Amyotrophic lateral sclerosis Eye-catching image

 

アイス・バケツ・チャレンジをTVで見た記憶が残ってる人は多いのではないでしょうか?

一般人だけにとどまらず、多くの著名人も参加したことでメディアに取り上げられ、その内容よりも氷水をかぶる姿が印象的でしたよね。

このアイス・バケツ・チャレンジの目的が、筋萎縮性側索硬化症の研究を支援するためでしたが・・・

実際この筋萎縮性側索硬化症のことを知っている人はどれくらいいるでしょう?

今回は筋萎縮性側索硬化症(ALS)について

  • 原因
  • 症状
  • 診断
  • 治療法
  • 看護

をご説明したいと思います。


先に結論

  • ALSは、体を動かす運動ニューロンが少しずつ弱っていく指定難病で、手足・話す・飲み込む・呼吸の筋肉が動かしにくくなります。
  • 感覚(触った感じ)や、目の動き・膀胱直腸の機能は比較的保たれることが多い病気です。
  • 中年以降、特に60〜70代に多く、男性がやや多いです。約5%は家族性です。
  • 診断は、神経の診察と針筋電図、MRIなどで似た病気を除いて行います。
  • 根本的に治す治療法はありませんが、進行を遅らせる薬(リルゾール、エダラボンなど)と呼吸・栄養・コミュニケーションのケアがあります。
  • 手の力が入りにくい、ろれつが回りにくい、むせやすいなどが続くときは、神経内科(脳神経内科)を受診しましょう。
ALSって、どんな病気?
体を動かす神経が少しずつ弱っていき、手足や飲みこむ力、呼吸の筋肉が動かしにくくなる病気です。感覚は保たれることが多いですよ。

筋萎縮性側索硬化症とは?意味は?

上位・下位運動ニューロン(骨格筋を支配する神経細胞)が変形・脱落していく病気です。

英語表記で「Amyotrophic lateral sclerosis」略語でALSといいます。

つまり筋萎縮性側索硬化症とは、筋が萎縮してしまい、運動ニューロンが障害され側索が瘢痕化してしまうという意味で、別名「運動ニューロン疾患」とも呼ばれます。

筋萎縮性側索硬化症の原因は?

現在までにはっきりとした原因は分かっていません(難病情報センター)。

ですが、これが関連するのでは、と考えられている原因があります。

  • グルタミン酸過剰説
  • 全身の細胞にある遺伝子SOD1の異変

徐々に全身の筋肉の萎縮が進行する病気で、指定難病です。

ほとんどが孤発性(遺伝しない)ですが、全体の約5%は家族内で発症する家族性ALSです。家族性では約40の原因遺伝子が見つかっており、日本人ではSOD1遺伝子が最も多い(約3割)とされています。

中年以降のどの年齢でも発症しえますが、60〜70代に最も多く、男性が女性の1.3〜1.5倍とやや多い傾向があります(難病情報センター)。

また、人種的に差異はないものの、グアム島や紀伊半島に多発地域として知られています。

筋萎縮性側索硬化症の症状とは?

医師
細かくは、下記のような症状が現れる病気です。
  • 細かい作業がしにくい
  • つまずきやすい
  • 物が重く感じる
  • ひどい疲労感
  • 痩せてくる
  • 固形物がうまく飲み込めない
  • 四肢が動かなくなる
  • 自発呼吸が出来なくなる
医師
普段できていたことが、徐々に出来なくなっていきます。

als

脳の表層にある、ニューロンと呼ばれる筋肉を動かすための指令を出す神経細胞に障害が出ます。

ALSでは下位運動ニューロンの障害(筋力低下・筋萎縮・筋肉のぴくつき)と上位運動ニューロンの障害(つっぱり・腱反射の亢進)が組み合わさって現れます。

手足から始まるタイプと、話しにくさ・飲み込みにくさ(球麻痺)から始まるタイプがあり、どこから始まるかは人によって違います。

進行の速さにも個人差があり、人工呼吸器を使わない場合、発症から死亡までの期間はおおよそ2〜5年ですが、10年以上ゆっくり進む人も、1年ほどで呼吸不全になる人もいます(難病情報センター)。

下位運動ニューロンの障害

  • 筋力の低下
  • 母指、小指球筋の萎縮

疲れやすくなり、手に力が入らないといった症状で異変を感じます。

上位ニューロンの障害

  • 下肢の痙縮
  • 上腕、肩甲骨周囲の筋萎縮
  • 嚥下障害
  • 構音障害
  • 舌の萎縮

上肢に力が入らなくなり痩せてきます。

また、下肢に力が入らず突っ張って歩きにくいといった症状や固形物をうまく飲み込めない、舌の萎縮によって舌が変形して凹凸になるなどの症状が見られます。

球麻痺

  • 全身の筋萎縮
  • 呼吸筋の障害

そして、全身の筋萎縮が進み、動くことが難しくなり、呼吸の筋肉も弱って呼吸の補助が必要になります。

症例:62歳男性

呼吸困難のため搬送される。

構音障害・嚥下障害・四肢の筋力低下・筋萎縮及び四肢の腱反射亢進を認める。

医師
舌の萎縮写真はこちら。

ALS

(出典:医師国家試験過去問107B45)

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筋萎縮性側索硬化症の診断は?

