消化管憩室(しょうかかんけいしつ)というと、先天性と後天性に分類され、Rokitansky・Zenker憩室・横隔膜上憩室・十二指腸憩室・大腸憩室などが後天性にあたります。
今回は、先天性であるメッケル(Meckel)憩室について
- 症状
- 診断
- 治療
をご説明したいと思います。
メッケル憩室とは?
母親のお腹の中にいる胎児期に、本来なら胎生7〜8週の間に閉鎖・消失(なくなる)はずのものが、卵管腸管の腸管だけがそのまま残って成長してしまうものが、メッケル憩室です。
その残った卵黄腸管は、一部が閉塞(読み方は「へいそく」・ふさがらなかった)せずに、腸間膜付着部(ちょうかんまくふちゃくぶ)の反対側に発生した真性憩室で腸管奇形です。
日本人の全人口の中でも2%程の人に確認できるとされ、その中でも約20%が、炎症・腸閉塞・下血などの症状があるという2の法則(2という数字が続くためこのような名前になった)があります。(日本小児科学会より)
メッケル憩室の症状は?
通常は無症状で、メッケル憩室があることも気づかずにいることがほとんどです。
ですが、出血・穿孔(せんこう)・メッケル憩室炎・腸重積・複雑性イレウスなどの合併症をともなうと、それぞれの症状が出現します。
- 腹痛
- 圧痛(お腹を押さえると痛む)
- 下痢
- 血便(下血)
- 嘔吐
- 腹部膨満
- 食欲不振
- 便秘
- 発熱
- ショック
などが起こりうる症状になります。
先天性の原因であり、生まれてから引き起こされるものではありませんが、このメッケル憩室には胃粘膜が存在し、胃酸によって潰瘍が起こるため、通常は5歳までに下血などの初回症状があらわれることがあります。
この出血には痛みをともなう前触れがなく、突然起こります。
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メッケル憩室の診断は?シンチグラフィは?CTは?
シンチグラフィ・血液検査・CT検査などをおこない診断します。
シンチグラフィ
放射性同位元素である99mTcO4(テクネチウムパーテクネート)を用いたシンチグラフィという検査で、異所性胃粘膜であるメッケル憩室の集積像が確認できます。
血液検査
憩室炎を起こしている場合には炎症反応が、出血や穿孔がある場合には貧血や白血球の上昇が確認できます。
CT検査
メッケル憩室がある部位、出血や穿孔、周囲への影響を確認できます。
メッケル憩室の治療は?
基本的に症状があるものに対して、内科的治療もしくは、外科的治療が選択されます。
内科的治療
メッケル憩室炎(炎症)・潰瘍がある場合・・・内科的治療がおこなわれます。
- 安静
- H2受容体拮抗薬
を選択し、回復を待ちます。
外科的治療
内科的治療をおこなっても効果のない場合、穿孔やイレウスなどの合併症がある場合・・・外科的治療がおこなわれます。
問題のある部分を切除する手術が選択されます。
参考文献:
病気がみえる vol.1:消化器 P190〜192
内科診断学 第2版 P524
新 病態生理できった内科学 8 消化器疾患 P122
最後に
- 胎児期の卵管腸管の腸管だけがそのまま残って成長してしまうものが、メッケル憩室
- 通常は無症状・胃酸によって潰瘍が起こると下血をともなう
- 合併症をともなえば、症状が出現する
- シンチグラフィで異所性胃粘膜であるメッケル憩室の集積像を確認できる
- 内科的治療・外科的治療が選択される
シンチグラフィをおこなってメッケル憩室と診断されなくても疑いが拭えない場合もあります。
その場合出血を認めれば、他の疾患も視野に入れつつ、その他の検査をおこなうことになります。