胃がん検診や人間ドックで行われるバリウム検査では、硫酸バリウムという白い造影剤を飲んで胃をX線で観察する。

多くの人にとってバリウム検査は一般的な検査であるが、「バリウムでアレルギーは起こるのか」「蕁麻疹や息苦しさが出たらどうすればよいのか」「喘息やアトピーがある人は受けてもよいのか」と不安になる人もいる。

結論からいうと、バリウムによるアレルギー反応やショック・アナフィラキシー様症状はまれであるが、起こりうる重大な副作用である。

特に、過去に硫酸バリウム製剤で過敏症を起こしたことがある人、他の医薬品で強いアレルギーを起こしたことがある人、喘息やアトピー性皮膚炎など過敏症反応を起こしやすい体質の人は、検査前の問診で必ず伝える必要がある。

また、蕁麻疹、顔や喉の腫れ、息苦しさ、顔面蒼白、冷や汗、血圧低下、意識がぼんやりするなどの症状が出た場合は、すぐに医療スタッフへ伝えるべきである。帰宅後に症状が出た場合も、検査を受けた医療機関や救急外来へ相談する必要がある。

この記事のポイント

  • バリウムによるアレルギー反応はまれだが、ショック・アナフィラキシー様症状が起こることがある。
  • 蕁麻疹、顔や喉の腫れ、息苦しさ、顔面蒼白、意識消失は注意すべき症状である。
  • 過去にバリウムで過敏症を起こした人は、原則としてバリウム検査を避ける必要がある。
  • 喘息、アトピー性皮膚炎、薬剤アレルギーがある人は、検査前に必ず申告する。
  • 不安が強い場合や既往がある場合は、胃カメラなど代替検査を相談する。

バリウムアレルギーは起こるのか

バリウム検査で使う硫酸バリウム製剤でも、まれにアレルギー反応やショック・アナフィラキシー様症状が起こることがある。

硫酸バリウムは、X線を通しにくい性質を利用して、胃や腸の形を見やすくする造影剤である。胃のバリウム検査では、発泡剤で胃をふくらませたうえで、バリウムを飲んでX線撮影を行う。

一般に、バリウムは体内に吸収されにくく、便として排出される。しかし、医薬品である以上、副作用がまったくないわけではない。

PMDAの医薬品・医療機器等安全性情報では、硫酸バリウム製剤について、重大な副作用としてショック、アナフィラキシー様症状、消化管穿孔、腸閉塞、腹膜炎などが挙げられている。

したがって、「バリウムは吸収されないからアレルギーは絶対に起こらない」と考えるのは正確ではない。

バリウムアレルギーで起こりうる症状

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バリウムによる過敏症では、皮膚症状、呼吸器症状、循環器症状、意識障害などが起こることがある。

PMDAの安全性情報では、硫酸バリウム製剤のショック・アナフィラキシー様症状として、顔面蒼白、四肢冷感、血圧低下、チアノーゼ、意識消失、潮紅、蕁麻疹、顔面浮腫、喉頭浮腫、呼吸困難などが挙げられている。

症状の種類 具体的な症状
皮膚症状 蕁麻疹、かゆみ、赤み、顔のほてり
顔・喉の症状 顔面浮腫、まぶたや唇の腫れ、喉の違和感、喉頭浮腫
呼吸器症状 息苦しさ、呼吸困難、ゼーゼーする、チアノーゼ
循環器症状 血圧低下、冷や汗、顔面蒼白、手足の冷感
意識症状 意識がぼんやりする、ふらつき、意識消失

特に、息苦しさ、喉の腫れ、血圧低下、意識障害は緊急性が高い症状である。

すぐ医療スタッフへ伝えるべき症状

検査中や検査直後に体調の変化を感じたら、我慢せずすぐに医療スタッフへ伝えることが重要である。

バリウム検査では、検査中に体を回転させたり、発泡剤で胃を膨らませたりするため、げっぷ、吐き気、軽い気分不快を感じることがある。

しかし、以下のような症状は単なる検査中の不快感として放置してはいけない。

すぐ伝えるべき症状

  • 全身に蕁麻疹が出る
  • 顔、まぶた、唇、喉が腫れる
  • 息苦しい、呼吸がしにくい
  • 冷や汗が出る、顔面蒼白になる
  • 手足が冷たくなる
  • ふらつく、意識が遠のく
  • 強い腹痛や嘔吐がある

