痛風に似た疾患に、偽痛風(読み方は「ぎつうふう」英語表記で「pseudogout」)があります。
あまり耳にされた事のない病名かもしれませんが、比較的起こりやすい多発性の関節痛を起こす病気とされます。
この病気、痛風とどの様な違いがあるのでしょうか?
また、その原因はわかっているのでしょうか?
今回は、この偽痛風について
- 痛風との違い
- 原因
- 症状
- 診断
- 治療
などをわかりやすく解説したいと思います。
先に結論
- 偽痛風は、ピロリン酸カルシウムの結晶が関節にたまって急に痛む関節炎です(ピロリン酸カルシウム沈着症、CPPD)
- 痛風は尿酸の結晶、偽痛風はピロリン酸カルシウムの結晶で、原因が違います
- 高齢者の膝に多く、発熱を伴うこともあります
- 診断は、関節液で結晶を確認することが決め手です。感染による関節炎との区別も大切です
- 治療は、安静・冷却、関節液の抜き取り、消炎鎮痛薬、コルヒチン、ステロイドなどを症状に応じて使います
痛風と偽痛風の比較
| 痛風 | 偽痛風 | |
|---|---|---|
| 結晶 | 尿酸ナトリウム | ピロリン酸カルシウム |
| 多い年齢 | 中年以降 | 高齢者 |
| 男女差 | ほとんど男性 | あまりない |
| 多い関節 | 足の親指の付け根など | 膝 |
偽痛風とは?

関節に痛風と似た症状を生じるものの、痛風とは原因が異なるという点で「偽」がついています。
偽痛風とは、ピロリン酸カルシウムが関節内へ沈着する疾患です。
このためピロリン酸カルシウム沈着症(CPPD)とも呼ばれます。
この結晶は軟骨に沈着することから、軟骨石灰化症(なんこつせっかいかしょう、chondrocalcinosis)ともいわれます。
偽痛風は高齢者によく起こり、間欠的な急性炎症により、痛風と似た痛みを生じます。
ピロリン酸カルシウム結晶ができる原因
ピロリン酸カルシウム結晶ができる原因として、軟骨変性が挙げられます。
軟骨が変性して関節破壊されると関節腔内へ落ちた軟骨内にある結晶を、白血球などが除去しようとします。
それと同時に、細胞から放出される化学物質により炎症が悪化してしまい、その状態が強い痛みを発症させるのです。
偽痛風と痛風の違いは?
痛風と偽痛風では、そもそもの原因が異なります。
痛風は、血中の尿酸値が上昇し関節液内に尿酸ナトリウム結晶が析出する病気ですが、偽痛風は、ピロリン酸カルシウムの結晶によって起こる関節炎です。

- 発症する年齢:痛風は40代以降の中年に多いのに対し、偽痛風は60代〜80代の高齢者に多い
- 発症する男女差:痛風はほとんど男性とされますが、偽痛風には男女差があまりない
- 発症する部位:痛風はほぼ足の親指の付け根付近や足首などのに好発するが、偽痛風では、膝関節に多い
痛風のもとになる尿酸値については、健康診断で尿酸値が高いと言われたら?基準値・原因・受診の目安と下げる方法で解説しています。
偽痛風の原因は?
ピロリン酸結晶が関節内へ沈着することで生じると言いましたが、そもそもの原因(危険因子)としては、以下のようなものがあります。ヨーロッパリウマチ学会(EULAR 2011)は、加齢、変形性関節症、原発性副甲状腺機能亢進症、ヘモクロマトーシス、低マグネシウム血症を危険因子として挙げており、家族性のものはまれとしています。
- 加齢
- 変形性関節症
- 副甲状腺機能亢進症
- ヘモクロマトーシス(鉄代謝異常)
- 低マグネシウム血症
危険因子のひとつである甲状腺機能低下症については、甲状腺機能低下症の症状は?セルフチェックの項目とTSHの見方・治療で解説しています。
また、参考文献の教科書では、遺伝的素因や、甲状腺機能低下症、痛風、低リン血症などの代謝性疾患に合併して起こる例も紹介されています。
また、
- 外傷
- 外科手術
- 脳梗塞
- 心筋梗塞
- 安静臥床
なども、偽痛風を引き起こす誘因となります。
偽痛風の症状は?
- 関節の痛み
- 関節の腫れ・熱感
- 発熱
- だるさ(倦怠感)
などがみられます。急に発症し、発熱などの全身症状を伴うことがあります。
偽痛風の好発部位は?

