腰仙部の脊髄や髄膜、脊椎や皮膚など見られる先天性奇形で二分脊椎という疾患があります。
神経管閉鎖障害の一つに分類されます。今回はこの二分脊椎について
- 症状
- 原因
- 診断
- 治療法
をご説明したいと思います。
二分脊椎とは?
胎児期の神経管の閉鎖不全による奇形です。
- 神経管が露出している脊髄髄膜瘤(開放型二分脊椎または脊髄破裂)
- 露出していない滞在性二分脊椎(閉鎖型)
に分類されます。
神経管閉鎖障害(NTD)のうち、腰仙部の脊髄・髄膜・脊椎・皮膚などに見られる先天性奇形で、尾側神経孔の閉鎖障害によって生じます。
二分脊椎の症状は?
脊髄髄膜瘤
皮膚症状や、それ以外の症状、合併症などが現れます。
皮膚症状
皮膚症状として、見た目からも分かりやすい、腰仙部の皮膚欠損や脊髄の露出を認めます。
(出典:医師国家試験109A48)
それ以外の症状
- 病変部以下の運動麻痺
- 反射消失
- 感覚障害
- 足部の変形
- 膀胱直腸障害(肛門の弛緩・尿失禁)
合併症
- ChiairⅡ型奇形
- 水頭症
ChiariⅡ型奇形はほぼ全例で起こります。また、約90%で、治療を必要とする水頭症を合併します。
滞在性二分脊椎
皮膚症状や脊髄の伸展による症状(脊髄係留症候群)が現れます。
皮膚症状
約80%の割合で以下のような症状が見られます。
- 皮膚の膨隆(皮下脂肪種)
- 皮膚の陥凹
- 母斑
- 限局性多毛
これらは主に腰背部正中に生じます。
脊髄の伸展による症状
脊髄脂肪腫などの奇形性病変によって脊髄の尾側(胎生期の位置)につなぎ止められた脊髄が、成長と共に伸展されるために、学童期頃になると以下のような脊髄症状が現れます。
- 下肢の運動・感覚障害(歩行障害)
- 膀胱直腸障害(尿失禁など)
- 腰部や下肢の疼痛
- 下肢の変形(一側性)
- 側湾症
脊髄尾側が脂肪腫によって固定されているため、それより上部は成長や運動により過度に伸展します。
二分脊椎の原因は?
神経管が形成される胎児期の神経管閉鎖不全が主な原因です。
神経管閉鎖不全の原因としては、
- 遺伝子変異
- 葉酸欠乏
- 母胎の糖尿病
- 肥満
- 薬剤などの影響
が考えられます。
二分脊椎の診断は?
出生前診断・CT検査・MRI検査によって診断します。
出生前診断
母胎血清スクリーニング検査では、母胎血清中のαフェトプロテイン(AFP)値を測定することで、脊髄髄膜瘤(開放型二分脊椎または脊髄破裂)、無脳症、任信合併症などのリスクを診断できます。
脊髄髄膜瘤(開放型二分脊椎または脊髄破裂)では、胎児の組織内で合成されたAFPが閉鎖されていない神経管から羊水中に漏れ出します。更に、胎盤を通じて母胎の血清にも移行するために、母胎血清中のAFP値からも測定出来ます。
血清中で異常高値が見られた場合は、生後48時間以内の早期に治療を行うことを考慮し、羊水検査や超音波検査、MRIなどで診断を行います。
CT検査
水頭症の所見を確認します。
MRI検査
正確な病変レベルを確認するにはMRIが有用です。
脊髄髄膜瘤
延髄・小脳虫部・第四脳室の脊椎管内への陥入を認めます。
滞在性二分脊椎
原因病変の脊柱管内への広がりや、脊髄との関係などを確認します。皮下から脊柱管内に連続する脊髄脂肪腫、脊髄の係留などを認めます。
二分脊椎の治療法は?
脊髄髄膜瘤
髄液感染や脊髄の変性を防ぐため、生後48時間以内の早期に閉鎖手術を行う必要があります。閉鎖手術は整復術とも呼ばれ、脊髄の変形・硬膜の閉鎖・硬膜腔の形成・軟部組織・皮膚の形成を行います。
また、術後管理として、排尿障害や下肢の変形や機能障害に対する治療や訓練を行います。そして、水頭症の症状が出現した場合、シャント術を行います。
滞在性二分脊椎
脊髄の係留解除を目的として、脂肪腫の摘出などを行います(脊髄係留解除術)。但し、あくまでも症状悪化の予防が目的であり、一旦出現してしまった症状は、手術をしても改善することは少ないとされています。
最後に
- 胎児期の神経管の閉鎖不全による奇形
- 神経管が露出している脊髄髄膜瘤(開放型二分脊椎または脊髄破裂)と露出していない滞在性二分脊椎(閉鎖型)に分類され
- 脊髄髄膜瘤では、脊髄の露出・髄液の露出・運動や感覚障害・下肢の変形・膀胱直腸障害の他、ChiariⅡ型奇形や水頭症を合併
- 滞在性二分脊椎では、皮下脂肪種・皮膚の陥凹・母斑・限局性多毛・成長に伴い脊髄係留症候群が現れる
- 遺伝子変異・葉酸欠乏・母胎の糖尿病・肥満・薬剤などの影響が原因となる
- 出生前診断や画像診断が有用
- 外科的治療が行われる
羊水検査などでは分からないため、妊娠後期になってエコーから二分脊椎を疑われることが多くあります。しかし、生まれてみないと分からない点も多くあり、出生後すぐの検査が必要となります。