大腸がんの治療は、手術療法が第一選択であり、取り切ることができれば大腸がんは手術で治すことができます。
そんな時代に、大腸がんで亡くなる方も増えています。なぜでしょうか?
がんは手術で取り切れたとしてもがんが、
- 再発(大腸に)
- 転移(大腸以外の部位に)
することがあります。
また、がんが見つかった時には、その範囲が広く、がんを手術で取り切れない場合もあります。またがんがもう少し小さくなればがんを手術で取り切れるのに!というケースもあります。
こういった場合には、手術以外の治療が必要となります。それが
- 化学療法(抗がん剤治療)
- 放射線治療
といった治療です。
さらには、がんが取り切れた場合で、手術の後に再発を予防する目的で、化学療法(抗がん剤治療)を用いることがあります。これを
- 術後補助化学療法
と呼びます。
まとめますと、
- 大腸がんを取り切ったが、その後再発や転移をした場合。
- 大腸がんが見つかった時、取り切れないほど広がっていた場合。
- 大腸がんが見つかった時、もう少し小さくなれば取り切れるという場合。
- 大腸がんを手術で取りきったが、再発予防の補助療法を行う場合(術後補助化学療法)。
これらの場合に抗がん剤治療が必要となります。その抗がん剤治療ですが、
- 抗がん剤の種類はどのようなものがあるのか?
- 抗がん剤の治療期間はどのくらいか。
- 抗がん剤の副作用はあるのか?
- 入院が必要なのか。
これらを中心に今回はお話しします。
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大腸がんの抗がん剤は?種類は?
正常の細胞よりも、速い速度で分裂を繰り返すがん細胞を殺すものが抗がん剤です。
大腸がんでよく使われるよく使われる抗がん剤には以下のものがあります。
- 5-FU系抗がん剤
フルオロウラシル(5-FU):注射薬
テガフール・ウラシル配合剤(UFT):飲み薬
テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤(S-1):飲み薬
カペシタビン:飲み薬 - ホリナートカルシウム(ロイコボリン):飲み薬/注射薬
- イリノテカン:注射薬
- オキサリプラチン:注射薬
- トリフルリジン・チビラシン塩酸塩配合錠(TAS-102):飲み薬
このうち5-FU系抗がん剤が中心で、まずこの薬が投与されることが多いです。他の薬は、5-FU系の薬と併用して用いられることが多いです。
大腸がんの分子標的薬は?種類は?
がん細胞に比較的多く見られる目印を発見して、その目印になる細胞だけを特異的に攻撃するのが分子標的薬です。
大腸がんでよく使われる分子標的薬には以下のようなものがあります。この10年くらいで大きく進歩したのがこの分子標的薬です。
- ベバシズマブ(抗VEGF(血管内皮増殖因子)抗体薬):注射薬
- セツキシマブ(抗EGFR(上皮細胞増殖因子)抗体薬):注射薬
- バニツムマブ(抗EGFR(上皮細胞増殖因子)抗体薬):注射薬
- レゴラフェニブ:飲み薬
術後補助化学療法の目的は?適応は?
手術でがんを取り切った後に、目に見えないレベルでがん細胞が残っていることがあります。これらの残っているかもしれないがん細胞を叩いて、再発を防ぐ目的で行われる化学療法が、この術後補助化学療法です。
術後補助化学療法の対象は?
- ステージⅢ
- ステージⅡのうち再発する可能性が高いと考えられる場合。
逆に言えば、ステージ0、Ⅰ、Ⅱ(再発が低いと可能性が高い場合)は術後化学療法は行われません。
術後補助化学療法の治療期間は?
術後1-2か月を目安に開始し、原則6か月間行います。
通常は2-3週おきの外来通院で治療をすることができます。
術後化学療法の抗がん剤のメニューは
- 5-FU+LV療法
- UFT+LV療法
- カベシタビン療法
- FOLFOX療法
- CapeOX療法
と言ったものが代表的です。
転移や再発を起こした大腸がんの化学療法とは?
次に転移や再発をきたした場合の抗がん剤による化学療法を見ていきましょう。これには最初に述べたように
- 大腸がんを取り切ったが、その後再発や転移をした場合。
- 大腸がんが見つかった時、取り切れないほど広がっていた場合。
- 大腸がんが見つかった時、もう少し小さくなれば取り切れるという場合。
というケースがあるのでした。
1,2の場合、がんが大きくなるスピードを抑えて、元気で生活できる期間を少しでも長くする目的で化学療法が行われます。
一方で、3の場合、がんを小さくして、手術で取り切れる状態に持って行く目的で化学療法が行われます。
用いる治療薬の種類は?
転移や再発を起こした場合には以下の抗がん剤及び分子標的薬が用いられます。
- 5-FU系抗がん剤
- +オリサリプラチン(あるいはイリノテカン)
- +いずれか1つの分子標的薬
という3つの組み合わせです。これが最初に行われる治療(一次治療)として用いられます。
化学療法の流れは?治療法(レジメン)の調節は?変更はどうする?
転移・再発を来した場合、
- CTやMRI、時にFDG-PET検査を用いて病状の評価
- がん組織のRAS(読み方はラス)遺伝子検査
が行われます。
それらを評価して治療法を選択し、治療を開始していきます。
しばらく治療を続けた後で、治療効果の判定をします。使っている化学療法ががんに効いているかどうかをチェックするのです。
ここで効果ありだと判断した場合は、このまま今の治療を続行しますが、
- 治療効果が今一つである。
- 副作用などで続けることが難しい。
と判断した場合は、治療法(レジメン)を変更することを考えていきます。
RAS遺伝子とは?変異があると抗がん剤が効きにくい?
つまり、RAS遺伝子の変異の有無を見ます。
- RAS遺伝子に変異がない場合=野生型=抗がん剤が効きやすい。
- RAS遺伝子に変異がある場合=変異型=抗がん剤が効きにくい。
ということがわかるのです。
具体的には、RAS遺伝子に変異がある場合は、
- セツキシマブ
- バニツムマブ
といった抗がん剤が効きにくいということがわかっています。
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抗がん剤の副作用は?
抗がん剤はがん細胞だけではなく正常の細胞も同時に攻撃してしまうために、様々な形で体に副作用をもたらします。
副作用は抗がん剤を投与した直後〜数日後、あるいは数週間後に起こることがあります。
代表的な薬と副作用は以下の通りです。
FOLFOX療法の副作用は?
FOLFOX療法とは、5-FU、ロイコボリン、オキサリプラチンといった抗がん剤を組み合わせた治療法です。起こりやすい副作用としては
- 末梢神経障害(しびれや痛みなど)
- 白血球・好中球減少
- 貧血
- 血小板減少
- 吐き気・嘔吐
- 食欲不振
- アレルギー反応
- 血管痛
といったものが挙げられます。
FOLFIRI療法の副作用は?
FOLFIRI療法とは、5-FU、ロイコボリン、イリノテカンといった抗がん剤を組み合わせた治療法です。起こりやすい副作用としては
- 下痢
- 白血球・好中球減少
- 吐き気・嘔吐
- 食欲不振
- 脱毛
といったものが挙げあれます。
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最後に
大腸がんは早期でない場合は、手術で取りきれないことがあり、取りきれたとしても追加で抗がん剤による化学療法を行います。
つまり、大腸がん治療において抗がん剤は大きな役割を果たしています。
どのような場合に、化学療法の適応になるのか、またどのような種類があり、どれくらいの期間使うのかなどについてまとめました。
ぜひ参考になれば幸いです。