認知症には約70ほどの種類があると言われています。
その中で患者数の多いものでアルツハイマー型認知症・脳血管認知症・Lewy小体型認知症などがありますが・・・
今回は認知症の原因となる前頭側頭型認知症について
- 症状
- 原因
- 診断
- 治療法
をご説明したいと思います。
前頭側頭型認知症とは?
前頭側頭型認知症とは前頭側頭変性症(FTLD)の中の一つで、早期に見られる人格変化や異常行動を特徴とした認知症です。
前頭葉や側頭葉に萎縮性の病変を認める症候群で、さらに
- 前頭側頭葉変性症
- Pick病(ピック)
- 運動ニューロン型
に分類されます。
他の認知症に比べ、発生に男女差がなく、老年性だけに関わらず64歳以下の若年性にも発症することの多いもので、認知症の中で約7%を占めると言われています。
では、どのような症状が現れるのか詳しくご説明しましょう。
前頭側頭型認知症の症状は?
初期に出る症状
- 自発性の低下
- 自発語の減少
- 感情鈍麻
- 偏食
- 過食
- 脱抑制
- 人格変化
- 行動異常
無関心、無気力などの意欲の欠如、自発性の低下が現れ、感情の変化に乏しくなります。また、本能のおもむくままにに行動するため、自制心や周りの声が届かず、社会性を無視した人格変化が起こります。
中期に出る症状
- 常同行動
- 考え無精
- 反復言語
- 滞続言語
- 暴力行動
決まった行動を繰り返す常同行動が見られます。そして、初期の人格変化が更に悪化し、善悪の判断がつかなくなり、暴力行動や痴漢、放尿などをするようにもなります。また、相手の動作や言葉を真似する模倣行動やおうむ返しが見られるようになります。
後期に出る症状
- 無動
- 無言
精神機能の荒廃が高度になり、寝たきりの状態となります。
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前頭側型認知症の原因は?
Pick病の場合、異常な構造物であるピック球が大脳に発生し、前頭葉から側頭葉にかけて脳が萎縮し機能が低下してしまうことが原因です。
前頭葉には感情や意思計画、運動言語に関係する神経があり、側頭葉には記憶や判断力、味覚や聴覚といったことに関係する神経があるため、そこが障害されることによって人間らしさを失ってしまったような症状が見られるようになります。
前頭側型認知症の診断は?
臨床症状に加え、MRIやCT、SPECT、PETや神経心理検査を行い診断します。
MRI・CT
前頭葉、側頭葉の萎縮が特徴的です。
SPECT
前頭葉、側頭葉の血流低下が確認できます。比較的早期の場合や、脳の萎縮が目立たない時にはSPECTで検査を行うことによって診断の重要なポイントになります。
PET
前頭葉、側頭葉のブドウ糖代謝低下が見られます。
神経心理検査
前頭葉機能低下を示します。
前頭葉、側頭葉に異常が見られることをこれらの検査で確認することが、他の認知症との鑑別となります。
前頭側型認知症の治療法は?
根本的な治療法はありません。対処療法として薬物療法が中心です。異常行動に対し、抗うつ薬(SSRI)を使った薬物療法が有効です。
常同行動に対して、うまくそれを利用し、周りの家族がそれを生活パターンに取り入れる環境調整などを行ったりすることで、患者の精神安定を計ることが介護のポイントでもあります。
また、反社会的異常行動に対して、未然に犯罪を防ぐ家族のケアも大切になってきます。
最後に
- 64歳以下の若年性にも多い認知症
- 初期の段階から人格変化や行動異常が現れる
- 社会性を無視した行動が見られ、後期になると全ての意欲がなくなり寝たきりになる
- 臨床症状に加え、前頭葉、側頭葉の萎縮や血流低下から診断する
- 根治療法はなく、対処療法やケアが中心
若年性にも多いことから、周りが認知症と気づかずに反社会的異常行動が犯罪につながることも多くあります。
今までと人格が変わったようにある点や、過食や偏食、自発性の低下から周りの家族が「おかしい」と気づくことが前頭側型認知症の早期発見にもつながり、犯罪を未然に防ぐことにもつながります。