人間ドックなどでは通常頭部のMRIが撮影される施設も多く、基本的に無症状でスクリーニングで頭部CTが撮影されることは少ないと思われます。
一方でなんらかの症状(嘔気・嘔吐、麻痺、構音障害、頭痛など)があり、頭が原因の可能性があるときに、最初に撮影されることが多いのが頭部CTです。
頭部CTを撮影するとどのような病気がわかるのでしょうか?また、その際にかかる料金や被曝量についてまとめてみました。
頭部CT検査でわかる病気は?
頭部CT検査でわかる病気は主に以下のものが挙げられます。
- 脳内出血
- くも膜下出血
- 外傷による出血
- 骨折
- 脳梗塞
- 脳腫瘍などの占拠性病変
- その他
脳出血
頭部CTがMRIよりも強いのはとにかく脳出血です。
一刻を争う救急の現場において、検査時間のかかるMRIよりはまずはCTを撮影して、何もなければ必要に応じてMRIという施設が多いですし、CTは施設にあってもMRIは施設にないというケースもたくさんあります(むしろそちらの方が多い)。
CTには被曝の問題もありますので、MRIが最初に撮影される施設もありますが、まだまだ非常に稀なのが現状です。
そんなCTでは、以下のように脳出血が急性期のものは高吸収に(白く)みえますので一目瞭然です。
また、交通事故などで外傷を受けて頭の中に出血をきたすことがあります。外傷に伴う急性期の頭蓋内の出血には、
がありますが、これらをCTで同定することが可能です。(もちろん分かり難い微細な所見もあります。)
骨折
外傷により頭蓋骨に骨折があるかどうかという点においても頭部CTは優れています。
また、骨折線と間違えやすいものに頭蓋骨の縫合線があり、注意が必要です。
脳梗塞
一方で急性期の脳梗塞は頭部CT検査が割と苦手とする病気です。ただし、
- 数時間などある程度時間が経過した脳梗塞(通常6時間以上と言われる。)
- ある程度広範な脳梗塞
- 血管が閉塞するという強い脳梗塞
と言った場合は、急性期の脳梗塞をCTで描出できることがあります。これを早期虚血サイン(early CT sign)といい、脳梗塞におけるt-PA療法の適応を決定の有無に判断されます。
脳梗塞でも古い(陳旧性)梗塞はCTで低吸収域(黒い)として描出されるため、CTでもわかる病気に入ります。ただしこの場合も、小さな古い梗塞はCTでわからないこともあり、古い梗塞も新しい梗塞もよりわかりやすいのはMRIとなります。
脳腫瘍などの占拠性病変
脳腫瘍などの占拠性病変がある場合、CTで描出することができます。
この場合、CTで腫瘍があることが確認されたら、MRI(多くは造影剤を用いた造影MRI)で精査という流れになります。
脳腫瘍に限らず、上にあげた脳内出血などでも、
- 脳浮腫がどの程度起こっているのか
- 即命に関わるような脳ヘルニア所見はないのか。
と言ったことはCTでもわかります。危険な切迫脳ヘルニアの所見があればMRIで精査などと流暢なことは言ってられずに緊急手術となるのが一般です。
その他
その他に、
- 脳の萎縮の程度
- 正常圧水頭症を疑うような所見(DESH)
と言った脳の全体の分布、形態をCTで評価することができます。
脳実質外病変として、
- 副鼻腔炎
- 乳突蜂巣炎
の有無などもわかります。
またサイズが大きいものであれば、CTで脳動脈瘤がわかることもあります。
頭部CTの料金は?
人間ドックの場合は全額負担となりますが、そうでない症状があっての検査の場合は、通常5,000円強となります。
ただし、撮影した画像を読影する専属の放射線科医がいるかどうかなどで、値段は決められており病院によって異なります。
詳しくは→CT検査の費用は実際いくらかかる?撮影料以外にもかかるの?
頭部CTの被曝量は?
MRI検査は被曝をしませんが、CT検査は被曝をします。そのためCT検査においては特に小児においては適応の有無が問題となることがあります。
その際の被曝量ですが、施設により差があるものの概ね50mSv程度とされます。
最後に
頭部CTでわかること、病気に加えて頭部CTを撮影する際にかかる料金や被曝量についてまとめました。
日本ではCT装置を持った医療機関が非常に多く、またMRIに比べて短時間で撮影できるため、
「まずはCTを撮影しましょう。」
という流れが多いのです。CTは簡便であり、MRIのようにいくつも撮像シークエンスがあるわけではないので読影するのもわかりやすいというメリットがあります。また、特に出血や骨折性病変についてはMRIよりもわかりやすいことが多いのです。
ただし、どうしてもMRIにはない被曝の問題が生じてきますので、何でもかんでも必要ない場合でもCTというのは考えものであり、悪しき習慣とも言えます。
とりあえずスクリーニングで撮影!ではなく、症状からこういったことが疑われる、こういった可能性があるから頭部CTを撮影するという、撮影する理由が必要と言えます。