大腸内視鏡検査を受ける前に、「検査食を食べてください」「前日は消化のよい食事にしてください」と言われることがある。
このとき、「検査食とは何か」「必ず買わないといけないのか」「普通の食事ではだめなのか」「医療費控除の対象になるのか」と疑問に思う人は少なくない。
結論からいうと、大腸内視鏡前の検査食とは、腸の中に便や食物残渣を残しにくくするために作られた、低繊維・低残渣の食事である。
大腸内視鏡検査では、腸の中をできるだけ空にしておく必要がある。便や食べ物の残りが多いと、ポリープや炎症、出血などが見えにくくなり、検査精度が下がることがある。
検査食は必須ではない場合もあるが、便秘気味の人、前処置が不安な人、何を食べればよいかわからない人には便利な選択肢である。
この記事では、大腸内視鏡前の検査食とは何か、食べてよいもの・避けるもの、検査食を使うメリット、医療費控除の考え方について整理する。
- 大腸内視鏡前の検査食は、腸に残りにくい低繊維・低残渣の食事である。
- 検査前に便や食物残渣が残ると、観察しにくくなり、再検査につながることがある。
- 検査食は必須でない場合もあるが、食事内容に迷う人には便利である。
- 野菜、海藻、きのこ、豆類、種のある果物、雑穀、ナッツ類は検査前に避けることが多い。
- 医療費控除の扱いは、検査目的や購入方法によって判断が分かれる可能性があるため、領収書を保管し、必要に応じて税務署や税理士に確認する。
大腸内視鏡前の検査食とは何か
大腸内視鏡前の検査食とは、腸の中に食べ物の残りが残りにくいように調整された食事である。
大腸内視鏡検査では、肛門から内視鏡を挿入し、大腸の粘膜を直接観察する。ポリープ、がん、炎症、出血、潰瘍、憩室などを確認するためには、腸管内がきれいに洗浄されている必要がある。
検査前に繊維の多い食品や消化されにくい食品を食べると、大腸内に食物残渣が残り、観察の妨げになることがある。
そのため、検査前には、消化されやすく、便として残りにくい食品を選ぶ必要がある。
検査食は、「大腸内視鏡検査を成功させるための食事管理」を簡単にするための補助食品と考えるとよい。
なぜ大腸内視鏡前に食事制限が必要なのか
大腸内視鏡前に食事制限が必要なのは、腸の中をできるだけきれいにして、病変を見落としにくくするためである。
大腸の中に便や食べ物の残りが多いと、内視鏡で粘膜を十分に観察できない。小さなポリープや平坦な病変、炎症の範囲が見えにくくなる可能性がある。
ASGEは、大腸内視鏡前の腸管洗浄が不十分だと、医師が大腸を十分に観察できず、再検査が必要になることがあると説明している。
- ポリープや小さな病変が見えにくくなる。
- 検査時間が長くなることがある。
- 内視鏡で洗浄する手間が増える。
- 十分な観察ができず、再検査になることがある。
- 検査の精度が下がる可能性がある。
大腸内視鏡は、検査当日の下剤だけでなく、前日までの食事管理も重要である。
検査食は必ず食べないといけないのか
検査食が必須かどうかは、医療機関の方針、検査時間、便秘の有無、前処置方法によって異なる。
医療機関によっては、市販または院内販売の検査食をすすめることがある。一方で、検査食を購入せず、消化のよい食事を自分で選べばよいと説明されることもある。
重要なのは、検査食を買うかどうかではなく、腸に残りにくい食事を守ることである。
- 何を食べればよいかわからない人
- 便秘気味の人
- 過去に前処置が不十分だった人
- 前日の食事を考えるのが面倒な人
- 検査前に失敗したくない人
検査食を使わない場合でも、医療機関から渡された食事指示を必ず優先するべきである。
大腸内視鏡前に食べてよいもの
大腸内視鏡前は、消化がよく、繊維が少なく、腸に残りにくい食品が選ばれる。
具体的には、白米、うどん、食パン、卵、豆腐、白身魚、鶏肉、具の少ないスープなどが使われることが多い。
| 分類 | 食べてよいことが多いもの |
|---|---|
| 主食 | 白米、おかゆ、うどん、食パン、素うどん |
| たんぱく質 | 卵、豆腐、白身魚、鶏ささみ、脂身の少ない肉 |
