臓器移植をするとその後に免疫抑制剤を使用するため、それに伴う副作用が出現することがあります。
- 易感染性
- 臓器障害
- 悪性腫瘍の発生
と言ったものが挙げられます。その悪性腫瘍のうちリンパ球や形質細胞に生じる腫瘍性病変を総称してPTLD(移植後リンパ増殖症)と定義します。
今回はこのPTLD(移植後リンパ増殖症)について症状、原因、治療についてまとめました。
PTLDとは?
移植後PTLDは臓器移植後の免疫抑制剤に関連した合併症で、リンパ球や形質細胞に生じる腫瘍性病変を総称したものです。
PTLDとは移植後リンパ増殖性疾患(posttransplantation lymphoproliferative disorder)の略です。
どこの臓器移植で生じる?
実質臓器移植の2-5%で生じるとされますが、中でも
- 心移植
- 肺移植
のような免疫抑制が強い場合は、発症率が10-25%と高いとされます。一方で、肝移植や腎移植のように免疫抑制がそれほど強くない場合は、1-5%と低めです。
PTLDは、
- 早期病変
- 多形性PTLD
- 単形性PTLD
- その他(Hodgkinリンパ腫など)
に分類されます。
また通常のリンパ腫と比較して、節外病変が多いのが特徴で、全身どこにでも生じますが、特に腹部の頻度が高く、腎臓、肝臓、心移植後のPTLDの50-75%を腹部に生じると報告されています。
腹部領域のPTLDの特徴は?
腹部の中でも、消化管、肝臓、リンパ節での頻度が高いと言われています。
消化管の中では、回腸末端〜上行結腸、胃での頻度が高いと言われ、画像所見としては、他のリンパ腫と同様で
- 腸管壁のびまん性肥厚
- 粘膜ひだの腫大
- 潰瘍形成〜ポリープ形成
など様々です。ただし、PTLDでは潰瘍形成に伴う消化管穿孔の頻度が高いと報告されています。
一方で、肝臓や脾臓、腎臓などに生じるPTLDは造影CTに置いて乏血性、低吸収の充実性腫瘤として認められます。
PTLDは治療を行わない場合は致死的であり、そのためには画像を含め早期発見が重要とされます。
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PTLDの原因は?
80%程度は、EBウイルスと関連があり、EBウイルス関連のPTLDは移植後1年以内に発症する頻度が高いとされています。
一方でEBウイルス非関連のPTLDは移植後2年以降に発症し、B細胞リンパ腫が多いとされます。
PTLDの症状は?
生じる部位によって様々ですが、
- リンパ節腫大
- B症状(発熱、発汗、体重減少)
- 摂食障害
- 倦怠感
- 敗血症
- 多臓器不全
とリンパ腫に特徴的なものから、非特異的なものまで症状があります。
PTLDの治療は?
通常は、免疫抑制剤の減量のみで改善することが多いとされますが、悪性リンパ腫へ移行するものもあり、その場合は予後を左右する原因となります。
PTLDの多くはCD20陽性のB細胞性であることが多いため、その場合はリツキシマブ(抗CD20抗体)を使用します。
参考文献)
AJR 171(4) :1007-1013.1998
Nephrology 11(4):355-366,2006