三叉神経痛といって突然激しい痛みが顔に現れる疾患があります。
顔面神経麻痺とは異なり、痛みが主となると
「この痛みの原因は何なのか?」
と気になりますよね。
顔に痛みが現れた場合、外傷がなければ、脳の問題なのか、神経系の問題なのかというのが頭をよぎるかと思います。
そこで今回は、顔面に痛みがあらわれる三叉神経痛(読み方は「さんさしんけいつう」英語表記で「trigeminal neuralgia])について・・・
- 原因
- 症状
- 診断
- 治療法
を徹底的にまとめました。
三叉神経痛とは?
三叉神経痛は主にV1よりも、V2とV3領域に現れることの多い反復する電撃痛が出る症候群です。
三叉神経痛には、突発性(突然起こる)と症候性(2次性・症状が出ている時にあらわれる)のものがあります。
人間の顔は
- 顔神経(V1)
- 上顎神経(V2)
- 下顎神経(V3)
と3つの顔の感覚(痛い・冷たい・温かい・痒い・触られた・・・など)や咀嚼筋(読み方は「そしゃくきん」・意味は「開口運動に関わる筋」)の運動を司る神経に分かれます。
この3つの神経は、下のイラストを見ても分かるように、脳幹から3つの枝に分かれて様々な神経へと繋がっています。
またこの三叉神経痛は比較的女性に多く、その中でも40〜60代の人に多い傾向です。
三叉神経痛の原因は?
症候性三叉神経痛の場合、多発性硬化症・脳腫瘍・脳血管障害・歯肉炎などが原因となります。
つまり、それらの原因から血管が神経を圧迫して起こるものです。
中でも原因として1番多いのは、脳幹から出た三叉神経の根本(root entry zone(REZ:脳幹部より出たところ))である神経を脳動脈が圧迫することによって起こるものです。
脳動脈は血液が循環しているため、脈打つドンドンといった動きがあり、それによって神経にビリッビリッと電流のような痛みが起こります。
このように血管が神経を圧排することによって脳神経の過剰症状が起こってしまうことは、三叉神経の他に、
- 顔面神経
- 舌咽神経
でも起こることがあり、総称して、神経血管圧迫症候群と呼ばれます。
上記の原因で起こるものは、三叉神経痛の中でも症候性にあたりますが、それ以外に突発性の場合、以下のような誘因で起こることもあります。
三叉神経痛を起こす誘因
- 洗顔
- 歯磨き
- 食事
- 会話
- 冷たい風・・・など
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三叉神経痛の症状は?
この痛みが顔の片側に起こり、そして上記でご説明しましたように、V2、V3領域に起こることが多く
- 「ピリッ」と刺すように痛む
- 「ビリビリ」と電流が走るような痛み
などと表現する患者さんが多くいらっしゃいます。
その痛みは長く続くわけではなく、数秒から数十秒といった短い間隔の痛みが反復して起こるのが特徴です。
以下のような痛みを訴える患者さんもいます。
- 咀嚼(そしゃく)すると痛い
- 冷たい風邪に当たると痛い
- 洗顔すると痛い
- 特定の歯の周囲が痛い
- 小鼻の横など特定の場所が痛い
など、原因の部位によって症状は異なりますが、一瞬起こる痛みが反復して起こります。
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三叉神経痛の診断方法は?
触覚と痛覚を調べる検査を実際に顔を触って行い、CTもしくはMRIによって神経を圧排している構造物の有無については画像診断を行います。
触覚と痛覚を調べる検査
額・頰・顎の左右同じ位置をティッシュペーパーなどで触り、左右差を見る方法です。
また、痛覚検査の場合は、つまようじなどで少し刺激を与え、左右差を見ます。
それ以外にも、温度覚といって温水と冷水を用い、左右差を見る方法もあります。
画像診断
画像診断を行うと、三叉神経に血管が当たってる状況が確認出来ます。
特に三叉神経が脳幹部より出たところ(root entry zone(REZ)と呼ばれるところ)を丁寧に観察します。
観察には、MRIの中でも、MR脳槽撮影(FIESTAやCISS)やMRAの元画像が有用と言われています。
また、画像診断を行うことで他の病気との鑑別も出来ます。
症例 60歳代女性 顔面痛 MRI CISS画像
まず横断像で三叉神経が脳幹部から前方へ出ていく様子をチェックします。
次に中でも脳幹部から出ている根元の部分をチェックすると、血管が前後方向に走っており神経を圧迫している可能性があることがわかります。
これを冠状断で見てみるとその様子がさらによくわかります。
血管による三叉神経の圧排と診断され手術が施行されました。
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三叉神経痛の治療方法は?
内服治療
まず、第一に取り入れられる治療法が内服治療です。
- カルバマゼピン
- バルプロ酸ナトリウム
- フェニトイン
- クロナゼパム
- バクロフェイン
などの薬を用い、痛みをとる方法です。
しかし、薬の効果には個人差がある上、飲むのをやめると痛みが再発することもあるため、薬の飲み方は医師の指示に従い続ける必要があります。
長期的に薬を飲むことに抵抗がある方は、副作用の少ない漢方薬を選択することもあります。
そして、この内服治療によって効果が見られない場合、別な治療法を試みることになります。
- 三叉神経ブロック
- 外科的治療
- ガンマナイフ
という治療法があります。
三叉神経ブロック
三叉神経に局所麻酔薬や神経破壊薬を注射する方法です。
直接注射することによって痛みをブロックするものです。
外科的治療
画像診断で確認された三叉神経を圧迫している血管を移動させる方法で、微小血管減圧術(Jannetta)と言います。
それにより原因を取り除くことができ、完治が期待出来ます。
ですが、手術は後頭部から切開し頭蓋骨に穴を開け行うため、様々な神経が行き渡る部位でもあるため、この手術を行うかどうかは慎重な判断が必要です。
ガンマナイフ
三叉神経に放射線を照射する方法です。
患者は横になりヘルメットのような機械から照射されるガンマ線を集中的に浴びるため、負担は少なくて済みます。
- 参考文献:病気がみえる vol.7:脳・神経 P246・247
- 参考文献:全部見える 脳・神経疾患―スーパービジュアル 徹底図解でまるごとわかる! P396〜399
- 参考文献:内科診断学 第2版 P1028・1029
最後に
- 脳幹から出た三叉の根本である神経を脳動脈が圧迫することによって起こる
- 脳の問題・歯科的問題・耳鼻科疾患・帯状疱疹などの原因も考えられる
- 反復する電撃痛が片側に出る
- 画像診断で他の病気との鑑別ができる
- 内服治療を行い、効果がなければ三叉神経ブロック、外科的治療、ガンマナイフと別な治療を行う
手術を拒む患者さんが多く、一度治ったと思っても再発するのが三叉神経痛の特徴でもありますが、手術を行えば完治を望めます。
また、この痛みは三叉神経痛なんじゃないかと自己判断をするのではなく、きちんとした画像診断を行うことをオススメします。