influenza-encephalopathy

冬場にかけて、毎年インフルエンザは流行します。それに伴い、乳幼児に発生する急性脳症がインフルエンザ脳症です。

今回はこのインフルエンザ脳症について

  • 症状
  • 診断
  • 治療法

をご説明したいと思います。


インフルエンザ脳症とは?

インフルエンザ脳症とは1つの疾患名ではなく、インフルエンザウイルスの感染後に発症する意識障害を主徴とする症候群の総称です(厚生労働省ガイドライン)。

脳内にインフルエンザウイルスが侵入して起こるのではなく、過剰な免疫反応による高サイトカイン血症が原因と考えられていますが、発症の機序などは不明です。

原因は?

インフルエンザ脳症の原因としては、特にインフルエンザA型によって多発するといわれていますが、新型インフルエンザ(HINI)によっても起こっています。

発生頻度は?死亡率は?

発生例は、日本では年間50~250例で、死亡率は10%程です。好発年齢はインフルエンザに感染した5歳以下の乳幼児です。

医師
気になるのは症状ですよね。次でご説明します。

インフルエンザ脳症の症状は?

発熱から数時間後~1日で神経症状が出るのが特徴です。

  • 異常言動
  • 意識障害
  • 痙攣

が主な症状です。これが子供の場合、どういったものなのか分かり難いですよね。

医師
それぞれについて詳しくご説明します。

hito child

異常言動

  • 両親が分からないなど、人を正確に認識出来なくなる
  • 自分の手を噛むなど、食べ物とそうでない物の区別が出来ない
  • 幻視・幻視的訴えなどがあり、見えないはずの生き物が見えるなどを訴えます
  • 呂律が回らず、いめ不明なことを話す
  • 急に大泣きしたり、起こり出したりする

意識障害

  • 寝ているのか起きているのか分からない状態
  • 呼んでも起こしても反応しない
  • 朦朧としてる状態

痙攣

  • 単純型
  • 複雑型

とあり、単純型では痙攣持続時間が15分以内。繰り返しがない。左右対称の痙攣を指します。複雑型では単純型以外のものを指します。

また、上記以外に失禁や繰り返す嘔吐症状もあります。

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インフルエンザ脳症の分類は?

インフルエンザ脳症は以下の4病型に分類されます。

  1. 急性壊死性脳症、HSE症候群(日本ではほとんど見られない)、その他の重篤な脳症
  2. 亜急性・二相性の臨床経過、限局性の脳浮腫、痙攣重積を主徴とする脳症(痙攣重積型もしくは二相性脳症)
  3. 先天性代謝異常及び類縁の症候群
  4. その他(一過性脳梁膨大部病変(MERS)を伴うものなど)

それぞれの画像所見は以下で説明します。

インフルエンザ脳症の診断は?

インフルエンザウイルスの感染証明急性意識障害の症状がまず、必要条件となります。そして、検査方法としましては

  • CT検査
  • MRI検査
  • 血液・尿検査
  • 脳波検査

などで診断されます。

医師
それぞれについてご説明します。

病院

症状などからインフルエンザ脳症の疑いがある場合、速やかにCTやMRIといった画像診断を行う必要があります。

CT検査

様々な浮腫性パターンが見られます。

  • びまん性低吸収域
  • 局所性低吸収域
  • 脳幹浮腫
  • 皮髄境界不鮮明

などが確認できます。

MRI検査

CTよりも鮮明に映るため、より早期に診断が可能です。T1 強調画像で低信号域、T2 強調やFLAIR 画像で高信号域を呈します。

より詳細には、

  • 急性壊死性脳症:視床、脳幹部、小脳白質の対称性腫大、DWI高信号、一部出血・壊死
  • 痙攣重積型もしくは二相性脳症:前頭葉を中心とした大脳皮質及び白質のDWI高信号
  • 一過性脳梁膨大部病変(MERS):脳梁膨大部にてDWI高信号

と言った画像所見を呈します。

ここで注意する点としては、

  • 他のウイルス性脳症
  • 髄膜炎
  • 頭蓋内血腫 血管性病変
  • 腫瘍
  • 代謝性疾患など

などとの鑑別診断が必要になるということです。

急性脳症をきたすウイルスには、インフルエンザ脳症の他に、ヒトヘルペスウイルス6型(HHV-6)脳症ロタウイルス脳症が多いとされますが、これらは画像での鑑別が困難なことがしばしばあります。

血液・尿検査

血小板の減少、AST/ALT比の上昇、LDHの上昇、高アンモニア血症、BUN、クレアチニン上昇が見られます。

脳波検査

びまん性高振幅余波が認められます。

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インフルエンザ脳症の治療法は?

病型によって治療方法は異なりますが、薬物療法や保存的治療が行われます。

医師
使用される薬についてご説明します。

薬物療法

  • 抗ウイルス薬として、リン酸オセルタミビル(タミフル)・ザナミビル(リレンザ)
  • ステロイドパルス療法として、メチルプレドニゾロン
  • 免疫グロブリン大量療法
  • 体温管理として、アセトアミノフェン(アスピリン・ジクロフェナク・メフェナム酸は禁止です)
  • 痙攣重責発作への対処として、ジアゼパム・ミダゾラム
  • 頭蓋内圧亢進の対処としてD-マンニトール

特にインフルエンザではアスピリンなどの解熱剤を使用すると重症化する場合があると一時期TVニュースでも取り上げられましたが、インフルエンザ脳症においても同様です。

保存的治療

心肺機能の評価と安定化が重要です。

急性期に適切な治療をすることが大切です。ですが、中には適切な治療が行えなかったり、治療開始が遅れると10%は死に至り、知的障害や身体的機能障害が後遺症として残ることもあります

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最後に

  • 過剰な免疫反応による高サイトカイン血症が原因
  • 異常行動・意識障害・痙攣が特徴
  • 画像診断では、びまん性脳浮腫が観察できる
  • 脳波検査では、全般性高振幅余波が確認できる
  • 薬物療法・保存的治療が一般的

 

インフルエンザの予防接種は、接種してもかかるため、接種しない選択をする方も多くいますが、予防接種をすることで免疫力が向上するためインフルエンザ脳症の予防につながります。特に1歳~5歳の乳幼児の接種をおすすめします。




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