妊娠中の急な腹痛。妊娠していると、その不安も一段と大きくなると思います。
しかし、妊娠している事で、そうでない時の腹痛より危険性が高まるのでしょうか?
また、妊娠後期においての腹痛にはどのようなものがあるのでしょうか?
今回は、妊娠中の腹痛について妊娠後期を中心にまとめました。
妊婦の腹痛、鑑別法は?
妊婦の腹痛の種類は、若い女性の腹痛+妊娠による腹痛に分けられます。
さらに、若い女性の腹痛は、一般的な腹痛+婦人科臓器に関する腹痛が加えられます。
つまり、妊婦の腹痛の鑑別には、以下の3つをみることになります。
- 一般的な腹痛
- 婦人科臓器に関する腹痛
- 妊娠による腹痛
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妊婦の腹痛、後期では?
婦人科臓器に関する腹痛
- 卵巣(腫瘍)がねじれる、破裂する。
- 婦人科臓器が感染する。
妊娠による腹痛・妊娠中の緊急疾患
妊娠初期~14週
- 子宮外妊娠破裂
中期14~28週
- 破水―臍帯脱出
- 常位胎盤早期剥離
後期28週~
- 重症妊娠高血圧症候群
- HEELP症候群
- 急性妊娠脂肪肝
- 子癇
- 子宮破裂
- 常位胎盤早期剥離
- 破水―臍帯脱出
- 羊水塞栓
上記に加えて、大血管の塞栓や解離になります。
以上のように緊急疾患は、妊娠の後期で多くなるのが分かります。
妊婦の腹痛、後期における緊急疾患は?
妊娠高血圧症候群
妊娠20週以降、分娩後12週までに高血圧がみられる場合や高血圧に蛋白尿を伴う場合のいずれかで、さらに、これらの症状が単なる妊娠の偶発合併症によるものではないものをいいます。
HEELP症候群
溶血、血小板減少、肝酵素上昇が起こる疾患です。
上記の妊娠高血圧症候群の患者さんに多く発生し、 妊娠中のみならず妊娠後(産褥期)に発生することもあります。
急性妊娠脂肪肝
妊娠後期に発生する劇症肝炎です。
急速に肝臓の機能が侵され、妊娠が終了しないと重症化し、母児ともに死亡する恐れのある危険な病気ですが、その発生頻度は妊娠した人の10000人から15000人に1人くらいと稀な病気でもあります。
子癇
妊娠後期に妊娠高血圧症候群に合併して起こり、発作がおこると意識を喪失し全身の痙攣を繰り返します。
原因は不明とされており、20週以降の妊娠中、分娩中、出産後の産熟期にも起こり、最も警戒するべき症状です。
子宮破裂
妊娠している女性の子宮体部に裂傷ができてしまう疾患で、多くは分娩時の腹圧に耐え切れずに起こりますが、裂傷の程度によっては一部 が残る不全子宮破裂と、子宮壁が完全に破れてしまう全子宮破裂に分けられます。
発生頻度は3000分娩に約1回と極めて稀ですが、発症すると母体 の死亡率が2~5%、胎児の死亡率は20~80%となります。
常位胎盤早期剥離
まだ赤ちゃんがお腹にいるのに胎盤が先にはがれてしまう状態で、胎盤が剥がれると子宮壁から出血し「胎盤後血腫」という血の塊が、子宮壁と胎盤の間にできます。
赤ちゃんのみならず母体にまで影響を 及ぼす危険のある疾患ですが、その確率は0.3%~0.9%とされています。
臍帯脱出
破水時に赤ちゃんより先に臍帯が出てします状態です。そのため、赤ちゃんが酸素不足になってしまうことがあり、産まれたあとに後遺症が残る危険性にも繋がります。
羊水塞栓
羊水が母体の血管内に流入し、羊水が血液の流れを遮ってしう疾患です。羊水には、胎児成分が含まれていますが、それらが母体の血管に流入して血液を詰まらせてしまい、呼吸不全などの症状を引き起こします。
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妊婦の腹痛、注意することは?
妊婦の腹痛など、何らかの急変がある場合は、その緊急度が一段と深刻なものとなります。
例を挙げると、盲腸の手術開始が3時間遅れても予後には大きな影響を及ぼしませんが、妊娠関連の緊急疾患はの場合は、30分以内に治療できるかで母子の予後に大きく影響します。
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まとめ
- 妊婦の腹痛の鑑別には、一般的な腹痛+婦人科臓器に関する腹痛+妊娠による腹痛をみる。
- 婦人科臓器に関する腹痛=卵巣がねじれる・破裂、婦人科臓器が感染。
- 妊娠中の緊急疾患=重症妊娠高血圧症候群・HEELP症候群・急性妊娠脂肪肝・子癇・子宮破裂・常位胎盤早期剥離・臍帯脱出・羊水塞栓。
- 妊婦の腹痛など、何らかの急変がある場合は、その緊急度が一段と深刻なものとなる。
- 緊急疾患は妊娠後期に多いので、この時期に何らかの急変が見られた場合は、速やかに病院に行事が大切。