映画やドラマになった「1リットルの涙」でも話題となった、脊髄小脳変性症(SCD)という難病に指定される病気があります。
この映画やドラマを見て、いつ誰がなるか分からない・・・そんな怖さを感じた人は多いのではないでしょうか?
脊髄小脳変性症は、遺伝性と孤発性に分けられますが、今回は孤発性に分類される多系統萎縮症(英語表記で「Multiplesystematrophy」略語で「MSA」)について
- 症状
- 診断
- 治療法
を分かりやすくご説明したいと思います。
多系統萎縮症とは?
多系統の神経系の障害が進行していく、神経変性症候群です。
脊髄小脳変性症の中の孤発性に分類する、
- 自律神経症状
- 小脳症状
- パーキソニズム症状
からなる疾患で、多系統萎縮症は更に3つの概念に分類されます。
関連記事)脊髄小脳変性症(SCD)の症状や原因、治療法のまとめ
多系統萎縮症の分類と症状は?
脊髄小脳変性症の中でも孤発性に分類される多系統萎縮症は、
- C-MSA(小脳失調型多系統萎縮症)
- P-MSA(パーキンソン病主体の多系統萎縮症)
- Shy-Drager症候群(SDS)
とに分けられます。
C-MSA(小脳失調型多系統萎縮症)
- 小脳性構音障害
- 失調性歩行
- 体幹失調
- 四股の協調運動障害
まず初めに小脳症状が出現し→進行するにつれパーキソニズム・自律神経症状が現れます。
脊髄小脳変性症の中でも日本人に最も多いもので、好発年齢は30~60代です。
別名オリーブ橋小脳萎縮症(OPCA)とも呼ばれます。
P-MSA(パーキンソン病主体の多系統萎縮症)
- 動作緩慢
- 筋強剛
- 小刻み歩行
初期症状としてパーキソニズムが現れ、進行すると小脳症状や自律神経症状が出現します。
発症から1~5年後にパーキンソン様症状が現れます。
こちらは欧米人に最も多いもので、日本人の場合、好発年齢は50~70代です。
別名線条体黒質変性症(SND)とも呼ばれます。
Shy-Drager症候群
- 起立性低血圧
- 食事性低血圧
- 排尿障害
- 便秘
- 勃起障害
- 発汗障害
- 無汗症
- Horner症候群
自律神経症状主体で、進行すると小脳症状やパーキソニズムも現れます。
好発年齢は40~60代です。
また、上記以外に突然死の原因ともなる睡眠時無呼吸障害も症状として現れることがあり、甲高いいびきが特徴で本人は無自覚なので、家族が注意してこの症状を見逃さないようにしなくてはいけません。
これらの3つの疾患には共通して、病変部のグリア細胞内などに封入体が見られることが最近明らかになりました。
そのため、この3疾患は多系統萎縮症という概念で統一されることになりました。
多系統萎縮症の診断は?
診断には臨床症候、CTやMRIが有効です。
C-MSA(小脳失調型多系統萎縮症)
小脳橋底部や中小脳脚の萎縮が見られます。
橋横走線維変性を反映した逆T字状または十字状のT2強調像高信号化が確認できます。また、中小脳脚の高信号化も認めます。
症例 C-MSA MRI画像
P-MSA(パーキンソン病主体の多系統萎縮症)
被殻の外側凸な突出が萎縮して直線状に見えます。
また、同部での進行した鉄沈着も目立ちます。
病初期はパーキンソン症状に左右差があり、それに対応して線条体の萎縮や異常信号にも左右差を認めることが多くあります。
Shy-Drager症候群
C-MSA、P-MSAと同様の所見を様々な程度に合併します。
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多系統萎縮症の治療方法は?
3疾患とも根治療法が未だ解明しておりません。
そのため、対処療法が一般的です。
- 小脳症状に対しては、酒石酸プロチレリン(TRH製剤)・タルチレリン水和物(TRH誘導体)
- パーキソニズムに対し、L-dopa・・・反応性は低いものの早期には有効なこともある
- 自律神経症状に対しては、塩酸ミドドリンが起立性低血圧に使用され、排尿障害に対しα遮断薬
多系統萎縮症の看護は?
小脳症状が出現すると、体感失調などが出現することもある為、リハビリをおこなう中でも転倒防止に注意する必要があります。
リハビリをおこなうことで不自由さにも徐々に慣れてきますので、焦らずゆっくりとした患者のスピードに合わせることも重要です。
また多発性萎縮症は、声帯外転麻痺などにより突然死の原因ともなる、睡眠時無呼吸障害になる可能性もある為、睡眠時の甲高い金属音のようないびきには注意しましょう。
参考文献:病気がみえる vol.1:消化器 P292〜299
参考文献:全部見える 脳・神経疾患―スーパービジュアル 徹底図解でまるごとわかる! P209〜212
参考文献:内科診断学 第2版 P1059〜1062
参考文献:脳神経外科疾患別看護マニュアル P151・152
最後に
- C-MSA・P-MSA・Shy-Drager症候群は、多系統萎縮症という概念で統一
- C-MSAはオリーブ橋小脳萎縮症とも呼ばれ、小脳症状が初期症状としてあり、次いでパーキソニズム症状、自律神経症状が出る
- P-MSAは線条体黒質変性症とも呼ばれ、パーキソニズム症状が初期に現れ、小脳症状、自律神経症状が出る
- Shy-Dragerは自律神経症状を初発症状とし、進行するにつれ小脳症状やパーキソニズム症状が出る
- 診断は、症候症状・CT・MRI
- 根治療法はなく、症状に合わせた対処療法が一般的
発症から寝たきりになるまで5~10年と言われています。
1日も早く治療法が見つかり、この病気で苦しむ人が救われますように。