MRI and CT Eye-catching image2

 

CT検査とMRI検査。

この2つの検査は、なんとなく似たイメージがあるものの、その違いについてご存知でない方も多いのではないでしょうか?

どちらもトンネル型の機械の中に入って身体の断層を見る検査技術ではありますが、その原理はまったく異なるのです。

なんとなく「MRIの方が精密検査ですごい」なんてイメージを持たれているかもしれません。

  • MRIを撮影すればすべて分かる?!
  • MRIに勝る検査はない?!

は、そうでもないんです。

確かに子宮・卵巣のようにMRIがCTよりも強い領域・部位もありますが、空間分解能、つまり、画像の解像度、細かいところの解剖の様子はCTの方が基本的に上です。

またCTは全身を短時間で撮影することもでき、交通事故で運ばれてきた患者さんに全身スクリーニングをする際には必ずCTがまず撮影されます。

MRIを全身撮影していたら日が暮れます。

CTが強いところ、MRIが強いところ、またそれぞれ弱いところというのがあります。

ここを誤って何でもMRIを撮影しようとすると診断できるものもできなくなったり、検査を受ける負担が増すばかりです。

そこで、このMRIとCTの違いを色々な角度から解説しましたので、参考にされて下さい。


CTとMRIの違いは?

MRIとCTの違いを教えて下さい。

CTとMRIの違いは、その撮影技術の違いにあります。

それぞれの特徴を以下にご説明します。

CTの特徴

CTは、Computed Tomographyの略です。

X線検査の立体版となり、レントゲン照射したあとにコンピュータで計算して2次元画像を作り出し処理する方法です。

CTのメリット
  • 骨など水分が少ない箇所の画像診断に有効
  • 検査台を動かしながら複数の検出器を用いて撮影できる装置(MDCT)でき、検査に掛かる時間が短い

lung CT emphysema

肺のCT画像(横断像、高度喫煙者)

CTのデメリット
  • 放射線を使うため、被曝してしまう
  • 内臓の検査においても病気によっては正常組織とのコントラストが少ないために、造影剤を使わないと診断が難しいことがある。
  • 空間分解能ではMRIに勝るが、病変と正常組織の濃度の差 (コントラスト) ではMRIに劣る

MRIの特徴

MRIは、Magnetic Resonanse Imagingの略です。

MRIは、磁気を利用して、体内の水素原子の量と、水素原子の存在の仕方を画像化する検査法です。

カンカンカンと検査中にうるさいのがこのMRIですね。

関連記事)MRIの原理を簡単にわかりやすく解説!

MRIのメリット
  • 脳や筋肉など水分の多い箇所の画像診断に適している
  • 放射線被曝の心配がないので妊婦や子ども、人間ドックの検査などでも安心
  • 病気と正常組織とのコントラストがCTよりも明確
  • 造影剤を使わなくても血流情報を得て血管の撮影を行うことも可能

脳の血管を撮影する検査では、脳血管MRAが有名です。

uterus

女性骨盤のMRI検査(T2強調像、矢状断像)

MRIのデメリット
  • 一部を撮影するのに約30分程度の時間を要する
  • 1回に検査できる範囲が狭い
  • 骨の変化が分かりにくい

全身を撮影するのには向いていない検査です。

また、狭く大きな音のする空間に長時間いる必要があるため、ペースメーカーを埋め込まれている方や閉所恐怖症の方には不向きなど制限が多いです。

CTとMRI、どうやって使い分けるの?

どうやって使い分けるのでしょうか?

CTとMRIは、得意分野や得意な病気が違います。

例えば同じ頭であっても

  • 脳出血はCTの方が得意。
  • 脳梗塞はMRIの方が得意。

と異なります。

ですので、症状がある場合は、疑われる病気や部位に応じて、医師の判断でCTとMRIを使い分ける必要があります。

ただし日本の場合は、CT装置の方がはるかに普及しているため、まずはCTで検査して、何かあれば場合によっては次にMRIという流れが多いのも事実です。

人間ドックなど症状がない場合に撮影される場合は、部位により、より多くの情報が得られる検査が選択されます。

 

CTとMRI、それぞれが得意な病気のまとめ!!

それぞれの向いている分野を教えて下さい。

  • MRIは水分を多く含む臓器を映すのに向いていますが、骨や肺には向いていません
  • 骨や肺を映す場合にはCTを使用
  • MRIは脳梗塞や脳動脈瘤の検査に向いている
  • CTは脳出血や肺炎、骨折などの外傷に向いている

以下にそれぞれの向いている分野をご紹介します。

CTに向いているもの

  • 脳出血
  • 肺炎
  • 肺癌
  • 胸水
  • 腸閉塞・腸炎など腸管の病気
  • 尿路結石
  • 外傷後の出血の精査などの全身スクリーニング

 

このように、胸部(肺)・腸管・胸水・腹水・尿管結石などにCTは強いと言えます。

逆に、胸部や腸管はMRIでは見えにくいため、これらの部位に最初にMRIが撮影されることは通常ありません。

MRIに向いているもの

  • 脳梗塞
  • 脳動脈瘤
  • 内臓(肝臓、胆嚢、膵臓など):CTと合わせて評価することが多い。
  • 子宮・卵巣
  • 前立腺
  • 血管
  • 軟骨
  • 腰椎椎間板ヘルニア
  • 靭帯損傷
  • 骨軟部腫瘍など

 

このように、脳・内臓・生殖器・整形外科領域でMRIは強いと言えます。

それぞれ向いている分野が違うため撮影する部位や症状によって使い分けてそれぞれを補っています。

人間ドックの検査項目から見るCT、MRI検査のそれぞれの強み!