関節のある場所に起こりますが、その中でも膝関節に好発し、関節水腫が見られ、関節リウマチによく似た多関節炎を生じることもあります。
膝関節に次いで、手、足、股関節、肘関節に好発します。

偽痛風の診断方法は?
- 血液検査
- レントゲン(X線検査)
- 関節液の偏光顕微鏡検査
などを行います。
偽痛風の発作時の血液検査では、白血球数の増加、CRP(C反応性蛋白)の陽性など、炎症性の変化がみられます。
X線写真では、膝関節の場合、関節軟骨や半月板に一致して点状、線状の石灰化像が認められることがあります。ただし、X線での石灰化は、感度も特異度も高くないとされ(EULAR 2011)、超音波検査のほうが有用とされています。

手関節の場合は、三角線維軟骨に石灰沈着を認めます。
関節液を検査し、ピロリン酸カルシウムの結晶を証明することが出来れば、診断確定となります。
しかし、敗血症や化膿性関節炎(細菌などの感染による関節炎)との鑑別も重要です。発熱を伴う急な関節の腫れは、早めに受診してください。
偽痛風って治療は必要?
- 安静・冷却
- 薬物療法(非ステロイド系抗炎症剤・コルヒチン・ステロイド)
- 外科的治療(関節液排除・関節内洗浄・人工関節置換術)
という治療法があります。症状のない石灰化だけの場合は、治療は不要とされます(EULAR 2011)。
安静・冷却
まずは、安静と冷却で、痛みを取ることが基本の治療となります。EULARの推奨でも、急性の発作には、冷却、一時的な安静、関節液の吸引(必要に応じてステロイドの関節内注射)で十分なことが多いとされています。
薬物療法
痛みを取る主な方法として、非ステロイド系抗炎症剤で炎症をコントロールし、症状を和らげる方法がとられています。
また、症状によっては、副腎皮質ステロイド薬を関節内に注入します。繰り返す場合や慢性の関節炎には、コルヒチンが用いられることもあります。
発熱など全身に症状が出た場合や、ほかの方法が難しい場合は、副腎皮質ステロイド薬の内服や注射を行うこともあります。薬の種類や使い方は、年齢や腎臓・胃腸の状態をみて医師が決めます。
この病気は、変形性関節症(へんけいせいかんせつしょう)を合併している確率が高い為、生活習慣改善やリハビリテーションなどが行なわれる場合もあります。
外科的治療
外科的な治療としては、結晶を摘出するために関節液の排除や、関節内の洗浄が行われます。
変形が進行した膝関節に対しては人工膝関節置換術などが施される時もあります。
まれに、脊椎に病変が及んで神経症状がみられる場合は、脊椎手術が検討されることもあります。

よくある疑問
Q. 偽痛風は何科を受診しますか?
膝などの関節が急に腫れて痛むときは、整形外科やリウマチ科、内科で相談できます。発熱を伴う場合は、感染との区別が必要なため、早めに受診してください。
Q. 痛風の薬(尿酸を下げる薬)は効きますか?
偽痛風の原因は尿酸ではなく、ピロリン酸カルシウムの結晶です。尿酸値を下げることが治療の中心ではありません。診断が確定してから、医師の指示に従って治療を受けてください。
Q. 入院中や手術のあとにも起こりますか?
外傷、手術、脳梗塞、心筋梗塞、安静臥床などが誘因となることがあります(参考文献の教科書)。入院中の高齢者で、急に関節が腫れた場合は、担当医に伝えましょう。
参考:Zhang W, et al. EULAR recommendations for calcium pyrophosphate deposition. Part I: terminology and diagnosis. Ann Rheum Dis 2011 PubMed
参考:Zhang W, et al. EULAR recommendations for calcium pyrophosphate deposition. Part II: management. Ann Rheum Dis 2011 PubMed
参考文献:整形外科疾患ビジュアルブック P155・156
参考文献:全部見えるスーパービジュアル整形外科疾患 P92〜95
参考文献:100%整形外科 国試マニュアル 改訂第6版P173
最後に
- ピロリン酸結晶が関節内へ沈着することで生じる急性の関節炎
- 代謝性疾患に合併して起こることが多い
- 発熱などの全身症状を伴うことがあり、膝関節に好発する
- 関節液を検査し、ピロリン酸カルシウムの結晶を証明することが出来れば、診断確定
- 安静・冷却・薬物療法・外科的治療が症状に応じて選択される
- 痛風と偽痛風では、原因が異なる
偽痛風なのか痛風なのか、自己判断が難しい場合も多くあります。
何らかの症状がある様でしたら、速やかに病院へ行かれ診察を受けるようにされて下さいね。