| 汁物 | 具の少ない味噌汁、すまし汁、コンソメスープ |
| 間食 | プリン、ゼリー、具のないヨーグルトなど |
| 飲み物 | 水、お茶、透明なスポーツドリンク、透明なリンゴジュースなど |
ただし、食べてよい食品は医療機関の説明書によって異なるため、最終的には検査施設の指示を優先する。
大腸内視鏡前に避けるもの
大腸内視鏡前は、食物繊維が多い食品、種や皮が残りやすい食品、消化に時間がかかる食品を避けることが多い。
NIDDKは、大腸内視鏡前の準備として、数日前から全粒穀物、生野菜、豆類、ナッツや種子など、繊維の多い食品を避ける必要がある場合があると説明している。
| 分類 | 避けることが多いもの |
|---|---|
| 野菜 | 生野菜、葉物野菜、根菜、とうもろこし |
| 海藻・きのこ | わかめ、ひじき、昆布、きのこ類 |
| 豆類 | 大豆、納豆、枝豆、小豆、豆の入った料理 |
| 果物 | 種のある果物、皮付き果物、キウイ、イチゴ、スイカなど |
| 穀物 | 玄米、雑穀米、全粒粉パン、シリアル |
| その他 | ごま、ナッツ、こんにゃく、脂っこい食事、揚げ物など |
特に、種、皮、海藻、きのこ、ごまは腸に残りやすいため、検査前は避けるべき食品として説明されることが多い。
検査食の具体例
検査食は、朝・昼・夕のメニューがセットになっているものが多い。
市販や医療機関で用意されている検査食には、おかゆ、雑炊、うどん、スープ、ハンバーグ風の低残渣食、ゼリーなどが組み合わされていることがある。
検査食の目的は、栄養を完全に満たすことではなく、検査前に腸の中に残りにくい食事を簡単に選べるようにすることである。
- 朝:おかゆ、スープ、ゼリー
- 昼:うどん、雑炊、具の少ないリゾット
- 夕:おかゆ、白身魚風メニュー、スープ
- 間食:透明ゼリー、飴、透明飲料など
検査食を使うと、何を食べてよいか迷いにくく、前処置の失敗を減らしやすい。
検査食を使わない場合の食事例
検査食を購入しない場合でも、低繊維・低残渣を意識すれば、自宅の食事で対応できることがある。
たとえば、前日は以下のような食事が選ばれることがある。
| タイミング | 食事例 |
|---|---|
| 朝 | 食パン、卵、具のないスープ |
| 昼 | 素うどん、白米、豆腐、白身魚 |
| 夕 | おかゆ、具の少ないスープ、卵料理 |
| 間食 | 透明ゼリー、飴、プリンなど |
ただし、夕食の時間、検査当日の飲水制限、下剤の開始時間は医療機関によって異なる。
「消化がよさそうだから大丈夫」と自己判断せず、検査施設の説明書に書かれた食品を優先する必要がある。
前日はいつまで食べてよいか
大腸内視鏡前日に何時まで食べてよいかは、検査施設の指示によって異なる。
一般には、前日の夕食は早めに済ませ、その後は水分中心にすることが多い。施設によっては、夕食は指定時間まで、夜以降は透明な飲み物のみ、当日朝は絶食などの指示がある。
ASGEも、大腸内視鏡前には医師の指示に従って飲食を止める時間を守る必要があると説明している。
- 夕食は何時までに済ませるか。
- 当日朝に水やお茶を飲んでよいか。
- 下剤は何時から飲むか。
- 常用薬を飲んでよいか。
- 糖尿病薬やインスリンをどうするか。
- 抗血栓薬をどうするか。
食事制限だけでなく、薬の扱いも大腸内視鏡前には重要である。
検査食を食べたのに便がきれいにならないことはあるか
検査食を食べても、必ず腸が完全にきれいになるとは限らない。
検査食は腸に残りにくい食事ではあるが、最終的に腸をきれいにするのは下剤による腸管洗浄である。
便秘が強い人、普段から排便回数が少ない人、前処置薬を十分に飲めなかった人、水分が足りなかった人では、検査食を食べていても便が残ることがある。
- 普段から便秘が強い人
- 下剤を飲み切れなかった人
- 水分摂取が少ない人
- 検査前に繊維の多い食品を食べた人
- 糖尿病などで胃腸の動きが低下している人
- 以前の検査で腸管洗浄不良を指摘された人
検査食は前処置を助けるものであり、下剤や水分摂取の指示を守ることが不可欠である。
検査当日の便の状態の目安
