意識障害や麻痺の出る疾患の1つに、浸透圧性脱髄症候群というものがあります。
様々なことがきっかけで起こりますが、慢性アルコール中毒も原因の1つとなります。
今回は、この浸透圧性脱髄症候群(読み方は「しんとうあつせいだつずいしょうこうぐん」英語表記で「osmotic demyelination syndrome」略語で「ODS」)について
- 症状
- 原因
- 診断
- 治療法
を説明いたします。
浸透圧性脱髄症候群とは?
低ナトリウム血症などの急速な補正による、体液の浸透圧の異常で、炎症反応に乏しい脱髄疾患です。
橋底部中央に病変が認められるものを橋中心髄鞘崩壊症(英語表記で「central pontinemyelinolysis」略語で「CPM」)と言います。
橋以外の基底核・視床・小脳回・内包・外包・最外包・皮質下白質・皮質などに両側に認められるものを橋外髄鞘崩壊症(英語表記で「extra pontinemyelinolysis」略語で「EPM」)といいます。
それぞれ単独または、同時に見られ ることがあります。
浸透圧性脱髄症候群の症状は?
- めまい
- 認知機能障害
- 意識障害
- 痙性四股麻痺
- 痙攣(けいれん)
- 弛緩性麻痺
- 構音障害
- 嚥下障害
など様々な症状があらわれます。
めまいや両手足に力が入らないといった症状が出現し、ひどくなると燕下障害や呼吸障害、痙攣を起こし昏睡状態となることもあります。
病変は軽症な場合脱髄(だつずい)が、重症な場合、神経膠腫(読みは「しんけいこうしゅ」英語表記で「gliosis」)や壊死(読み方は「えし」英語表記で「necrosis」)が見られます。
浸透圧性脱髄症候群の原因は?
- 慢性アルコール中毒
- 栄養不良
- 慢性消耗性疾患
- 腎臓の疾患
- 糖尿病
- 白血病
などが原因となります。
低ナトリウム血症になり、体が急激に低ナトリウム血症を補おうとするために起こります。
浸透圧性脱髄症候群の診断は?
臨床症状から血液検査やMRIによる画像検査が行われます。
低酸素脳症・低血糖脳症・Wilson病・プリオン病(クロイツフェルト・ヤコブ病がプリオン病の80%を占める・英語表記で「Creutzfeldt-Jakob disease」略語で CJD)などとの鑑別が重要です。
血液検査
血液検査を行い、電解質に異常が認められた場合や、低ナトリウム・低カリウムが確認できれば、浸透圧性脱髄症候群を疑います。
画像検査
発症後数日~数週間は、MRIを行っても異常が確認できないこともあります。
拡散強調像(DWI)では、浸透圧障害による細胞浮腫を反映して、発症24時間以内に拡散低下が見られます。
そのため早期発見には拡散強調像が有用とされています。
橋中心髄鞘崩壊症(CPM)では橋の中央部に三叉矛状や楕円形の異常な高信号をMRIのFLAIR像やT2強調像で認めることがあります。
橋以外では、基底核、視床、内包、外包、前障などに通常左右対称に異常な高信号を認めることがあります。
MRIによるT2WI・FLAIRでは、橋中央部に左右対称性の広範な高信号域が確認でき、T1WI で低信号が分かる。
補液後に意識障害という症状があらわれたことからも、浸透圧性脳症(橋中心髄鞘崩壊症(CPM))を疑う所見です。
浸透圧性脱髄症候群の治療法は?
原因となる疾患に対する治療が重要です。
また、水分の摂取量を制限する必要があります。
その上で、体内で不足しているナトリウムの摂取や、ADH拮抗阻害薬を服用することによって、症状の改善を図っていきます。
予後は完全治癒から死亡まで様々です。
最後に
- 低ナトリウム血症などの急速な補正による、体液の浸透圧の異常で、炎症反応に乏しい脱髄疾患
- 橋底部中央に病変が認められるものを橋中心髄鞘崩壊症
- 橋以外の基底核・視床・小脳回・内包・外包・最外包・皮質下白質・皮質などに両側に認められるものを橋外髄鞘崩壊症
- 全身に麻痺や感覚障害といった様々な症状が出現する
- 慢性アルコール中毒・栄養不良・慢性消耗性疾患・腎臓の疾患・糖尿病・白血病などが原因になる
- 臨床症状から血液検査や画像検査が行われ、診断される
- 原因となる疾患に対する治療を行い、不足しているナトリウムを補い、薬によって症状の改善を図る
進行が早いため、症状が悪化し昏睡状態となってしまう前に、早期に受診することが重要になります。