検査中に「少しおかしい」と感じた時点で伝えることが、重症化を防ぐうえで大切である。

帰宅後にアレルギー症状が出ることはあるか

バリウム検査後、帰宅してから蕁麻疹や息苦しさなどの症状が出る場合もあるため注意が必要である。

多くの重い反応は検査中または検査直後に気づかれることが多いが、アレルギー反応は遅れて出ることもある。

帰宅後に以下のような症状が出た場合は、検査を受けた医療機関、近くの医療機関、または救急相談窓口へ連絡する。

  • 蕁麻疹や強いかゆみが出た
  • 顔や唇が腫れてきた
  • 喉が詰まる感じがある
  • 息苦しい
  • ふらつき、冷や汗、動悸がある
  • 強い腹痛、嘔吐、発熱がある

息苦しさ、意識がぼんやりする、喉の腫れがある場合は、救急対応が必要になることがある。

バリウム検査で注意すべき人

過去に硫酸バリウム製剤で過敏症を起こしたことがある人は、バリウム検査を受けるべきではない。

PMDAの安全性情報では、硫酸バリウム製剤に対して過敏症の既往歴がある患者は禁忌とされている。また、消化管閉塞またはその疑いがある患者も禁忌として挙げられている。

さらに、他の医薬品で過敏症を起こしたことがある人、喘息、アトピー性皮膚炎など過敏症反応を起こしやすい体質の人では、ショック・アナフィラキシー様症状があらわれるおそれがあるため、問診と十分な観察が必要とされている。

検査前に必ず伝えるべきこと

  • 過去にバリウムで蕁麻疹、息苦しさ、血圧低下などを起こしたことがある
  • 造影剤や薬剤でアレルギーを起こしたことがある
  • 喘息がある
  • アトピー性皮膚炎がある
  • 強いアレルギー体質である
  • 腸閉塞や強い便秘、消化管穿孔の既往がある

問診票には「関係ないかもしれない」と思うことでも記載し、検査前に医療スタッフへ直接伝えることが重要である。

喘息やアトピーがある人はバリウム検査を受けられるか

喘息やアトピー性皮膚炎があるからといって、全員が必ずバリウム検査を受けられないわけではない。

ただし、過敏症反応を起こしやすい体質として注意が必要であるため、検査前に必ず申告するべきである。

喘息のコントロールが悪い、過去に薬剤や造影剤で重いアレルギーを起こした、アナフィラキシーの既往があるなどの場合は、医師がバリウム検査の可否や代替検査を検討することがある。

自己判断で「軽い喘息だから言わなくてよい」と考えず、検査前に伝えることが安全につながる。

バリウムアレルギーが心配な場合の代替検査

バリウム検査が不安な場合や、過去にバリウムで過敏症を起こしたことがある場合は、胃カメラなどの代替検査を相談する。

胃カメラ、すなわち上部消化管内視鏡検査では、内視鏡で食道、胃、十二指腸の粘膜を直接観察する。バリウムを飲む必要がないため、バリウムに対する過敏症既往がある場合の代替として検討される。

ただし、胃カメラにも咽頭麻酔、鎮静剤、偶発症などの注意点がある。どちらがよいかは、年齢、症状、既往歴、健診目的、医療機関の方針によって変わる。

検査 特徴
バリウム検査 硫酸バリウムを飲み、X線で胃の形や粘膜変化を評価する。
胃カメラ 内視鏡で胃粘膜を直接観察でき、生検も可能である。

過去にバリウムでアレルギー症状が出た人は、次回の検査前に必ず医療機関へ伝え、胃カメラなどを相談すべきである。

バリウムアレルギーが出た場合の治療

バリウムによるアレルギー反応が疑われる場合の治療は、症状の重さによって異なる。

軽い蕁麻疹やかゆみであれば、抗ヒスタミン薬などが使われることがある。一方、呼吸困難、喉頭浮腫、血圧低下、意識障害などを伴う場合は、アナフィラキシーとして緊急処置が必要になる。

アナフィラキシーでは、アドレナリン筋肉注射、酸素投与、点滴、気道確保などが行われることがある。これは医療機関で行うべき処置であり、自己判断で様子を見てよい状態ではない。