人間ドックを受けると、施設にもよりますが、フルコースで受けるとCT、MRIについては概ね次の撮影がされます。

  • 頭:MRI+MRA(MRIの血管撮影)
  • 頸部血管:MRA(MRIの血管撮影)
  • 胸部:CT
  • 腹部:CT
  • 骨盤生殖器:MRI
  • 椎体(主に頚椎、腰椎):MRI

 

これに加えて、頸部血管、腹部では超音波検査(エコー検査)がおこなわれます。

これを見れば、どこでCT、MRIが強いのかわかりますね。

そうですね、あくまで人間ドックの例なので、例外はありますが、胸部や腹部は基本的にCTがまず優れた検査ということがわかりますね。

CTとMRIの検査時間の違いは?

検査時間の違いを教えて下さい。

それぞれの検査時間を以下にご紹介します。

CT検査の時間

  • 頭部の検査であれば約5分ほど、全身の検査でも約10分ほどの検査時間

しかし、この時間の多くは、撮影寝台の移動や撮影位置の決定、造影剤の注射にかかる時間となり、実際に撮影のために要する時間は1~2分程度と大変短い時間です。

また、検査の最中に患者さんが動いてしまっても、画像がブレて観察しにくくなった箇所だけを撮影し直すことも可能です。

MRI検査の時間

1種類の画像(これを1シークエンスと言います)を撮影するのに数十秒から数分の時間を要し、

  • 全体の検査時間は最短でも約20分ほど、最長だと約1時間ほど要する

場合もあります。

何種類もの画像を一度に検査して総合的に判断する事が可能ですが、逆を言えば何種類もの画像を撮影する必要があるため時間が掛かるのです。

また、CTは画像1枚1枚をその都度、撮影する方法ですが、MRIは原理上、1枚ずつ撮影することは不可能です。

もし患者さんが動いてしまった場合には、1種類の画像全部がダメになってしまい、もう一度やり直す必要があります。

このようなことから、動きやすいお子さんや赤ちゃんには睡眠薬を使用し、さらにパニック状態に陥る可能性のある閉所恐怖症の方は検査を受ける事自体が難しくなる事もあります。

関連記事)MRIでの閉所恐怖症の対策は?オープン型とは?

CTとMRIの費用の違いは?

MRI とCTの費用の違いを教えて下さい。

部位によっても異なりますが、CTとMRI検査ではMRIの料金が高いことが一般的です。

CT検査料金

  • 単純CT検査: 約20,000円(3割負担=約6,000円)
  • 造影CT検査: 約35,000円(3割負担=約10,000円)
  • 冠動脈CT検査: 約42,000円(3割負担=約13,000円)

MRI検査料金

  • 単純MRI検査: 約18,000円〜26,000円(3割負担=5,400円~7,800円)
  • 造影MRI検査: 約22,000円~42,000円(3割負担=6,600円~12,600円)
  • 心臓MRI検査: 約25,000円~45,000円(3割負担=7,500円~15,000円)

関連記事)
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心臓の検査をされる場合は、心電図を併用した特別な検査法になりますので、診療報酬の点数がさらに追加され、検査料金が高くなります。

また、人間ドックなどでMRI検査を受ける場合には約3万円程かかるようです。

参考文献:プレジデントムックPRESIDENTαプレミアム人間ドックP16〜19・84〜88
参考文献:よくわかる検査数値の基本としくみP198〜203

最後に

MRIとCTの違いなどを説明してきました。

もし何らかの病気の疑いがある場合はご自分にはどちらの検査法が向いているのか、使い分けが大事ということがお分かりいただけたと思います。

今回ご紹介した2つの検査の違いを予備知識として頭に入れ、医師の診断と判断を仰ぐようにしてください。

その際、ご自分の中で疑問に思った点や不安な点を質問され、納得の上で検査に臨まれることが大切です。

CT、MRIは部位によっては得意不得意はそれぞれありますが、どちらが優れているということは一概にいうことはできず、相補的に用いるのが最も正しい使い方と言えます。

また、子宮・卵巣などの骨盤内臓器や肝臓・胆嚢・膵臓・脾臓などの腹部臓器では、CT・MRIだけでなく、最も簡便で侵襲性の低いエコー検査(超音波検査)との相補的な評価も非常に重要です。




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