大腸内視鏡前処置では、最終的に便が透明に近い水様便になることが目安である。
ASGEは、腸管洗浄後には、水様または黄色で透き通るような便が出る状態を目安としている。
便に固形物が残っている、茶色く濁っている、食べ物の残りが見える場合は、腸管洗浄が不十分な可能性がある。
- 透明に近い水様便になっている。
- 黄色っぽい液体便になっている。
- 固形物がほとんどない。
- 便器の底が見える程度に澄んでいる。
便の状態が不安な場合は、自己判断せず、検査施設の指示に従って連絡するべきである。
大腸内視鏡前の検査食は医療費控除の対象になるか
大腸内視鏡前の検査食が医療費控除の対象になるかは、検査の目的、購入方法、医師の指示の有無によって判断が分かれる可能性がある。
国税庁は、医療費控除の対象となる医療費として、医師または歯科医師による診療・治療の対価や、治療または療養に必要な医薬品の購入費などを挙げている。一方で、健康診断の費用は、疾病の治療を行うものではないため、原則として医療費控除の対象にはならないと説明している。
大腸内視鏡検査が、症状や便潜血陽性などをきっかけに医師の判断で行われる検査であれば、検査費用自体は医療費控除の対象になり得る。一方で、人間ドックや任意の検診として行う場合は、原則として対象外になることがある。
検査食については、一般の食事代に近い性質もあるため、必ず医療費控除の対象になるとは言い切れない。
- 大腸内視鏡検査が治療・診断目的で行われたか。
- 人間ドックや任意検診として行われたものか。
- 検査食が医療機関の指示で購入されたものか。
- 医療機関や薬局で購入し、領収書があるか。
- 通常の食事代と区別できるか。
判断に迷う場合は、領収書を保管したうえで、税務署または税理士に確認するのが安全である。
人間ドックや健康診断として受けた場合の注意点
人間ドックや健康診断として大腸内視鏡検査を受けた場合、医療費控除の扱いには注意が必要である。
国税庁は、人間ドックや健康診断の費用は、疾病の治療を行うものではないため、原則として医療費控除の対象にならないと説明している。
ただし、健康診断等の結果、重大な疾病が発見され、その診断に引き続いて治療を行った場合には、その健康診断等の費用も治療に先立つ診察と同様に考えられ、医療費控除の対象になる場合がある。
つまり、同じ大腸内視鏡検査でも、「検診目的」か「診断・治療目的」かで扱いが変わる可能性がある。
検査食の領収書は残すべきか
検査食を購入した場合は、医療費控除の対象になるか迷う場合でも、領収書を保管しておくべきである。
医療費控除では、実際に支払った医療費をもとに計算する。判断に迷う支出であっても、領収書がなければ後から確認しにくい。
特に、医療機関や薬局で検査食を購入した場合、検査との関連がわかる領収書や明細を残しておくとよい。
- 大腸内視鏡検査の領収書
- 検査食の領収書
- 前処置薬の領収書
- 医療機関からの検査説明書
- 検査結果や診療明細書
最終的に対象になるかどうかは個別判断になるため、領収書を残して確認できる状態にしておくことが重要である。
検査食を食べ忘れた場合はどうするか
検査食を食べ忘れた場合でも、すぐに検査中止とは限らないが、何を食べたかによって対応が変わる。
前日に低残渣の食事をしていれば問題にならないこともある。一方で、野菜、海藻、きのこ、豆類、種のある果物、雑穀、ナッツなどを食べてしまった場合、腸内に残る可能性がある。
特に、検査前日の夜に繊維の多いものを食べた場合は、検査施設へ相談した方がよい。
- 前日に野菜や海藻を多く食べた。
- ごま、種、ナッツを食べた。
- 検査食の代わりに脂っこい食事をした。
- 下剤を飲み忘れた。
- 当日の便が固形便のままである。
自己判断で検査へ行くより、食べた内容と時間を伝えて、検査施設の指示を受けるのが安全である。
検査食と下剤の関係
大腸内視鏡前の準備では、検査食と下剤は役割が異なる。
検査食は、腸に残りにくい食事を選ぶためのものである。一方、下剤は腸の中にある便を排出し、腸管を洗浄するために使う。
