長年続く嚥下障害や胸痛や、ストレスを感じた時に悪化する症状。それが食道アカラシアの特徴でもありますが、その不快感から解放され、楽になりたい・・・また、重症化すると食道癌のリスクも高まり、怖い・・・そのためには治療が必要です。ですが、どんな場合に手術適用となるのかも気になるところです。
今回は、食道アカラシアの治療について徹底的にまとめました。
- 治療法
- 内科的治療
- 外科的治療
以上のことをお話ししていきます。
食道アカラシアの治療法とは?
- 内科的治療
- 外科的治療
運動機能が低下した食道自体を回復することは難しいですが、下部食道括約筋の圧がかかっていることで嚥下障害が起こるため、この下部食道括約筋の圧を緩め、嚥下障害をなくすことを目的とします。
内科的治療はどのような方法で行われる?
STEP①〜③というように、まずは薬物療法から効果を試し、効果が低かったり、再発を繰り返す場合は、別な方法を試みます。
STEP①薬物療法
まず、第一段階として内科的治療の中から、薬物療法を試します。胃の入り口を締め付けることで嚥下障害が起こるため、その締める力を弱める作用(下部食道括約筋の圧を低下する作用)のある薬を使用します。
しかし、デメリットとして、血圧低下などの副作用が見られることもあります。(元々血圧の低い方は服用出来ない)
使用される薬
- Ca拮抗薬
- 亜硝酸薬
- 芍薬甘草湯(漢方薬)
STEP②バルーン拡張術
薬物療法で効果が見られなかった場合、バルーン拡張術を検討します。
バルーン拡張術は、X線透視下で内視鏡的に下部食道でバルーンを膨らませます。バルーンを一定時間膨らませることにより、下部食道括約筋を伸展させ、通過改善を試みます。
しかし、効果が一定期間しか持たない、再発も多いというデメリットがあります。
症例 30歳代 女性
食道X線検査において、上の症例ほど典型的ではないが、下部食道に狭窄を認めています。上部消化管内視鏡(胃カメラ)で食道内に逆流があることも確認されました。
アカラシアに対してバルーン拡張術が施行されました。
STEP③経口内視鏡的筋層切開術
経口内視鏡的筋層切開術のことを略語でPOEM(Per-Oral Endoscopic Myotomyの頭文字)とも言います。内視鏡を使い、筋層を切開する方法で、外科的治療に比べると患者自身の負担が少なく、長い距離の筋層を切開することが可能です。
しかし、2016年現在、この治療を行える病院は国内で数施設と限られています。
食道アカラシアの手術とは?
内科的治療で効果がなかった場合に、外科的治療を検討します。
- Heller-Dor術
という手術を行うことになります。
一般的に腹腔鏡下で行います。
食道下部と噴門部に対して、狭窄を解消する目的で、筋層を切開する手術をHellerと言います。更に、噴門形成術を行い、胃食道逆流を防止する手術をDorと言い、これら2つを合わせた手術方法をHeller-Dor術と言います。
この手術により、狭窄を解消し逆流を防止することが可能となりますが、食道の拡張がひどく蛇行していると、手術による治療効果が少ない可能性もあり、その場合は食道切除を検討することになります。
最後に
- 下部食道括約筋の圧を緩め、嚥下障害をなくすことを目的とする治療を行う
- 内科的治療としては、薬物療法・バルーン拡張術・経口内視鏡的筋層切開術という方法がある
- 外科的治療としては、Heller-Dor術で狭窄を解消し逆流を防止する手術が行われる
手術は最終手段としての治療方法で、基本的に薬物療法で効果がなければ、バルーン拡張術を何度か行う治療法を選択することになります。1,2回で効果が見られなかった場合でも、回数を重ねると、効果が現れてくることもあります。