重症化を疑う症状

  • 息苦しさ
  • 喉の腫れ、声が出しにくい
  • 血圧低下、冷や汗、顔面蒼白
  • 意識が遠のく、倒れる
  • 全身に広がる蕁麻疹

これらの症状がある場合は、検査中であればすぐにスタッフへ、帰宅後であれば救急対応を含めて相談する必要がある。

アレルギー以外のバリウム検査の重大な副作用

バリウム検査では、アレルギーだけでなく、バリウムが腸内に停留することによる合併症にも注意が必要である。

PMDAの安全性情報では、硫酸バリウムが消化管内に停留することにより、まれに消化管穿孔、腸閉塞、バリウム虫垂炎などを引き起こすことがあるとされている。特に高齢者では、より重篤な転帰をたどることがあると注意喚起されている。

検査後は、医療機関から渡された下剤を指示通りに飲み、水分をとり、排便状況を確認することが重要である。

検査後に注意すべき症状

  • 強い腹痛
  • 腹痛が徐々に悪化する
  • 吐き気や嘔吐
  • お腹が強く張る
  • 便もガスも出ない
  • 数日たっても白い便が出ない

バリウム検査後は、アレルギー症状だけでなく、排便状況と腹部症状にも注意する必要がある。

検査前の問診で伝えるべきこと

バリウム検査を安全に受けるためには、検査前の問診で正確に伝えることが重要である。

特に、過去のアレルギー歴や消化管疾患の既往は、検査方法を選ぶうえで重要な情報になる。

伝えるべき情報 理由
過去のバリウムアレルギー 硫酸バリウム製剤に対する過敏症既往は禁忌である。
薬剤アレルギー・造影剤アレルギー 過敏症反応を起こしやすい体質か判断するため。
喘息・アトピー性皮膚炎 ショック・アナフィラキシー様症状への注意が必要なため。
腸閉塞・消化管穿孔の既往 バリウム停留による合併症を避けるため。
強い便秘 バリウム排出遅延のリスクがあるため。

問診票に書くだけでなく、不安がある場合は検査前に直接スタッフへ伝えることが大切である。

よくある質問

バリウムアレルギーはよくあることか?

頻度としてはまれであるが、ショック・アナフィラキシー様症状として注意すべき重大な副作用である。症状が出た場合はすぐに医療機関へ伝える必要がある。

過去に薬で蕁麻疹が出たことがあるが、バリウム検査は受けられるか?

必ず検査前に申告すべきである。薬剤アレルギーがある人では、過敏症反応を起こしやすい体質かどうかを含めて、医療機関が判断する。

喘息がある場合、バリウム検査は危険か?

喘息があるから必ず受けられないわけではないが、注意が必要である。喘息の状態や過去のアレルギー歴によって対応が変わるため、事前に伝える必要がある。

帰宅後に蕁麻疹が出た場合はどうすればよいか?

検査を受けた医療機関、近くの医療機関、または救急相談窓口へ連絡する。息苦しさ、喉の腫れ、ふらつき、意識障害がある場合は救急対応が必要である。

バリウムが不安なら胃カメラに変更できるか?

医療機関や健診コースによって対応は異なるが、胃カメラを代替検査として相談できることがある。過去にバリウムで過敏症が出た人は、必ず事前に相談すべきである。

まとめ

バリウムによるアレルギー反応はまれであるが、ショック・アナフィラキシー様症状として注意が必要な重大な副作用である。

蕁麻疹、顔や喉の腫れ、息苦しさ、顔面蒼白、冷や汗、血圧低下、意識がぼんやりするなどの症状がある場合は、すぐに医療スタッフへ伝えるべきである。

過去にバリウムで過敏症を起こしたことがある人は、バリウム検査を避ける必要がある。また、喘息、アトピー性皮膚炎、薬剤アレルギーがある人は、検査前に必ず申告する。

バリウム検査後は、アレルギー症状だけでなく、強い腹痛、嘔吐、便やガスが出ない、白い便が出ないといった排出トラブルにも注意する。

不安が強い場合や既往がある場合は、胃カメラなど代替検査について医療機関へ相談することが大切である。

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出典

  • 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(PMDA). 医薬品・医療機器等安全性情報 No.219. 硫酸バリウム製剤の使用上の注意改訂情報.
  • 厚生労働省. 医薬品・医療機器等安全性情報.
  • 硫酸バリウム製剤 添付文書.
  • 日本アレルギー学会. アナフィラキシーガイドライン.