上部消化管内視鏡(胃カメラ)を受けると、「バレット食道」と診断されることがあります。
イギリスの外科医にちなんで付けられたこのバレット食道ですが、主に逆流性食道炎が原因となり起こります。
問題なのは、このバレット食道が癌化することがあるということです。
今回は、このバレット(Barrett)食道について、どんなものなのかを含め
- 症状
- 検査
- 治療
などをわかりやすく説明していきたいと思います。
バレット食道とは?定義は?
食道下部は本来、扁平上皮という粘膜で、そして胃は円柱上皮という粘膜で覆われています。
バレット食道とは、食道下部の扁平上皮の一部が円柱上皮に置き換わったもので、主に逆流性食道炎が原因となります。
食道と胃の境目を超えて、胃の粘膜が食道へと広がった状態でもあります。
バレット食道は癌化することがある?
もともと物理的な刺激には強く、酸やペプシンには弱い状態だった食道粘膜ですが、バレット食道になると、酸やペプシンに強い形態と元々の状態とは異なった形成状態となります。
そうすると、酸やペプシン(消化酵素)の分泌量が変化し、潰瘍を作りやすい状態となってしまい、その部分が癌化しやすくなるといわれています。
バレット食道から発生する癌のことを、「バレット食道癌」と呼び、腺癌が多いのです。
ちなみに食道は扁平上皮ですので、通常の食道癌は扁平上皮癌です。
腺癌と食道癌を画像で区別することは難しいのですが、食道下部〜食道胃接合部付近の腫瘍を見たときには、このバレット食道癌(腺癌)も考える必要があります。
バレット食道の症状は?
胃酸の逆流による
- 胸焼け
- 胸痛
- 吐き気
- 嚥下障害
このような逆流性食道炎の症状をともなうこともありますが、半数以上は無症状といわれています。
原因は?
- 逆流性食道炎の合併症
- 慢性化した食道炎
- 食道裂孔ヘルニア
など胃酸の逆流によって、食道粘膜が敏感になり、炎症を繰り返すことで細胞が変化するといわれています。
逆流性食道炎を長きに渡って放置し、症状があらわれた時だけ対処薬を使用するだけで、根本的な治療を行なっていなかったことが原因とも考えられています。
しかし、どうしてそのことで細胞が変化するのかなど、詳しい原因については解明されていません。
バレット食道の検査は?画像は?
内視鏡によって、食道から胃までを観察します。
本来の扁平上皮に赤みのある円柱上皮が見られるとバレット食道を疑い、その部分の細胞を採取しさらなる病理検査をおこないます。
症例 60歳代男性
上のように上部消化管内視鏡(胃カメラ)において、食道下部のところで、バレット粘膜が上に上がってきている様子がわかります。これがバレット上皮です。
この症例では、隆起性病変をバレット粘膜に認めており、生検で腺癌と診断されました。(バレット食道癌)
バレット食道の治療は?
多くは放置で問題ありませんが、経過観察は必要です。
症状を有する場合は、基本的には内服治療で症状軽減を待ちますが、胃酸の逆流によって異形成が起こるとされるため、胃酸分泌抑制剤が使用されます。
これにより症状が軽減し変質がなくなることもありますが、完全にバレット食道が治ったわけではないため、癌化のリスクはあり、定期的な検査は必要となります。
しかし、バレット食道により食道が狭くなってしまい、嚥下障害をともなう場合には、拡張器による処置を行うこともあります。
また逆流防止手術として、食道の周囲で胃の底部を包み込む方法もあります。
通常胃の入り口(下部食道括約筋)は閉じているものですが、この胃の入り口の下部食道括約筋の閉まる圧力が弱くなることで、胃酸や胃内容物が逆流しやすくなります。
この方法は、運動検査で下部食道括約筋圧が持続的に不十分な状態で、食道体部の嬬動性収縮(収縮運動によって食道体部が収縮している状態)を示す患者には下部食道括約筋圧を高める効果があり、一般的な逆流防止処置に加えて有用です。
また、癌が見つかった場合は、癌の治療法に基づいて治療されます。
最後に
- 食道下部の粘膜が胃と同じ、円柱上皮に置き換わってしまった状態をバレット食道という
- 潰瘍を作りやすく、癌化しやすい状態となる
- 胃酸の逆流による逆流性食道炎症状を伴うこともあるが、無症状なこともある
- 逆流性食道炎や慢性化した食道炎、食道裂孔ヘルニアが原因と考えられるが、詳しいことは不明
- 内視鏡によってバレット食道所見を確認
- 基本的には胃酸分泌抑制剤が使われるが、癌化のリスクを下げるものではない
こんなことになるなら逆流性食道炎の治療をきちんと行なっていればよかった・・・という後悔も生まれますが、逆流性食道炎の治療じたい長期に渡った薬の服用と管理が必要となり、完治が難しいものでもあります。
まずは、食事や生活習慣を見直すことも重要です。
胃酸の逆流を少しでも防止するため、脂っこい食事や過度のアルコール摂取、喫煙には注意し、ほどよい運動を心がけましょう。