります。
薬物治療
早期治療が重要なため、菌の検出を待たずに治療を開始し、菌の検出後、効果的な治療薬に変更し治療を続けます。
抗結核薬として、
- INH:イソニアジド
- RFP:リファンピシン
- PAZ:ピラジナミド
- EB:エタンブトール
などが併用されます。
また脳浮腫が強くなれば、グリセロール点滴が行われます。重症度を問わず、副賢皮質ステロイド投与が行われますが、HIV感染者には使用することができません。
外科的治療
水頭症など、進行したものに対しては外科的手術として、脳室手術やシャント手術を行う場合もあります。
最後に
- 結核菌が頭蓋内に入り、脳底部を中心に波及、髄膜に炎症を起こすことでなる
- 発熱・頭痛・嘔吐が髄膜炎の特徴
- 髄液刺激徴候検査・脳脊髄液検査・菌培養検査・胸部X線検査・CT/MRI検査などによって診断
- 早期に薬物治療を始める必要がある
- 進行した場合は外科的気治療を行う
BCGは結核予防に有効と言われていますが、特に結核性髄膜炎にも効果的です。また、Hibワクチンも髄膜炎予防には効果的で、もし髄膜炎になったとしても重症化せずに済むという報告もあります。
予防接種には副作用もあるため、そのリスクから受けない判断をする方も多くいますが、病気を知ることで、重要性も見えてくるでしょう。