機能性消化管障害の1つである過敏性腸症候群。
日本人の成人15%にみられる大変頻度の高い疾患になります。
消化器症状を訴える人の中で最もこの病気が多いと言われています。
今回はこの過敏性腸症候群(英語表記で「Irritable bowel syndrome」略語で「IBS」)について
- 原因
- 症状
- 診断
- 治療
と徹底的にまとめました。
私の体験談も交えながらご説明しますので、ぜひ参考にされてください。
過敏性腸症候群とは?
腹痛や便通異常など様々な症状が出現するものの、原因となる器質性疾患が見つからない機能性疾患を過敏性腸症候群と言います。
つまり症状は出るのに、いくら調べても悪いところは見つからない、そのような状態です。
中には症状は繰り返すもののいくら検査しても異常が見つからないため、症状を繰り返し続け、診断だけが遅れていくこともあります。
では、この過敏性腸症候群はどうして起こるのでしょう?
次にご説明します。
過敏性腸症候群の原因は?
- 社会的要因
- 心理的要因
- 環境的要因
- 遺伝的要因
などが大きく関係すると言われています。
社会的要因
幼児期の恐怖体験(虐待やいじめなど)・生活上のストレスが関係すると言われています。
心理的要因
不安障害・抑うつなどが強く出ると症状があらわれやすいと言われています。
環境的要因
サルモネラ菌やカンピロバクターなどの感染性胃腸炎・腸内細菌の変化・食生活(脂質・刺激物・アルコール・カフェインなど)も関係します。
遺伝的要因
痛みに対する刺激量の低下・炎症に関与する遺伝子異常・セロトニントランスポーター(神経伝達物質)の遺伝子異常が関係します。
これらの要因が神経やホルモンを介し、脳に伝わり、脳と消化管の相互作用により症状があらわれるといわれています。
- 初対面の人に会う前
- 夫婦喧嘩の後
- 子供の病気中
- 大事な人の葬儀後
緊張・不安・ストレス・不眠などの心理状態が不安定になった時に強く症状があらわれます。
幼少期の虐待やいじめ等の経験はなかったものの、思い出すと全校集会や試験前や試験中は必ずと言っていいほど不安に陥り腹痛症状を起こしていた思い出もあります。
過敏性腸症候群の症状とは?
- 腹痛
- 排便異常(下痢・便秘)
- 悪心
- 心窩部痛
- 食欲不振
- めまい
- 疲労感
慢性的な腹痛や排便異常が主な症状となります。
排便異常では、下痢と便秘を繰り返すことも多くあります。
Bristol便形状尺度
1型になるにつれ水分量が少なく、7型になるにつれ水分量が多い特徴があります。
また、それにともない消化器以外の症状もともなうことがあり、体重減少・血便・発熱は起こりません。
そして電車やバス等の移動時にはさらなる不安も募り症状が出現しやすいことから、そのような予定のある日には朝食をとれずにいます。
私同様、20~40代の女性に多い特徴もあります。
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過敏性腸症候群の診断は?
症状を踏まえ様々な検査を行いますが、他の疾患の除外が重要です。
- 下部消化管内視鏡検査(胃カメラ)
- 造影検査(バリウム)
- 血液検査
これらを元に検査を行います。
RomeⅢ基準
そして診断にはRomeⅢ基準により、症状が6ヶ月以上前に出現し、受診した3ヶ月間の間に3日以上存在したことが条件となります。
- 排便すると症状が改善
- 排便頻度の変化から始まる
- 便の形状が変化することから始まる
これらの他に、
- 血便・体重減少・発熱・関節痛・腹部腫瘤などがない
- 50歳以上の発症でない
- 大腸器質的疾患の既往歴・家族歴がない
など、器質的疾患の除外も重要な診断基準となります。
過敏性腸症候群の治療は?
まずは患者の精神的不安を取り除くべく、過敏性腸症候群の説明がなされ、その上で
- 生活習慣の改善
- 薬物療法
- 心療内科的治療
を行うことになります。
薬物療法としては、便秘改善・下痢改善・腹痛改善・不安改善などに合った薬が選択されます。
しかし、症状を改善することも重要ですが、自分自身でセルフコントロールしていくことも大切です。
参考文献:
病気がみえる vol.1:消化器 P142〜145
消化器疾患ビジュアルブック P138〜140
新 病態生理できった内科学 8 消化器疾患 P96
最後に
- 腹痛や便通異常など様々な症状が出現するものの、原因となる器質性疾患が見つからない機能性疾患
- 社会的・心理的・環境的・遺伝的要因が関係し、脳と消化器の相互作用により起こる
- 腹痛や排便障害、その他身体的症状も出現する
- 他の疾患との除外が重要
- RomeⅢ基準に基づき診断
- 過敏性腸症候群の説明を受け、病気を理解することが重要
- 生活習慣の改善・薬物療法・心療内科的治療が選択される
自律神経と消化器はそれだけ脳を介して密に関係するということです。
ですが、しっかりこの病気のメカニズムを理解すると
「あっ、これはこのままじゃまた症状が出てしまう」
と自ら防御することが可能になってきます。
そういったセルフコントロールが何よりも重要というわけです。