臨床所見から筋萎縮性側索硬化症を疑い

  • 針筋電図
  • 病理組織検査
  • MRI検査

を行います。

針筋電図

随意収縮時に高振幅電位が、安静時に線維束性収縮電位が見られます。

医師
脱神経所見は重要な診断基準となります。

病理組織検査

運動ニューロンである脊髄前角細胞の変性や脱落が見られます。

また、前角細胞の中にBunina小体という好酸性の封入体が見られます。

更に、筋生検を行うと筋線維の群集萎縮が確認できます。

MRI検査

診断方法としては、MRIで筋萎縮性側索硬化症の画像所見を探すのではなく、似た病気を否定していくために行います。

医師
鑑別疾患として以下のようなものがあります。
  • 腫瘍
  • MS
  • 頚椎病変
  • 末梢神経障害

ただ、脊髄をMRIで撮影すると、両側の側索や錐体路に沿って高信号領域が認められることがあります。

症例 40歳代男性 構音嚥下障害、上肢遠位筋筋力低下あり。

ALS mri findings

両側の一次運動野から錐体路にかけて異常な高信号を認めています。

他の検査などと併せてALSと診断されました。

この一次運動野から錐体路にかけて連続する高信号を動画でチェックする。

ALSの診断で行う検査の一覧表

MRIで似た病気を見分けるときに名前が挙がる多発性硬化症については、多発性硬化症の診断基準や治療法は?イラストやMRI画像で解説でくわしく解説しています。

筋萎縮性側索硬化症の治療法は?

難病に指定されるもので、病気を根本的に治す治療法はまだありませんが、進行を遅らせる薬があります。

ただ、筋萎縮性側索硬化症の治療法を研究する支援金を集めるためにアイス・バケツ・チャレンジが始まったものであるため、今後の研究に期待したいところです。

hito

現在は治療法として、対処療法が中心です。

病気の進行に合わせた薬物療法やリハビリ治療が一般的です。

薬物療法としては、病気の進行を遅らせる目的で、リルゾール(内服)やエダラボン(点滴・内服)、メコバラミンなどが使われます。SOD1遺伝子の変異がある方にはトフェルセンが使われることもあります(難病情報センター)。

リハビリ治療は、関節のこわばりを防ぎ、動きを保つ目的で行われます。疲れすぎない範囲での内容は、主治医や理学療法士と相談しましょう。

筋萎縮性側索硬化症の看護は?

退院後も

  • 喀痰吸引
  • 口腔ケア
  • 食事形態の工夫

が重要です。

患者自身が自分の意思を伝えるのも困難になってくる・人工呼吸器を装着しないケースでは、呼吸不全に陥るなど、今後の患者のことを家族に説明することも大切です。

食事を介助してもらう男性のイラスト

参考文献:病気がみえる vol.7:脳・神経 P268〜273
参考文献:全部見える 脳・神経疾患―スーパービジュアル P213〜217
参考文献:内科診断学 第2版 P1062・1063
参考文献:新・病態生理できった内科学 7 神経疾患 P235〜241

よくある疑問

Q. 初期症状は何ですか。
A. 手先の細かい作業がしにくい、つまずきやすい、疲れやすい、腕や足がやせてきた、話しにくい、飲み込みにくいなどです。どこから始まるかは人によって違います。

Q. 何科を受診すればよいですか。
A. 神経内科(脳神経内科)です。気になる症状が続くときは、早めに相談しましょう。

Q. 遺伝しますか。
A. 約95%は遺伝しない孤発性で、約5%が家族性です。心配なときは遺伝カウンセリングで相談できます。

参考(追加):難病情報センター「筋萎縮性側索硬化症(ALS)」

最後に

  • 全身の筋肉の萎縮が進行する病気
  • 進行には個人差があり、人工呼吸器を使わない場合は発症から死亡までおおよそ2〜5年
  • 原因は不明で、約5%は家族性
  • 臨床・針筋電図・病理組織検査・MRIで診断する
  • 根本的な治療法はなく、進行を遅らせる薬とケアが中心

 

家族性ALSでは、SOD1のほかにオプチニューリン(OPTN)などの遺伝子も関わることがわかっています(難病情報センター)。

原因や治療法の研究が進み、治療の選択肢が増えていくことが期待されます。