健康診断や人間ドックで受ける心電図は、波型のグラフが表示されますが、素人目には何がどうなっているのか、分かりませんよね?
そこで、今回は、心電図の見方の基本として
- 基本の波形
- 異常な場合の波形
を、分かりやすくイラストと共にご説明したいと思います。
心電図では何が分かる?基本の波形は?
心電図検査は、心臓の病気を見つけるための検査です。
心臓は生きている限り鼓動を続けますが、この心臓を動かす電気信号を体の表面で捉えて波形として記録するのが、心電図です。
心電図の基本は、「PQRSTU」のアルファベットの波形の繰り返しで表記されます。
P波
前半の右心房と、後半の左心房の興奮が合わさったものです。
QRS波
心室の興奮の過程をあらわします。
ST部分
普段は平坦ですが、異常があると、変化があらわれます。
T波
心室の電気的な興奮が回復する様子があらわれます。
U波
T波に続いてあらわれる小さな波ですが、あらわれないこともあります。
PQ間隔
P波の始まりの地点から、Q波の始まりの地点までの時間のことで、発生した電気信号が心室に伝わるまでの時間となります。
QT間隔
Q波の始まりの地点から、T波の終わりの地点までの時間のことで、心室の興奮が始まってから回復するまでの時間となります。
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心電図で異常な場合の波形は?
心電図では、以下のような異常が現れます。
- 調律異常
- 伝導異常
- P波の異常
- QRS波の異常
- ST-T波の異常
調律異常
心臓は1分間に60〜100回、洞結節から発する電気信号を起こしています。
しかし、この範囲を超えて速くなったり、遅くなったりするのが、調律異常です。
- 洞性徐脈・・・脈が低下し、1分間に60回以下になった状態
- 洞性頻脈・・・脈が1分間に100回を超えた状態
- 洞性不整脈・・・洞調律が乱れ、拍動リズムに変動が見られる状態
- 洞停止・洞房ブロック・・・突然電気信号が停止・電気信号が周囲の心房に伝わらなくなった状態
- 上室性期外収縮・・・電気信号が早いタイミングで出て、早期収縮が起こるもの
- 心室性期外収縮・・・早いタイミングで電気信号が出て、早期収縮が起こるもの
- 異所性心房調律・・・洞結節以外から発生した電気信号が、連続して心臓を拍動させている状態
- 心房細動・・・心房全体から1分間に400〜500回バラバラに発生している状態
- 心房粗動・・・心房から1分間に300回くらいの興奮が発生している状態
- WPW症候群・PQ短縮・・・興奮が早く心室に伝わり、発作的に1分間に200回ほどの頻脈になる不整脈を合併する
などに異常が見られます。
伝導異常
電気信号を伝える刺激伝導系に異常が現れるものを、伝導異常といいます。
心房から寝室への電気的興奮が伝導しなかったり、心室内で伝導が途切れる場合があります。
- 房室ブロック・・・心房から心室への電気信号の伝わりが遅れた状態(Ⅰ度房室ブロック・モービッツⅠ型ウェンケンバッハ型Ⅱ度房室ブロック・モービッツⅡ型Ⅱ度房室ブロック・2:1房室ブロック・Ⅲ度房室ブロックがある)
- 右脚ブロック・・・刺激伝達系の右脚が断裂したもの
- 左脚ブロック・・・何らかの原因で、左脚が切れ、電気信号が伝わらなくなった状態
- 心室内伝導障害・・・心室全体への電気的興奮の広がりが遅れる状態
などがあります。
P波の異常
- 右房負荷・・・右心房が拡張したり、負荷がかかっている状態
- 左房負荷・・・左心房が拡張したり、負荷がかかっている状態
右房負荷は肺性P波、左房負荷は僧帽性P波ともいいます。
QRSの異常
QRS波(寝室の興奮を表す)の振幅の増大からは心室の肥大が、QRSの幅の延長からは、心室の刺激伝導の遅れが分かります。
また、心筋梗塞が疑われる、異常波形などの情報が読み取れます。
- 低電位・・・QRS波の振幅が基準値以下
- 右軸偏位・左軸偏位・不定軸・・・痩せ型の人は右軸偏位・肥満体の人は左軸偏位・不定軸は正常
- 時計回転・反時計回転・・・心電図も波の現れ方に生じるずれ
- 左室肥大・・・左心室の筋肉が異常に厚くなった状態
- R波増高不良・・・R波の変化が不良な状態
- 右室肥大・・・右心室を取り巻く筋肉が極端に厚くなった状態
- 異常Q波・・・心筋梗塞
などがあります。
ST-T波の異常
心室の電気的興奮からの回復状況を反映した状態で、心筋の障害や狭心症(虚血)などがあると変化が出る。
- 心筋虚血・・・STが低下し、心筋障害が考えられる
- ストレイン型ST-T変化・・・STが低下し、T波の向きが逆になる強い変化
- 非特異的ST-T変化・・・心筋梗塞・狭心症・心肥大とは異なるものの、正常範囲内ではない状態
- QT間隔延長・・・心室の電気的興奮の回復が遅れている状態
- 早期再分極・・・心室の筋肉の一部の電気的興奮が他の部位より早く回復する現象
などがあります。
関連記事)
参考文献:四訂版 病院で受ける検査がわかる本P78~83
参考文献:新 検査のすべてがわかる本P154~157
参考文献:検査のしくみ 検査値の読み方P116
参考文献:きょうの健康 検査でわかることP100~109
参考文献:病気がみえるvol.2循環器P356・357
最後に
「この波形はこの異常」と心電図を見るだけで判断することはなかなか難しくもあります。
また、心電図に異常が出れば必ずしも病気があるとも限りません。
ですので、再検査を行い、精密検査をする必要があるのです。
中には、病気があっても自覚症状がなく、詳しい検査をするまで気づかないこともあるので、その兆候を見るためにも心電図検査は重要なのです。