脳には様々な働きがありますが、脳の下方中心部にある脳幹にはどのような働きがあるのでしょうか?今回は脳幹について
- 部位の説明
- 働き
- 障害された際に起こる症状
をご説明したいと思います。
脳幹とは?
延髄・橋・中脳を合わせた、中枢神経系を構成する器官集合体を脳幹といいます。
脳幹の上部には大脳、下部には脊髄に繋がっており、背部には第四脳室を挟んで小脳があります。
そして、脳幹は神経の伝達路です。
中脳から
- 視神経
- 動眼神経
- 滑車神経
橋から
- 外転神経
- 三叉神経
- 顔面神経
- 聴神経
延髄から
- 舌咽神経
- 迷走神経
- 副神経
- 舌下神経
これだけの神経が脳幹を出入りしています。
脳幹の働きは?
脳幹は生命維持に欠かせない重要な働きを担っています。
免疫系・内分泌系・自律神経系・脊髄筋骨格系という系統全てに関与する機能があります。
- 呼吸の調整
- 血液(血圧・血流・心拍数・血糖)の調整
- 体温や体内水分の調整
- ホルモンの内分泌調整機能
- 毒素(便・尿・汗・目やに)の排出調整
- 食欲・睡眠・性欲などの本能行動の調整
- 学習、集中、記憶や精神状態に関与
- 運動神経の調整(バランス・歩行感覚・重心維持機能)
- 知覚神経の働きを持つ脳神経の司令塔
- 自律神経の調整
- 全身の筋肉の調整
- 摂食、発音、呼吸と循環(心臓の働き)の調整
- メンタルの調整(怒りや恐れ・ストレスなどの情動行動)
このような働きがあります。
脳幹が障害された時に起こりうる症状は?
脳幹の障害として、上記の働きが阻害される症状も出現しますが、以下のような症候群が起こりうる可能性があります。
- Weber (ウェーバー)症候群
- Benedikt (ベネディクト)症候群
- Parinaud (パリノー)症候群
- MLF 症候群
- Locked-in 症候群(ロックトイン・シンドローム)
- Horner (ホーナー)症候群
- Millard-Gubler(ミヤール・ギュブレール)症候群
- Wallenberg (ワレンベルグ)症候群
- Dejerine 症候群
Weber (ウェーバー)症候群
中脳の大脳脚の障害で、中脳腹側症候群とも呼ばれます。
- 動眼神経麻痺
- 対側半身不全片麻痺
Benedikt (ベネディクト)症候群
中脳の赤核の障害で
- 病側の動眼神経麻痺
- 対側の不随意運動(上下肢末端の振戦)
- 不完全麻痺
Parinaud (パリノー)症候群
中脳の四丘体、後交連など上部中脳背側の障害で
- 垂直注視麻痺(上や下を向けない)
- 輻輳麻痺
- 対光反射消失
MLF 症候群
橋の内側縦束の障害で
- 病側の眼球の眼球内転障害
- 健側の外転時の眼振(輻輳の際、内転は可能)
Locked-in 症候群(ロックトイン・シンドローム)
橋の橋腹側と延髄の障害で、閉じ込め症候群とも呼ばれます。
- 全身(四股)の運動麻痺(意識清明で垂直眼球運動可能)
Horner (ホーナー)症候群
延髄の交感神経の麻痺で
- 縮瞳 (瞳孔散瞳麻痺)
- 軽度の眼瞼下垂
- 眼球陥没
- 顔面や結膜の血管拡張
- 発汗障害
Millard-Gubler(ミヤール・ギュブレール)症候群
橋の皮質脊髄路の障害で、橋下部腹側症候群とも呼ばれます。
- 病側の外転神経麻痺
- 顔面神経麻痺
- 対側の片麻痺
Wallenberg (ワレンベルグ)症候群
延髄外側の障害で、延髄外側症候群とも呼ばれます。
- 病側の顔面温痛障害
- Honner症候群
- 眼振や目眩
- 小脳失調
- 球麻痺
- 対側の頸から下の温痛覚障害
Dejerine 症候群
延髄正中部の障害で、延髄傍正中症候群とも呼ばれます。
- 対側運動麻痺
- 対側深部感覚、触覚障害
- 同側舌下神経麻痺
最後に
- 延髄・橋・中脳を合わせた、中枢神経系を構成する器官集合体を脳幹と言う
- 脳幹は神経の伝達路
- 生命維持に欠かせない重要な働きを担っている
- 免疫系・内分泌系・自律神経系・脊髄筋骨格系という系統全てに関与する機能
- 障害部位によって多彩な症状を呈する
様々な脳疾患で、脳幹にまで障害が及んだ場合、生命予後が深刻と言われることが多くありますが、それだけ脳幹には様々な神経が入り組み、生命維持に重要な働きをしているというわけです。