胆嚢炎はガイドラインによると、重症、中等症、軽症の3つに分類されます。
重症胆嚢炎は、他の胆嚢炎とどのように区別されるのでしょうか?
今回は重症胆嚢炎に分類される胆嚢炎をまとめました。
重症胆嚢炎とは?
重症胆嚢炎は
- 黄疸がある。
- 重篤な局所合併症がある。具体的には胆汁性腹膜炎、胆嚢周囲膿瘍、肝膿瘍。
- 胆嚢捻転、気腫性胆嚢炎、壊疽性胆嚢炎、化膿性胆嚢炎
これらのいずれかがある場合と定義されています。(胆嚢炎・胆管炎ガイドライン)
今回は中でも重要な、
- 壊疽性(えそせい)胆嚢炎
- 気腫性(きしゅせい)胆嚢炎
- 胆嚢穿孔(せんこう)
- 胆嚢捻転(ねんてん)
についてまとめました。
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壊疽性胆嚢炎とは?
胆嚢炎の炎症が進行すると、内部の圧力が高くなり、胆嚢の壁に十分に血液が行き届かなくなります。
すると、壁の一部が腐って、この状態を壊疽性胆嚢炎と呼びます。
普通の胆嚢炎と比較して、死亡率や合併症の頻度が高く、より重症であり、胆嚢炎ガイドラインにおいても重症胆嚢炎に分類されます。
通常の胆嚢炎の画像所見に加えて、
- 胆嚢壁の不整な輪郭、造影効果。あるいは造影効果の欠如。
- 胆嚢周囲に膿瘍形成。
といった所見を認めることがあります。
気腫性胆嚢炎とは?
胆嚢の壁の中に気腫、つまりガスを認める胆嚢炎のことです。
本来あるべきでないガスはどこから発生するかというと、ガス産生菌が感染することによります。
急性胆嚢炎の1%程度に見られ、当然通常の胆嚢炎よりは重症で、高率に胆嚢の壊死や穿孔をきたします。
糖尿病の人や心血管病変を有する人に多いと言われます。
通常の胆嚢炎の画像所見に加えて、
- 胆嚢壁内や胆嚢内にガス像を認める。
のが特徴的です。
胆嚢穿孔とは?
穿孔とは穴が開くことです。本来胆嚢の壁には穴が開いていません。(穴が開いていたら胆嚢内の胆汁がだだ漏れということになります。)
ところが、胆嚢の一部が腐ってくる壊疽性胆嚢炎では胆嚢壁が脆弱になり、穴があいてしまいます。これを胆嚢穿孔といい、急性胆嚢炎の5-10%に合併すると言われます。
穴が空くと感染した胆汁が漏れ出て、お腹の中(腹腔内)にばい菌がばらまかれることになります。
胆嚢の周囲に膿瘍を認めたり、腹膜炎を起こす原因となります。当然通常の胆嚢炎よりは重症化します。
通常の胆嚢炎の画像所見に加えて、
- 胆嚢周囲に膿瘍を認める。
- 腹膜炎を疑う脂肪織濃度上昇や腹膜の肥厚を認める。
といった所見を認めることになります。
胆嚢捻転とは?
捻転とはねじれる事で、つまりは胆嚢がねじれる事を胆嚢捻転と言います。
普段は胆嚢は肝臓に一部固定されていますので、回転したり、ねじれたりする事はありませんが、この固定が甘い遊走胆嚢と呼ばれる解剖学的変異がある場合、捻転をきたしやすいと言われます。
ねじれるとそこを走る血管もねじれてしまい、血流が途絶えると当然虚血から、壊死に陥りますので、非常に危険な状態ということができます。
通常の胆嚢炎の画像所見に加えて、
- 胆嚢腫大が著明。
- 胆嚢と肝床が離れている。
といった所見を認めることになります。
まとめ
重症胆嚢症に分類される特殊な胆嚢炎についてまとめました。
一概に胆嚢炎と言っても腹腔鏡下の手術で簡単に手術し、軽快するものから、今回のように重症化して、なかなか手術さえできないというケースもあります。
急性胆嚢炎は通常、待機的にでも手術をしますが、抗生物質などでダラダラ治療したり、手術を拒否したりして保存的に治療していると、悪化して、重症胆嚢炎に移行することもあるので注意が必要です。