前頭側頭型認知症(FTD)とは?症状・診断・治療、アルツハイマーとの違い

認知症には、原因となる病気が数多くあります。

その中で患者数の多いものでアルツハイマー型認知症・脳血管認知症・Lewy小体型認知症などがありますが・・・

今回は認知症の原因となる前頭側頭型認知症について

  • 症状
  • 原因
  • 診断
  • 治療法

をご説明したいと思います。

前頭側頭型認知症って、アルツハイマーとどうちがうの?

もの忘れよりも、性格の変化や、がまんがきかなくなるなどの行動の変化が先に目立つのが特徴ですよ。

先に結論

  • 前頭側頭型認知症(FTD)は、脳の前頭葉と側頭葉が縮んで起こる認知症で、もの忘れより性格・行動の変化が先に目立つのが特徴です。
  • 初期には、意欲の低下、社会的なルールを守れなくなる、同じ行動を繰り返す、食べ物の好みの変化などがみられます。
  • 65歳未満の若年性認知症としても比較的多く、男女差は目立ちません。
  • 診断はMRI・CT、SPECTやPET、神経心理検査で行い、根本的な治療法はありません。
  • 症状をやわらげる薬と、環境調整・ケアが中心です。何科: 精神科・神経内科(脳神経内科)、もの忘れ外来。

前頭側頭型認知症とは?

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前頭側頭型認知症とは前頭側頭葉変性症(FTLD)の中の一つで、早期に見られる人格変化や異常行動を特徴とした認知症です。

前頭葉や側頭葉に萎縮性の病変を認める症候群で、臨床的には

  • 行動障害型前頭側頭型認知症(Pick病を含む)
  • 意味性認知症(言葉の意味が分からなくなる)
  • 進行性非流暢性失語(言葉が出にくくなる)

などに分けられ、運動ニューロン疾患(ALS)を合併するものもあります(Rascovsky 2011)。

他の認知症に比べ、発生に男女差がなく、高齢者だけでなく64歳以下の若年性にも発症することの多いもので、認知症全体では多くはありませんが、若年性認知症では比較的多い病気です。

では、どのような症状が現れるのか詳しくご説明しましょう。

前頭側頭型認知症の症状は?

医師
初期に出る症状、中期に出る症状、後期に出る症状と分けてご説明します。

初期に出る症状

  • 自発性の低下
  • 自発語の減少
  • 感情鈍麻
  • 偏食
  • 過食
  • 脱抑制
  • 人格変化
  • 行動異常

無関心、無気力などの意欲の欠如、自発性の低下が現れ、感情の変化に乏しくなります。また、本能のおもむくままにに行動するため、自制心や周りの声が届かず、社会性を無視した人格変化が起こります。

中期に出る症状

  • 常同行動
  • 考え無精
  • 反復言語
  • 滞続言語
  • 暴力行動

決まった行動を繰り返す常同行動が見られます。そして、初期の人格変化が更に悪化し、善悪の判断がつかなくなり、暴力や、社会的に不適切な行動がみられるようにもなります。また、相手の動作や言葉を真似する模倣行動やおうむ返しが見られるようになります。

後期に出る症状

  • 無動
  • 無言

精神機能の荒廃が高度になり、寝たきりの状態となります。

前頭側頭型認知症の症状の経過を示した表

前頭側頭型認知症の原因は?

前頭葉から側頭葉にかけて神経細胞が失われて脳が萎縮し、機能が低下してしまうことが原因です。Pick病では、異常な構造物であるピック球が神経細胞内にみられます。この他にも、タウやTDP-43などの異常なたんぱく質がたまるタイプがあり、一部には遺伝子の変化が関わる家系もあります。

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前頭葉には感情や意思計画、運動言語に関係する神経があり、側頭葉には記憶や判断力、味覚や聴覚といったことに関係する神経があるため、そこが障害されることによって人間らしさを失ってしまったような症状が見られるようになります。

前頭葉と側頭葉を示した脳のイラスト

前頭葉の働きと障害されたときの症状は、前頭葉の働きと障害で起こる症状は?前頭連合野・運動野の機能を解説で解説しています。

前頭側頭型認知症の診断は?

臨床症状に加え、MRIやCT、SPECT、PETや神経心理検査を行い診断します。

医師
それぞれの検査では以下のようなことが分かります。

MRI・CT

前頭葉、側頭葉の萎縮が特徴的です。

SPECT

前頭葉、側頭葉の血流低下が確認できます。比較的早期の場合や、脳の萎縮が目立たない時にはSPECTで検査を行うことによって診断の重要なポイントになります。

PET

前頭葉、側頭葉のブドウ糖代謝低下が見られます。

神経心理検査

前頭葉機能低下を示します。

前頭葉、側頭葉に異常が見られることをこれらの検査で確認することが、他の認知症との鑑別となります。

MRIやSPECTでわかることは、認知症の画像診断は?MRIと脳血流SPECTでわかることは?でまとめています。

脳の萎縮が見つかったときの考え方は、脳萎縮とは?加齢との違い、症状・原因とCT・MRI画像の見方、受診の目安で紹介しています。

前頭側頭型認知症の治療法は?

根本的な治療法はありません。対症療法として薬物療法が中心です。異常行動などに対し、抗うつ薬(SSRI)などが試されることがありますが、効果は限られ、この病気そのものに対して認められた治療薬はありません。薬の選び方は専門医が判断します。アルツハイマー型認知症の薬が合わないこともあるため、診断を確かめてから薬を決めることが大切です。

常同行動に対して、うまくそれを利用し、周りの家族がそれを生活パターンに取り入れる環境調整などを行ったりすることで、患者の精神安定を計ることが介護のポイントでもあります。

また、万引きなど社会的に問題となる行動がみられた場合でも、病気の症状であることを周囲が理解し、医療・介護・地域の相談窓口と連携することが大切です。

よくある疑問

Q. アルツハイマー型認知症とどう違いますか。
A. アルツハイマー型ではもの忘れが先に目立ちますが、FTDでは性格の変化や行動の変化、言葉の障害が先に出ることが多く、初期の記憶は保たれていることもあります。

Q. 家族が気づいた場合、何科に相談すればよいですか。
A. 精神科、神経内科(脳神経内科)、もの忘れ外来が目安です。まずはかかりつけ医に相談して紹介を受けることもできます。若年の場合は、地域の若年性認知症の相談窓口も利用できます。

Q. 公的な支援はありますか。
A. 前頭側頭葉変性症は、国の指定難病の対象とされています。医療費助成や介護保険などの制度が使える場合があるため、主治医や自治体の窓口に確認してください。

気になる症状や検査結果があれば、医療機関に相談してください。

最後に

  • 64歳以下の若年性にも多い認知症
  • 初期の段階から人格変化や行動異常が現れる
  • 社会性を無視した行動が見られ、後期になると意欲がなくなり寝たきりになる
  • 臨床症状に加え、前頭葉、側頭葉の萎縮や血流低下から診断する
  • 根治療法はなく、対処療法やケアが中心

 

若年性にも多いことから、周りが認知症と気づかずに、本人の行動が問題視されてしまうことがあります。

今までと人格が変わったようにある点や、過食や偏食、自発性の低下から周りの家族が「おかしい」と気づくことが前頭側頭型認知症の早期発見にもつながり、本人と家族が早めに支援を受けることにもつながります。

参考文献:
Rascovsky K, et al. Sensitivity of revised diagnostic criteria for the behavioural variant of frontotemporal dementia. Brain 2011. PubMed