アイス・バケツ・チャレンジをTVで見た記憶が残ってる人は多いのではないでしょうか?
一般人だけにとどまらず、多くの著名人も参加したことでメディアに取り上げられ、その内容よりも氷水をかぶる姿が印象的でしたよね。
このアイス・バケツ・チャレンジの目的が、筋萎縮性側索硬化症の研究を支援するためでしたが・・・
実際この筋萎縮性側索硬化症のことを知っている人はどれくらいいるでしょう?
今回は筋萎縮性側索硬化症(ALS)について
- 原因
- 症状
- 診断
- 治療法
- 看護
をご説明したいと思います。
筋萎縮性側索硬化症とは?意味は?
上位・下位運動ニューロン(骨格筋を支配する神経細胞)が変形・脱落していく病気です。
英語表記で「Amyotrophic lateral sclerosis」略語でALSといいます。
つまり筋萎縮性側索硬化症とは、筋が萎縮してしまい、運動ニューロンが障害され側索が瘢痕化してしまうという意味で、別名「運動ニューロン疾患」とも呼ばれます。
筋萎縮性側索硬化症の原因は?
現在までにはっきりとした原因は分かっていません。
ですが、これが関連するのでは、と考えられている原因があります。
- グルタミン酸過剰説
- 全身の細胞にある遺伝子SOD1の異変
徐々に全身の筋肉の萎縮が進行する病気で、難病に指定されています。
ほとんどが孤発生ですが、5%が家族性による遺伝といわれています。
全ての年代にもみられますが、特に40~50代の中高年に多く、2〜4対1と男性に多い傾向があります。
また、人種的に差異はないものの、グアム島や紀伊半島に多発地域として知られています。
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筋萎縮性側索硬化症の症状とは?
- 細かい作業がしにくい
- つまずきやすい
- 物が重く感じる
- ひどい疲労感
- 痩せてくる
- 固形物がうまく飲み込めない
- 四肢が動かなくなる
- 自発呼吸が出来なくなる
脳の表層にある、ニューロンと呼ばれる筋肉を動かすための指令を出す神経細胞に障害が出ます。
まず、発症したら下位運動ニューロンの障害が起きます。
そして、1~2年たつと上位ニューロンの障害が現れます。
またそれから2~3年経つと、球麻痺が現れます。
最終的に自発呼吸が出来なくなるまで、発症から3~5年といわれています。
下位運動ニューロンの障害
- 筋力の低下
- 母指、小指球筋の萎縮
疲れやすくなり、手に力が入らないといった症状で異変を感じます。
上位ニューロンの障害
- 下肢の痙縮
- 上腕、肩甲骨周囲の筋萎縮
- 嚥下障害
- 構音障害
- 舌の萎縮
上肢に力が入らなくなり痩せてきます。
また、下肢に力が入らず突っ張って歩きにくいといった症状や固形物をうまく飲み込めない、舌の萎縮によて舌が変形して凹凸になるなどの症状が見られます。
球麻痺
- 全身の筋萎縮
- 呼吸筋の障害
そして、全身の筋萎縮が進み、動くことも出来なくなり、自発呼吸も不可能となります。
症例:62歳男性
呼吸困難のため搬送される。
構音障害・燕下障害・四股の筋力低下・筋萎縮及び四股の腱反射亢進を認める。
(出典:医師国家試験過去問107B45)
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筋萎縮性側索硬化症の診断は?
臨床所見から筋萎縮性側索硬化症を疑い
- 針筋電図
- 病理組織検査
- MRI検査
を行います。
針筋電図
随意収縮時に高振幅電位が、安静時に線維束性収縮電位がが見られます。
病理組織検査
運動ニューロンである脊髄前角細胞の変性や脱落が見られます。
また、前角細胞の中にBunina小体という好酸性の封入体が見られます。
更に、筋生検を行うと筋線維の群集萎縮が確認できます。
MRI検査
診断方法としては、MRIで筋萎縮性側索硬化症の画像所見を探すのではなく、似た病気を否定していくために行います。
- 腫瘍
- MS
- 頚椎病変
- 末梢神経障害
ただ、脊髄をMRIで撮影すると、両側の側索や錐体路に沿って高信号領域が認められることがあります。
症例 40歳代男性 構音嚥下障害、上肢遠位筋筋力低下あり。
両側の一次運動野から錐体路にかけて異常な高信号を認めています。
他の検査などと併せてALSと診断されました。
この一次運動野から錐体路にかけて連続する高信号を動画でチェックする。
筋萎縮性側索硬化症の治療法は?
難病に指定されるもので、効果的な治療法は現在見つかっておりません。
ただ、筋萎縮性側索硬化症の治療法を研究する支援金を集めるためにアイス・バケツ・チャレンジが始まったものであるため、今後の研究に期待したいところです。
現在は治療法として、対処療法が中心です。
病気の進行に合わせた薬物療法やリハビリ治療が一般的です。
薬物療法としては、病気の進行を少しでも遅らせるため、リルゾールが使われます。
リハビリ治療としては、筋萎縮を少しでも遅らせるためストレッチが有効です。
筋萎縮性側索硬化症の看護は?
退院後も
- 喀痰吸引
- 口腔ケア
- 食事形態の工夫
が重要です。
患者自身が自分の意思を伝えるのも困難になってくる・人工呼吸器を装着しないケースでは、呼吸不全に陥るなど、今後の患者のことを家族に説明することも大切です。
参考文献:病気がみえる vol.7:脳・神経 P268〜273
参考文献:全部見える 脳・神経疾患―スーパービジュアル 徹底図解でまるごとわかる! P213〜217
参考文献:内科診断学 第2版 P1062・1063
参考文献:新・病態生理できった内科学 7 神経疾患 P235〜241
最後に
- 全身の筋肉の萎縮が進行する病気
- 発症から3~5年で自発呼吸が出来なくなる
- 原因は不明だが、5%に家族性遺伝が考えられる
- 臨床・針筋電図・病理組織検査・MRIで診断する
- 効果的な治療法はなく、進行を遅らせる対処療法が一般的
2016年8月、日本の研究グループによって、5%とされる家族性筋萎縮性側索硬化症においてオプチニューリンという遺伝子について発症メカニズムが一部解明されたと発表されています。
今後、原因不明で苦しむ多くの筋萎縮性側索硬化症患者のために、1日でも早く治療法や原因が解明されて欲しいですね。