したがって、検査食を食べたから下剤を飲まなくてよいわけではない。また、下剤を飲むから何を食べてもよいというわけでもない。
| 準備 | 役割 |
|---|---|
| 検査食 | 腸に残りにくい食事にする。 |
| 下剤・腸管洗浄液 | 腸内の便を排出し、観察しやすくする。 |
| 水分摂取 | 脱水を防ぎ、腸管洗浄を助ける。 |
大腸内視鏡前処置は、食事・下剤・水分摂取をセットで考える必要がある。
検査食で注意が必要な人
糖尿病、腎臓病、心臓病、嚥下障害、食物アレルギーがある人は、検査食や前処置について事前に相談が必要である。
糖尿病の人では、絶食や食事量の変化により低血糖を起こすことがある。腎臓病や心臓病の人では、下剤や水分摂取の方法に注意が必要な場合がある。
また、検査食には卵、乳、小麦、大豆などのアレルゲンが含まれることがあるため、食物アレルギーがある人は成分表示を確認する必要がある。
- 糖尿病で内服薬やインスリンを使っている人
- 腎臓病がある人
- 心臓病がある人
- 抗血栓薬を飲んでいる人
- 食物アレルギーがある人
- 便秘が強い人
- 過去に前処置で体調不良になった人
持病や薬がある人は、検査食だけでなく、前処置全体を医療機関と相談して決めるべきである。
よくある質問
大腸内視鏡前の検査食は必ず買う必要があるか?
必ず購入が必要とは限らない。医療機関によっては検査食をすすめるが、自宅で低繊維・低残渣の食事を選べばよい場合もある。最終的には検査施設の指示を優先する。
検査食を食べれば下剤は少なくてよいか?
自己判断で下剤を減らしてはいけない。検査食は腸に残りにくい食事であり、下剤は腸を洗浄するためのものである。役割が異なる。
前日に野菜を食べてしまったら検査できないか?
食べた量、種類、時間による。少量なら問題にならないこともあるが、海藻、きのこ、種、ナッツ、繊維の多い野菜を多く食べた場合は検査施設へ相談する。
検査食は医療費控除の対象になるか?
必ず対象になるとは言い切れない。検査目的、購入方法、医師の指示の有無によって判断が分かれる可能性がある。領収書を保管し、必要に応じて税務署や税理士に確認する。
検査食を食べたのに便が透明になりません。どうすればよいですか?
便に固形物が残る、茶色く濁っている、下剤を飲み切れない場合は、検査施設へ連絡するべきである。自己判断で追加の下剤を使うのは避ける。
まとめ
大腸内視鏡前の検査食とは、腸の中に便や食物残渣を残しにくくするための低繊維・低残渣の食事である。
検査前に腸内が十分にきれいでないと、ポリープや炎症などが見えにくくなり、検査精度が下がることがある。場合によっては再検査になることもある。
検査食は必須ではない場合もあるが、何を食べてよいかわからない人、便秘気味の人、前処置が不安な人には便利である。
検査前には、野菜、海藻、きのこ、豆類、種のある果物、雑穀、ナッツ類など、腸に残りやすい食品を避けることが多い。白米、うどん、食パン、卵、豆腐、白身魚など、消化のよい食品が選ばれやすい。
検査食の医療費控除については、検査目的や購入方法により判断が分かれる可能性がある。領収書を保管し、必要に応じて税務署や税理士に確認するのが安全である。
大腸内視鏡前の準備では、検査食、下剤、水分摂取、薬の調整をセットで考え、検査施設の指示を最優先にすることが重要である。
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出典
- American Society for Gastrointestinal Endoscopy. Understanding Bowel Preparation Before Colonoscopy.
- National Institute of Diabetes and Digestive and Kidney Diseases. Colonoscopy.
- 国税庁. No.1122 医療費控除の対象となる医療費.
- 国税庁. No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除).





