女性の子宮に起こる病気の一つに子宮腺筋症(読み方は「しきゅうせんきんしょう」英語では、uterine adenomyosis)があります。
子宮の内膜に似た組織が、子宮の筋層内で発育増殖することで、様々な症状を起こすことが知られています。
今回はこの子宮腺筋症について
- 子宮腺筋症の症状
- 子宮腺筋症の原因
- 子宮腺筋症の検査方法
- 子宮腺筋症の治療法
について、イラストや実際のMRIの画像を交えてわかりやすく解説しました。
子宮腺筋症とは?
子宮腺筋症とは子宮内膜によく似た組織が子宮筋層と呼ばれる場所で発育・増殖してしまう疾患のことです。
※同じように子宮内膜によく似た組織が卵巣内で発育・増殖するとチョコレート嚢胞と呼ばれる嚢胞を形成します。
子宮腺筋症は主に30歳代後半から40歳代の経産婦によく起こることで知られています。
病理学的には良性ですがこの疾患を放置していると以下に示すような、様々な症状を引き起こします。
子宮腺筋症の症状は?
子宮腺筋症の症状は月経困難症、過多月経や月経期間が長くなる、などがあります。
もっと詳しく見てみましょう。
- 腰痛
- 下腹部痛
- 頭痛
- 腹部膨満感
- 吐き気
- 下痢
- 食欲不振
- 疲労感
- イライラ
- 抑うつ感
- 脱力感
数ある症状の中でも特に多いのが腰痛と下腹部痛で、場合によっては激痛になる場合もあります。
しかしごく稀に症状が現れない場合があります。
この場合は圧迫されるような症状が無い限りは治療の必要はありません。
子宮腺筋症の原因は何?
- 妊娠
- 分娩
- 子宮内膜掻爬術などの手術によって内膜を掻き出したことがある
上記にあるような原因で子宮内膜の細胞が子宮筋層内に侵入し、増殖することで発生すると考えられています。
子宮腺筋症の検査方法は?
内診
子宮腺筋症は内診によって腫大した子宮を認めることが出来ます。
子宮筋腫と違って硬さはありません。
超音波による診断
子宮が全体的に腫大しています。
CTによる診断
CTで確認するとやはり腫大した子宮が認められます。
ただしCTでは子宮筋腫との鑑別は難しいことが多いとされます。
MRIによる診断
MRI検査では、T2強調像と呼ばれる画像で子宮の肥大と、辺縁が不明瞭な低信号の病変として描出されます。
junctional zoneと呼ばれる内膜直下のT2強調像の低信号域から連続した低信号となります。
内部にはT2強調像や脂肪抑制T1強調像で出血を示唆する高信号を認めることがあります。
子宮筋腫との鑑別は困難な場合もありますが、一般的に筋腫は境界が明瞭で辺縁が平滑(スムーズ)なのに対して、子宮腺筋症は辺縁が不明瞭で周囲の筋層と区別ができないことが多いです。
症例 40歳代 女性
子宮後壁は肥厚しています。
肥厚した内部にはT2強調像及び脂肪抑制T1強調像で高信号(白い部分)が見られます。
筋層内の出血を疑う所見で、子宮腺筋症を疑うMRI画像所見です。
はっきりと周囲の正常な筋層との区別はできません。
子宮のびまん性の壁肥厚の鑑別
- びまん性子宮転移(胃がん、乳がん、大腸癌が多い
- 薬剤性(タモキシフェンなど)
- 悪性リンパ腫
- びまん性浸潤型体癌(神経内分泌腫瘍など)
血液検査
腫瘍マーカー検査にてCA125が高値を示すことがあります。
子宮腺筋症の治療法は?
子宮腺筋症は閉経をすれば自然に治っていきますがほとんどの方はその痛みに耐えることが出来ないため、治療を行うことになります。
薬物療法
子宮腺筋症の症状が比較的軽度で、経過観察が可能な場合には薬物療法が行われます。
痛みを止める鎮痛剤とホルモンバランスを整えるための内分泌薬が併用されます。
主に使用される薬品は次の通りです。
- NSAIDs:エヌセイズ(鎮痛薬)・・・プロスタグランジンの合成を阻害する
- LEP:low dose estrogen progestin(低用量ピル)
- GnRHアゴニスト
- 黄体ホルモン(ジエノゲスト)
- ダナゾール
- 鉄剤・・・過多月経の場合に起こる貧血がある場合投与
薬物療法は根治療法ではなく、症状を抑えるための治療です。
根本的に治療するには手術しかありません。
その他、漢方が使われることもあるようです。
手術療法
子宮腺筋症を根治させるには手術療法しかありません。
手術には保存手術と根治手術があります。
手術後の経過
保存手術ですと再発することがあります。
その場合は薬物療法を行います。
子宮腺筋症切除術
こちらは保存手術になります。
薬物療法で効果がなく、妊娠を希望する場合に選択されます。
子宮を温存し、腺筋症の部分だけを部分的に切除します。
子宮全摘出手術
こちらは根治手術です。
子宮を開腹手術または腹腔鏡手術によって摘出します。
子宮が無くなれば再発の心配もありません。
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参考文献:病気がみえる vol.9:婦人科・乳腺外科 P130
参考文献:婦人科・乳腺外科疾患ビジュアルブック P162
まとめ
- 子宮腺筋症の主な症状は腰痛と下腹部痛である
- 子宮腺筋症の原因は妊娠や分娩、子宮の手術と言われている
- 子宮腺筋症の検査は内診、超音波、CTやMRI、血液検査
- 子宮腺筋症の治療は薬物療法と手術療法がある
- 稀に症状が出ない場合もある
いかがでしたか?今回は子宮腺筋症についてのお話しでした。
閉経すれば自然に治るとは言え、あまりにも痛むようなら治療をした方が良いでしょう。
あまり無理をせず、おかしいと思ったら病院で検査をしてみてください。