食道アカラシアになると、食べ物が飲み込みにくい、こみ上げてくる吐き気(嘔吐)といった嚥下障害が起こります。下部食道括約筋が緩みにくいという機能障害が起きるため、そのような症状が起こるのですが、放置していると症状は増悪します。
治療法としては、薬物療法・バルーン拡張術・経口内視鏡的筋層切開術・外科的手術という方法がありますが、原因不明の難病で10万人に1人という大変珍しい疾患でもあります。
では、食道アカラシアの場合、どのような食事に気をつけるべきなのでしょうか?また、手術をしたら症状は改善するのでしょうか?
今回は、食道アカラシアの場合の
- 食事
- 手術
- 予後
についてお話ししたいと思います。
食道アカラシアの場合の食事指導
食道アカラシア患者だからといって、病院で特別な食事指導を受けることはありません。それは何故かと言うと、決まったものを食べないようにと注意するよりも、食べれるものを少しでも多く食べれるようにということが大切だからです。
食道アカラシア患者は、食べれない、嘔吐してしまうといった症状があるため、体重減少が目立ちます。そうなると、栄養不足になったり、ひどくなると、無理に食べても就寝時にさえ、気付くと鼻や口から吐瀉物が・・・ということもあります。
- 少しでも飲み込みやすい物を食べる(柔らかいもの)
- ゆっくり時間をかけて食べる
- よく噛み砕きながら食べる
- 水分を多くとる
- 少なめの食事を回数を分けて摂る
- 食後すぐに横にならない
- 食後前かがみにならない
- 冷たいものを避ける
手術したら完治する?
内科的治療での完治は、なかなか難しいと言われています。理由としまして、原因不明の機能性障害なため、薬やバルーン等で、下部食道括約筋を緩ませ、食べ物の通りを良くしても、すぐに元に戻ってしまい、再発すると言われているからです。
食道アカラシアの手術は・・・
- Heller-Dor術・・・(筋層を切開し、噴門形成術を行い、狭窄を解消して逆流を防止する)
- 経口内視鏡的筋層切開術【POEM(Per-Oral Endoscopic Myotomy)】・・・(内視鏡を使い筋層を切開する)
という方法がありますが、これによって症状は改善します。(特に軽症であるほど、改善が期待できます。)ですが、食道運動機能障害が改善するわけではありません。
食道アカラシアの治療後は?
再発率の高い疾患でもあります。そのため、治療後は
- 食生活に気をつける(上記でご説明した内容)
- 定期的に受診
- 定期的な胃カメラを受ける
以上のことに注意しましょう。再発予防や再発した場合、症状がまた悪化してしまう前に早期発見、早期治療を行うためでもありますが、食道アカラシア患者は、そうでない人に比べると食道癌になるリスクも高いからです。
これは、内科的治療だけでなく、手術後も同様です。再発予防のため、合併症予防のために、食道に負担をかけないのが1番です。
最後に
- 食道アカラシアの場合の食事は、食べやすい物を少しずつ、よく噛んで食べ、水分を多く摂るように注意
- 手術によって症状は改善するが、食道運動機能障害が改善するわけではない
- 治療後は、再発防止に注意
- 定期的に検診を行い、リスクが高いとされる食道癌にも注意(早期発見・早期治療)
この食道アカラシアの手術を行い、症状から改善された方からは、今まであんなに苦しんでいたものが嘘のように感じ、もっと早くに治療をしておけば良かったという声をよく言われます。
それだけ長年に渡って苦しめられた症状は、我慢し続けても改善するどころか悪化するばかりなのです。症状を我慢するのではなく、症状が軽いうちにきちんとした診断をしてもらい、治療を開始することをお勧めします。