加齢や生活習慣の乱れが誘因となるといわれる骨粗鬆症。
現代高齢化社会、多くの方が抱える悩みでもあります。
骨粗鬆症は進行すると、骨折のリスクが高まります。
では、この骨粗鬆症とは一体どういうもので、どうやって診断されるのでしょう?
今回は、骨粗鬆症(読み方は「こつそしょうしょう」英語表記で「osteoporosis」)について
- 原因
- 症状
- 検査
など、診断されるまでの流れをわかりやすく解説したいと思います。
実際のレントゲン画像やCT画像、さらに骨粗鬆症がある人とない人のCT画像を比較した動画を作成しましたので、ぜひ参考にしてください。
骨粗鬆症とは?
骨粗鬆症とは、骨代謝機能に異常が生じたために、骨吸収と骨形成のバランスが崩れて(骨吸収が骨形成を上回る)、骨の強度が低下したものです。
つまり、わかりやすくいうと、骨粗鬆症とは骨の密度が低下し、スカスカになったものです。
骨粗鬆症の原因は?
骨粗鬆症は原因によって、
- 原発性骨粗鬆症
- 続発性骨粗鬆症
に分類されます。
原発性骨粗鬆症
最初に述べましたように、加齢や生活習慣の乱れ、また閉経に伴うものを、原発性骨粗鬆症といいます。
とくに女性の場合、閉経によるエストロゲンの急激な減少も関係します。
続発性骨粗鬆症
- 甲状腺機能亢進症
- 副甲状腺機能亢進症
- 性腺機能不全
- クッシング症候群
などの病気があり、それが原因となり起こるものを、続発性骨粗鬆症といいます。
骨粗鬆症の症状は?
はっきりした自覚症状は、初期にはあらわれませんが、とにかく骨折しやすいというのが特徴です。
その骨折で多いのが
などになります。
また、骨折によって、疼痛や変形といった症状がみられます。
骨粗鬆症の検査は?どうやって診断される?
骨粗鬆症の検査は以下のようなものが行われ、以下のような所見を認めます。
- 単純X線・・・骨折・透過性増加・骨梁粗く不明瞭・骨萎縮・椎体変形
- CT検査・・・骨折・透過性増加・骨梁粗く不明瞭・骨萎縮・椎体変形
- MRI検査・・・T1強調画像を行うと、骨折部が低信号(時間経過によって変化)
- 骨密度検査・・・YAM(若年成人平均値)の70%以下となる
- 血液検査・尿検査・・・骨代謝マーカーで骨吸収マーカー値が高値
他の疾患との鑑別や、骨代謝の状態を確認したり、治療の経過を見る際などにも、これらの検査を行います。
骨粗鬆症の診断には、リスク因子の評価に加えて客観的なデータが必要です。
とくに重要なのが、
- 骨密度測定
- X線撮影
です。
骨密度では、具体的な%が算出されます。
脊椎X線・脊椎CTと骨粗鬆症の関係は?
脊椎X線では椎体骨折があれば、脆弱性骨折がありと判断され、その時点で骨粗鬆症と診断されます。
椎体骨折がなくても、骨粗鬆症としての変化が強ければ、骨粗鬆症と診断されます。
では、その骨粗鬆症がある場合とない場合のレントゲン及びCT画像を実際に見てみましょう。
症例 30歳代 女性 骨粗鬆症なし
縦と横の骨梁が密に走行している30歳代の女性の腰椎のレントゲン及びCT画像です。
骨粗鬆症は認めず、この正常例と以下の症例を見比べてみましょう。
症例 70歳代 女性 骨粗鬆症あり。
上の症例と比べていかがでしょうか?
- 縦に走る線(骨梁)が目立つ
- 骨の密度が低い(白さが少ない)
点がお分かりだと思います。
この2症例のCTを動画で見比べると次のようになります。
さらに似たような症例をもう一つみてみましょう。
症例 70歳代 女性 骨粗鬆症あり
こちらはCTのみになりますが、骨密度0.406(g/c㎡)、YAM 62%の症例で、骨粗鬆症ありの方の腰椎CTです。
先ほどと同じように縦のラインが目立ちますね。
症例 70歳代 女性 骨粗鬆症あり
こちらも骨の密度が低いことは、最初の症例と比べれば骨がより低吸収(黒い)ことからもわかります。
骨粗鬆症は、進行すると縦の骨梁さえも粗く、不明瞭になります。
さらにこの症例では、圧迫骨折を認めています。
脆弱性骨折ありと判定し、レントゲンから骨粗鬆症ありと判定することができます。
脊椎X線(レントゲン)による椎体骨折の判定方法は?
椎体骨折のレントゲンによる評価基準には、
- 半定量的評価法(Semiquantitative Measurement:SQ法)
- 定量的評価法(Quantitative Measurement:QM法)
があります。
半定量的評価法(Semiquantitative Measurement:SQ法)
椎体の高さと面積がどの程度減っているかで、骨折をグレード分類します。
- グレード0:正常
- グレード1:軽度の骨折 (椎体高20-25%低下、椎体面積10-20%減少)
- グレード2:中等度の骨折(椎体高25-40%低下、椎体面積20-40%減少)
- グレード3:高度の骨折 (椎体高40%以上低下、椎体面積40%以上減少)
(J Bone Miner Res 1993;8:1137-48)
新しい骨折かどうかは、前のレントゲンがないとできません。
あるいはMRI検査をすれば新しい骨折かどうかを判定することはできます。
前のレントゲンがある場合、上のグレードが1以上高くなれば新規骨折があると判定されます。
定量的評価法(Quantitative Measurement:QM法)
またすでにある骨折の判定や、新しい骨折の判定には以下の定量的方法も用いられます。
日骨代謝誌 1997;14:219-33を引用改変
- 既存骨折の判定:C/A、C/Pが0.8未満、A/Pが0.75未満、扁平椎では、上位・下位椎体C,A,Pより20%以上減少
- 新規骨折の判定:椎体高(C,A,Pいずれか)が15%以上減少かつ、4mm以上減少、ただし臨床的に新鮮な骨折例でX線写真上骨皮質の連続性が断たれたものはよい
というものです。
過去の画像と比べて、「椎体高(C,A,Pいずれか)が15%以上減少かつ、4mm以上減少」しているものを新規骨折と判定します。
参考サイト:骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年版
参考文献:整形外科疾患ビジュアルブック P173〜175
参考文献:全部見えるスーパービジュアル整形外科疾患 P128〜131
最後に
骨粗鬆症の診断には、
- 骨密度測定
- X線撮影
が重要です。
今回は、そのX線写真と骨粗鬆症の関係について、とくに詳しくまとめました。
定量的な方法は複雑ですね。
骨折のリスクが高いと判定された人は、定期的な受診をし、必要と判断されれば治療を受けましょう。