神経鞘腫とは?がんではない?原因・症状・診断(MRI)と治療法のまとめ

脳腫瘍にも様々な種類がありますが、原発性脳腫瘍の約1割を占めるとされるのが神経鞘腫(読み方は「しんけいしょうしゅ」英語表記でSchwannoma(シュワノーマ))というものがあります。

今回は、この神経鞘腫について

  • 原因
  • 症状
  • 診断
  • 治療法

をご説明したいと思います。受診の目安や、よくある疑問にも触れます。

神経鞘腫って、がんなの?

神経をつつむ細胞からできる、ほとんどが良性の腫瘍です。耳の神経にできる聴神経鞘腫がよく知られていますよ。

先に結論

  • 神経鞘腫は、神経をつつむシュワン細胞から生じる良性の腫瘍で、がん(悪性腫瘍)ではありません。
  • 頭蓋内では、耳の神経(前庭神経)にできる聴神経鞘腫が大多数を占めます。
  • 片側の耳鳴り・難聴が最初のサインになることが多く、診断は造影MRIと聴力検査で行います。
  • 小さく症状のない場合は経過観察、大きくなる・症状が出る場合は手術や定位放射線治療を検討します。
  • 何科: 脳神経外科、または耳鼻咽喉科。片側の聞こえが急に悪くなったときは早めに受診してください。

神経鞘腫とは?

末梢神経Schwann細胞由来の被膜を有する良性腫瘍です。

聴神経(内耳神経)から発生する聴神経鞘腫が最も多く、頭蓋内の神経鞘腫の大多数を占めます。なお、実際には内耳神経のうち前庭神経から発生することがほとんどです。

聴神経(内耳神経)の他には、三叉神経や顔面神経などから発症することもあります。

好発年齢

40~60歳代の人に好発し、やや女性に多い傾向があります。

神経鞘腫の原因は?

腫瘍発生原因は不明です。

しかし、通常片側のみに発生する神経鞘腫が両側に発生する場合は、神経線維腫症2型(NF2)の症状として現れます。そして、その神経線維腫症2型は常染色体顕性(優性)遺伝の疾患です。

神経線維腫症1型の症状や診断基準は、神経線維腫症1型(NF-1)とは?症状・診断基準・原因・治療法をわかりやすくでまとめています。

神経鞘腫の症状は?

  • 耳鳴り
  • 難聴
  • 角膜反射消失
  • めまい
  • 顔面麻痺
  • 運動失調
  • 頭蓋内圧亢進症状
  • 水頭症

初発症状として耳鳴りや難聴などの蝸牛神経症状(かぎゅうしんけいしょうじょう)が典型的です。

そして、腫瘍拡大と共に、周囲を圧迫するために角膜反射消失やめまい、顔面麻痺などを呈するようになります。

進行すると更に、運動失調などの小脳症状や頭蓋内圧亢進症状、水頭症が見られるようになります。

医師
障害神経と症状は以下のようになります。

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症状 障害神経
角膜反射消失 三叉神経
Bruns眼振(ブルンズ)・目眩 前庭神経
高音域難聴・耳鳴り 蝸牛神経
顔面神経麻痺 顔面神経

片耳の聞こえを気にする女性のイラスト

顔面神経麻痺の原因と受診先は、顔面神経麻痺の原因と治療は?ストレスとの関係・何科を受診するかも解説で解説しています。

神経鞘腫の診断は?

CTやMRI、聴力検査やカロリックテスト、聴性脳幹反応(ABR)などを行い診断します。

医師
それぞれについてご説明します。

CT

腫瘍は低~等吸収域で、造影CTでは、比較的均一な高吸収域を示します。また、高い確率で内耳道の拡大を認めます。

MRI

T1強調像で低信号、T2強調像で高信号を呈します。ガドリニウム造影で著明に増強されます。

症例:56歳女性

右耳聴力低下と歩行障害を訴え来院。

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(出典:医師国家試験110D36)

頭部の造影MRIにおいて右の小脳橋角部に嚢胞性変化を伴った腫瘤性病変あり。腫瘤は壁を中心に著明な造影効果を認めています。右聴神経腫瘍を疑う所見です。

聴力検査

純音聴力検査(PTA)で聴力低下を確認でき、語音明瞭度検査(SDS)で明瞭度低下が見られます。

カロリックテスト

温度眼振テストとも言いますが、温度刺激検査で、外耳道に冷水と温水を注入し、三半規管を刺激。人工的に目眩を起こさせる方法で、この時の眼振を確認して左右の前庭機能を比較する検査です。

温水の場合は注入した方向に、冷水の場合は逆側に向かって眼振が確認できますが、神経鞘腫の場合、この検査で眼振の低下や消失が早期の段階から確認できます。

聴性脳幹反応

略してABRとも言います。頭に電極とヘッドホンを付け、ベッド上安静状態で、聴覚神経系を刺激して得られる脳幹部での電位を頭皮上で記録し、波形の状態によって異常部位を判断する検査で、患側のⅠ~Ⅴ波の潜時延長を確認できます。

神経鞘腫の診断に使う検査と分かることの表

神経鞘腫の治療法は?

外科的手術で腫瘍全摘出を目指します。手術により顔面神経麻痺を合併しやすいため、神経モニターを使用して手術を行うなど、聴神経と隣接する顔面神経の温存が重要になります。

腫瘍があまり大きくない場合や手術で取り残した腫瘍に対しては放射線療法として、定位照射を考慮します。また、小さく症状のない場合は、定期的なMRIと聴力検査で経過をみる保存療法を行うこともあります。どの方法が適するかは、腫瘍の大きさ・増大の速さ・聴力・年齢などをふまえて専門医が相談して決めます。

同じく経過観察になることが多い良性の脳腫瘍として、髄膜腫の手術適応は?経過観察の目安・症状・CT/MRI画像・再発まとめもご覧ください。

よくある疑問

Q. 神経鞘腫はがんですか。
A. ほとんどが良性の腫瘍で、がんとは異なります。ただし大きくなると脳幹や小脳を圧迫するため、経過をみる場合も定期的な検査が大切です。

Q. 耳鳴りや難聴があれば神経鞘腫でしょうか。
A. 耳鳴りや難聴の原因の多くは別の病気です。ただ、片側だけの耳鳴りや難聴が続く場合は、聴力検査とMRIで確認する価値があります。

Q. 脳ドックで見つかったらどうすればよいですか。
A. 症状がなければすぐに治療とは限りません。脳神経外科で大きさや聴力を確認し、経過観察か治療かを相談します。

Q. 治療後に聞こえは戻りますか。
A. 聴力が保たれるかは、腫瘍の大きさや治療法で異なります。治療前の聴力が大切になるため、担当医とよく相談してください。

気になる症状や検査結果があれば、医療機関に相談してください。

最後に

  • 聴神経(内耳神経)から発生するものが最も多い
  • 末梢神経Schwann細胞由来の皮膜を有する良性腫瘍
  • 腫瘍発生原因は不明
  • 耳鳴りや難聴などの蝸牛神経症状が初期症状として現れる
  • 腫瘍拡大と共に様々な症状が現れる
  • CTやMRI、聴力検査やカロリックテスト、聴性脳幹反応(ABR)などを行い診断
  • 腫瘍全摘出が目標(小さく無症状なら経過観察や放射線治療も選択肢)

 

脳ドック等で見つかることもあり、良性腫瘍で、悪性腫瘍に変わることはごくまれなため、症状がなければ手術が必要とは限りませんが、腫瘍拡大と共に症状が出てくる前に治療を行うのも1つの方法です。